Official髭男dism「Same Blue」、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」……“変拍子”が表現する青春の不安定さ
先日、Official髭男dism「Same Blue」が配信された。本作はアニメ『アオのハコ』(TBS系)のオープニング主題歌であり、歌詞を見ると、作品の世界観に沿った思春期特有の不安感や淡い期待がフレーズのなかにまとめられている印象。それはタイアップソングらしいあり方でもあり、作品に対する解像度も高く、藤原聡(Vo/Pf)の手腕が感じられる楽曲になっている。一方、今作のポイントは、リズムアプローチの特有さ。というのも、今作のリズム展開が一般的なアニメタイアップソングと異なる趣になっているからだ。おそらく、楽曲を聴いた人の多くが「なんだか拍が取りにくい……」と感じたのではないだろうか。
一般的にアニメをはじめとしたタイアップソングは親しみやすさを重んじて、いちばんスタンダードな4拍子で進行する楽曲が多い。しかし「Same Blue」は、そんな常識を破る。まず、今作のイントロは5拍子で展開されている。そのため、イントロの段階で「よく聴くアニメタイアップソングとはなんだか感触が違う」という印象を受けることになるのだ。さらに、そのイントロからAメロへの移行で、さらに拍子が切り替わる。その後も6拍子が軸になっており、こちらも通常のアニメタイアップソングとは異なる手触りを感じさせる進行になっている。そして、トドメと言わんばかりに、6拍子が土台の進行でありながら、小節単位でも拍子が変化する構成になっている。たとえば、〈整理がつかないままの朝に〉のフレーズは〈朝に〉で小節と拍子が切り替わる。これは6拍子だったのに、ここだけ5拍子に変化しているからであり、該当の小節だけ意図的に1拍分少なく構成されている。このような仕掛けが楽曲の随所に散りばめられており、「Same Blue」は変拍子を多用した楽曲であるといえるのだ。
なぜ、こんなにも変拍子を多用しているのだろうか?
藤原の音楽的な趣味が影響していることも想像できるが、今作で言えば、「“青春もの”のアニメタイアップソングだから」という視点に帰結することもできるだろう。というのも、前述した通り、今作は思春期特有の不安感を盛り込んだ歌詞になっている。この要素を言葉以外のアプローチにおいて、意図的に不安定感を与えるリズムアプローチをしたとも考えられるし、歌詞の一人称の心情とリズムアプローチをシンクロさせた結果、変拍子の構造になったと捉えることもできる。