『ハイキュー!!』『ニセコイ』『鵺の陰陽師』……名作から未アニメ化作品まで「JUMP MV」で広がる可能性

 「JUMP MV」としての新たな試みはさらに続き、書き下ろし新曲からさらに一歩先に進んだのが、“未アニメ化作品”とのコラボレーションである。2024年8月公開の第23弾では、ねぐせ。が『キルアオ』という作品にねぐせ。が「デイズ」というロックナンバーを、2024年9月公開の第25弾では、菅原圭が『鵺の陰陽師』にアップチューン「熱帯夜」を書き下ろし。どちらも作品に寄り添っているのはもちろんのこと、それぞれのアーティストの味がしっかり染み出た楽曲となっている。「JUMP MV」以外の「ジャンプチャンネル」の動画でも未アニメ化作品とのコラボPVでアーティストの書き下ろし新曲が作られることはあるものの、やはり“MV”という1つの作品として売り出されると訴求力が段違い。また、これまでのアニメ主題歌を使った「JUMP MV」は、どうしても元のアニメ主題歌映像と比べられてしまうデメリットがあったが、これならその心配もないだろう。ほかにも、コラボによるアーティストや作品自体の知名度向上など、未アニメ化作品を「JUMP MV」で取り扱うメリットは様々である。今後も未アニメ化作品の「JUMP MV」が増えていくかもしれない。

JUMP MV /『キルアオ』×『デイズ』| ねぐせ。
JUMP MV /『鵺の陰陽師』×『熱帯夜』| 菅原圭

 そして「JUMP MV」の最新作が、『呪術廻戦』×King Gnu「SPECIALZ」。10月31日、作中で渋谷事変が発生した日付に投稿された。このMVは、渋谷事変が様々な場所で目まぐるしく状況が変化する群像劇的な作劇ということもあって、MVは呪霊側を描いた“災の目”と、呪術師側を表現した“済の目”の2本が作られるという豪華な仕様となっている。「SPECIALZ」の歌詞は呪霊視点であるというのはよく知られていて、その視点では“災の目”のモノクロなMVがピタリとハマるわけだが、対比構造である“済の目”のカラーなMVのカッコよさにもしっかりと合っているのだから面白い。

JUMP MV /『呪術廻戦』×『SPECIALZ』| King Gnu ―災の目―
JUMP MV /『呪術廻戦』×『SPECIALZ』| King Gnu ―済の目―

 こうして「JUMP MV」を振り返ってみると、最初は漫画の歴代『少年ジャンプ』アニメの主題歌MVという視点しかなかった企画が、名曲の掘り起こしとそこへの導線の提供、書き下ろし新曲を使った作品プロモーション、作中台詞や実写映像と漫画の絵を融合させたオリジナリティの高い表現の確立など、新たな見せ方や表現の場としての可能性がどんどん増してきているのがわかる。既存IPをどのように活用するのか、その1つの答えが「JUMP MV」にはあるのだ。

 『鬼滅の刃』『チェンソーマン』『逃げ上手の若君』など、まだ「JUMP MV」に登場していない作品はいくつもあるほか、過去に『少年ジャンプ』の週刊連載ではない『青の祓魔師』が「JUMP MV」に登場したことから、たとえば月刊の『ジャンプスクエア』や公式アプリ『ジャンプ+』など、さらに対象作品が増える可能性も秘めている。『少年ジャンプ』作品とソニーミュージックとのコラボレーションからは、まだまだ目が離せそうにない。

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