JMS 鈴木健太郎×ハルカミライ 橋本学、ロックバンドが起こす逆襲 『REDLINE』ならではの名シーンを語り合う
2010年に立ち上がったJMS主催のライブイベント『REDLINE』が、今年12月7日・8日に幕張メッセで開催される『REDLINE ALL THE FINAL 2024 〜15th Anniversary〜』にてファイナルを迎える。複数バンドが一体となって1ツアーを回り、各地でアツい対バンを展開してきた『REDLINE』は、この15年間、ロックフェスとはまた異なるスタイルでライブハウスシーンを活気づけてきた。年末の『REDLINE ALL THE FINAL』にはその集大成として、実に50組以上のアーティストが集うことになる。
今回はそんな『REDLINE』を立ち上げたJMSの鈴木健太郎氏と、幾度も出演してきたハルカミライの橋本学(Vo)による対談が実現。『REDLINE』の立ち上げ経緯や果たしてきた役割、ハルカミライのライブにまつわる思い出深い名シーンまでを振り返りつつ、『REDLINE ALL THE FINAL』への意気込みも語ってもらった。(編集部)
「ライブハウスで泥臭くやっていくことが自分の使命」(鈴木)
──まずは鈴木さんとハルカミライの出会いから教えてください。
鈴木健太郎(以下、鈴木):いつになるんだろう? 現場ではめちゃくちゃ会っていたんですけど、一緒にご飯を食べたり、打ち上げしたりっていうのは、ハルカミライに出てもらった『REDLINE TOUR 2018 ~FOUR FISTS~』が初めてのような気がします。
橋本学(以下、橋本):そうですね。
──ハルカミライというバンドの存在を知った、もしくはライブを観たのは?
鈴木:僕はTHE NINTH APOLLOの渡辺旭さんとsmall indies tableというレーベルを立ち上げたんですが、そこから1発目にリリースしたのがyonigeの『Coming Spring』(2015年)で。その時期、yonigeとハルカミライの対バンがめちゃくちゃ多かったんですよ。
橋本:yonigeがツアーにめちゃくちゃ呼んでくれていたし、俺らのツアーにも呼んでいましたし、普段もよく遊んでいて。それでいつの間にか鈴木さんとも知り合っていった感じでした。
──その時期のハルカミライにはどのような印象を抱いていましたか?
鈴木:音源を聴いて「超新星だ!」と思いました。それまでのギターロックとは全然違った。ライブは、その頃から「観て食らわない人はいない」と思いましたね。初期衝動をものすごく感じて、「話してみたいな。僕のイベントに出てほしいな」と思っていました。
──それで、初めて呼んだイベントが『REDLINE TOUR 2018 ~FOUR FISTS~』だったというわけですね。
鈴木:そうです。
──『FOUR FISTS』は2018年、2019年、そして今年2024年と3度、THE FOREVER YOUNG、bacho、KOTORI、ハルカミライという同じラインナップで開催されました。橋本さんは最初の『FOUR FISTS』のことは覚えていますか?
橋本:覚えています。俺らは確実に幼かったですね。KOTORIは年齢が近かったのでアレですけど、bacho、THE FOREVER YOUNGという強い先輩バンドと一緒だったので「どうしよう……」と思って、すっげぇヒリヒリしていました。
──このラインナップに呼ばれることで、自分たちの見られ方や立ち位置のようなものも感じられたと思うのですが、そういうことはライブに何か影響しましたか?
橋本:いや、もう自分たちのことでいっぱいいっぱいでしたね。「こういうシーンで」とか「この仲間たちと」とかを考える余裕は全くなかった。
──もうとにかくライブをする、ライブでカマす、という。
橋本:はい。
──『REDLINE』に対してはどのような印象を持ちましたか?
橋本:俺はバンドを始めてしばらくは、このシーンにどういうイベントがあるかとか、どういう歴史があるかとか全然わからなくて。さらに言うと、鈴木さんがどういう立場で、何をやっている人なのかもマジで全然わかってなかったんですよ。「流通会社って何?」「イベンターって何?」みたいな。
──そこからいろいろな音楽業界の人と出会ってきて、今思う鈴木さんはどのような人ですか?
橋本:“パーティ野郎”ですね。打ち上げのときに言う「乾杯!」が最高(笑)。“海賊乾杯”なんですよ。
鈴木:昔からよく言われる「“打ち上げまでライブ”ってこういうことなんだ」っていう(笑)。
橋本:そうそう。そこも含めて全部楽しませてくれる人だなと思います。
──そもそも『REDLINE』はどのような思いで立ち上げたものだったのでしょうか?
鈴木:立ち上げたのは僕がJMSに入社して2年目のとき。自分が担当しているバンドを含めて、インディーズにいいバンドがたくさんいたので、彼らをまとめてお披露目する場所がほしいなと思って、ツアー形式でイベントを組んだのが始まりです。気がついたら他社バンドばっかり呼んでいましたけど(笑)。
橋本:ヤバ(笑)!
