SZNOは一体何者? 世界観/キャラクター原案のじんのコメントと共に紐解く“都市伝説”的なアーティスト性

SZNOの正体に迫る

 リアルとバーチャルの両軸で活動を行う多次元な存在、正体不明の“シティアーティスト” SZNOを知っているだろうか。

SZNO「xx」 (Official Music Video)

 二次元のアバターを纏って活動するバーチャルアーティストの存在が広く知られるようになった昨今、その活動形態を取る人々のスタイルも徐々に一枚岩ではなくなってきている。従来彼らにとって“中の人”の三次元的一面に触れることは暗黙の禁止事項でもあったが、直近ではその一面も含め本人の魅力として活用するアーティストも徐々に現れ始めた。冒頭に挙げたSZNOもまた、そんな二次元的/三次元的側面を両立させる、多次元アーティストとして今年8月にデビューしたばかりの新星となる。

 デビューシングル「xx」はリリースからわずか3週間で、YouTubeのMV再生数100万回を突破。スタイリッシュでモードなサウンドもさることながら、未だ謎の多い彼女の神秘性もまた、その話題へと繋がっているのだろう。

 MVでは実在の少女としてパフォーマンスを見せる一方、SNSやその他プロモーションにおいては、一貫して二次元のイラストアバターのみを公に見せる彼女。さらに大勢の興味を引くポイントとしては、そんなアーティスト・SZNOをプロデュースするスタッフの面々だ。

 公式クレジットの通り、彼女の世界観/キャラクター原案協力に名を連ねるのは、過去に『カゲロウプロジェクト』シリーズなどで音楽制作のみに留まらないクリエイティブを発揮したボカロP・じん。またキャラクターデザインはバーチャルアーティスト・花譜の作品やアプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』にも携わる りたお(PHASE STUDIO)が担当し、アニメ『デジモンアドベンチャー』シリーズなどを手掛ける森地夏美が脚本を務めるなど、錚々たる制作陣がそのバックについている。

 実在のシンガーでありながらも、架空の人物のような登場背景も併せ持つSZNO。一体彼女は何者で、どんな人物なのか。今回SZNOというアーティストの“成り立ち”に深く関わる世界観/キャラクター原案協力のじんに、彼女にまつわるインタビューを行った。SZNOの源流にまつわる彼の言葉を紐解きつつ、その実像に迫ってみたい。

「僕も全然彼女のことを未だに知らない」(じん)

じん アーティスト写真
じん

 じんは「世界観/キャラクター原案協力というクレジットですが、究極の話、僕も全然彼女のことを未だに知らないんです。自身の仕事は、人伝に聞いた都市伝説を文字に起こす感覚というか。ライター・インタビュアーさんの仕事に近いのかもしれません」と語る。

 SZNOのミステリアスな雰囲気はまさに“都市伝説”的だが、実際に関わった感想としては「“キャラクターを作る”というのも少し違っていて、そもそもSZNOさんは実在の人なので。本人から話を聞き、プラス周囲の人たちから『彼女はこういう人』という話も聞き、それらの情報から、彼女の人格やどんな場所でどんなものを見てるのか、どんな気持ちでいるのかをまとめる作業。プロファイリングのような感じです」とも彼は語る。

 続く「そうやって解釈を組み合わせると、自然に彼女がいる場所、興味のあるもの、求めていること、みたいな“周囲の世界”が勝手に見えてくる。それってすごく面白くて。『この人どんな人なんだろう』と考え始めた瞬間、もう彼女に引きずり込まれているというか。だからこそ第一報を書く僕の段階で、ガチガチに固めすぎても面白くない、とは考えていました」という言葉には、これまで数多のコンテンツで脚本/プロデュースの立場で携わってきた、彼ならではの設定の妙も窺える。1人の実在人物でありながらも、“彼女はきっとこう思っている”という解釈が人によって異なる余地を残す。そんな点も、SZNOが人々を魅了する部分なのだろう。

 重ねてじんはSZNOのような多次元/バーチャルアーティストについても、「そもそも次元を問わず、アーティストってみんなバーチャルな存在では」という見解を述べる。

「画面の向こうにいる人って、彼らが全員架空の存在であっても何らおかしいことではなくて。実在性の証明はできませんよね。二次元イラストのアバターも、化粧する人やお面を被る人、メディアの向こうに居る人も本質的な感覚は一緒というか」

 「10年前は“多次元”ってすごくSF的でしたが、今は渋谷の真ん中でみんな携帯をいじってたり、画面内のYouTubeに夢中だったりする。それがもう多次元的な事象だな、と。あるいは、現実ではなくアニメを見て感動で涙するのも、一種の次元を超える営みですよね。主観として体感する次元ってもはや曖昧で、でもそれが今は普通のことなのかも」と、次元を問わず多様なコンテンツを手がけてきたクリエイターならではの認識を垣間見せた。

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