鈴木:昔、『SET YOU FREE』というイベントがあったんですが、あのイベントはスカバンドもいれば、メロディックパンク、ハードコアもいて、異種格闘技みたいな感じのラインナップだったんです。それでいて常にソールドアウトしていて、しかもすごく長く続いていた。僕はそのイベントにお客さんとしてよく遊びに行っていたのですが、『SET YOU FREE』でしか見られない組み合わせで 面白いなと思っていたんです。それが自然と自分の中にインプットされていたのかなと思いますね。だから自分も面白い組み合わせで、ツアーを回れたら楽しそうだなって。
──回数を重ねる中で形は変わりつつありますが、“ツアーで回る”というのが1つのテーマだった?
鈴木:はい、完全にツアーで。『REDLINE』を始めた頃にはもうフェスも増えていたから、フェスは自分の役割じゃないなと思っていました。それに比べてバンド主催以外で、ツアー形式で回るイベントをやっている人はほとんどいなかったし、ライブハウスで泥臭くやっていくことが自分の使命かなと勝手に思っていたところはあると思います。
──『REDLINE』はツアースタッフも1台の車に乗って、みんなで移動していましたよね。
鈴木:はい。演者と主催者だけじゃなくて、支えてくれる裏方も楽しくないと、いい1日は絶対に作れない。だからみんなでバスに乗って、いろいろな話をしながら1つのライブに向かっていくということをしたかった。ただバスを借りちゃっているんで、経費の使いすぎで、当時はよく会社から怒られていましたけど(笑)。
ハルカミライにとって忘れられない『REDLINE』のステージ
──ハルカミライが出演していた『FOUR FISTS』もまさに4組のツアー形式でしたが、いかがでしたか?
橋本:ハルカミライってあんまり群れるタイプじゃないので、がっつり4組で一緒に回るというのは、バンド史上で初めてだったんじゃないかな。2018年はさっき言ったように自分たちでいっぱいいっぱいではありましたけど、2019年は「今日は勝ったな」とか「今日はやられたな」とかが、毎回あって。出順が毎回違うので、やる前は「トリのバンドが圧倒的に得をしている」と思っていたけど、実際に回ってみるとそんなことは関係なかった。自分たち次第で全部やれちゃうんだって思えた。そういうツアーでしたね。2019年の『REDLINE FOUR FISTS』は5本でしたっけ?
鈴木:うん。
橋本:その中で、勝てたと思えたのは1回くらいでしたね。
鈴木:「勝ったな」と思ったライブはどれだったの?
橋本:大阪。味園ユニバースですね。
鈴木:絶対、味園って言うと思った。あれ、すごかったよね。フロアライブで。
橋本:はい、すごかったです。自分たちも良かったし、bachoでも歌わせてもらったりして。すごく印象深いです。
鈴木:俺もあのツアーで一番印象深いのは味園だな。あの1日に『REDLINE』のすべてが詰まっていたような気がします。バンドのライブも全体的にすごく良かったし、お客さんの呼応の仕方も尋常じゃなくて。それを受けてアーティストがさらに超えていく、みたいなケミストリーが凄まじかった。ロマンが詰まっていましたね。
橋本:その日着ていた服とかも思い出せるくらい、今でも鮮明に覚えています。
鈴木:わかる。あと2019年に幕張メッセでやった『REDLINE ALL THE BEST 2019 ~10th Anniversary~Supported by Sammy』のハルカミライのライブも印象的。
橋本:あー!
鈴木:ハルカミライはBODY STAGEっていうサブステージに出ていたんですけど、学が、隣のスペースにあったRIOT STAGEというフロアステージまで来たんですよ。
橋本:行きました、行きました。俺らの出番がわりと終盤だったから、RIOT STAGEはもう全員ライブが終わっていて機材もなくて。ダイブしてお客さんに「あそこまで運んでくれ」と言って。
鈴木:遠くて、普通に考えたら行ける距離じゃないんですよ。
橋本:遠かったですね〜。
──ステージに出る前から、そこに行くことは決めていたんですか?
橋本:決めてはいなかったですけど、「もうRIOT STAGEが終わっているってことは……シメシメ」とは思ってたっすね(笑)。
──橋本さんの中では、『REDLINE』はそういう無茶なことができるイベントでもあるという認識だった?
橋本:そうですね。相当に度が過ぎていない限りは怒られないし、むしろ「やっちゃえよ」って言う人たちだから。
鈴木:お客さんもそうだもんね。
橋本:そうですね。俺らとしても「なんかやらかしたい」みたいな青々した気持ちもあるし。
鈴木:事件性が欲しい、みたいなね。
──鈴木さんとしては何をしても怒らないとか、むしろ何かが起こるのを期待しているというような空気感は意識的に作っているのでしょうか?
鈴木:意識はしています。あと、スタッフとは何回も話をしていますね。自分の頭の中を本当に理解してもらって当日臨んでもらっています。臨むスタンスが一緒っていうだけで、お客さんにはちゃんと伝わっていくので。
──先ほど“事件性”という言葉が出ましたけど、『REDLINE』はそういういろんなことが起こるようなイベントにしたい?
鈴木:というか、いろんなことが起こせるようなバンドしか出ていないという感じですかね。言い方が難しいですが、事件性のないバンドは最初から誘っていないです。