THE YELLOW MONKEYが生み出す生命の力強さ 落合健太郎が目撃した4人の現在地、奇跡の一夜を振り返る

 4月の東京ドーム公演からおよそ半年という時間が流れた。

 あの時の興奮や熱狂はいまだ覚めることなく、ライブタイトルの通り、光り輝く4人の姿を思い出すことができる。

 そしてなんと、そのドーム公演の映像作品が早くもリリースされた。「東京ドーム公演に行けなかった」という方も心待ちにしていたことだろうし、あの日、会場にいた方たちはあの時の感動が蘇ってくるだろう。ものすごい台数のカメラが捉えたTHE YELLOW MONKEY 4人のライブドキュメントをあらゆる角度から観ることができる。

『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”』

 ここでは4月27日の『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”』を振り返り、全国から5万人のオーディエンスが集まった東京ドーム、その5万人分の1の目撃者として、あの夜の記憶を辿ってみようと思う。

 THE YELLOW MONKEYは結成30周年の集大成となるドームツアーを2019年の年末にスタート。2020年4月には、そのツアーファイナルとなる東京ドームで2DAYSのライブが予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、中止。世界中が目に見えぬ脅威、先の見えない不安と対峙する状況で、特にエンターテインメント業界は感染症対策の大きな制約を受け、苦渋の決断を強いられた。

 そんな中、2020年11月、THE YELLOW MONKEYは東京ドームでのライブを開催した。当時の政府のガイドラインに基づき、キャパシティは半分以下、オーディエンスはマスク着用、歌うことができないどころか、声を出すのも禁止。

 そんな状況下でもライブをファンと楽しみたい、分かち合いたい、という思いから、演奏予定の曲のコーラス部分の歌声を事前にファンたちから集めた「Sing Loud!」という企画を敢行。なんとももどかしい、しかし、それは大きな一歩を踏み出すため、進むために開催されたライブだった。

 あれから3年半が経った2024年4月27日、東京ドーム。ライブ前のステージのビジョンには、スタートまでのカウントダウンが表示されている。

 5、4、3、2、1……。興奮に満ちた大歓声が東京ドームを包む中、ドラムのマーチンングが流れ、ビジョンには今回のライブタイトル『SHINE ON』のロゴが映し出される。
ドラムのリズムに合わせてクラップと大歓声を浴びながら、メンバーがステージに登場。
両手を広げた吉井和哉が「Yeah, Everybody!」と呼びかけ、「ついにこの日がやってきました」と、3年前のドーム公演を振り返る。

 そして、「今日は遠慮なく、たくさんの大きな声で騒ごうぜ、イエーイ!」と叫んだ後に流れたのは、「バラ色の日々」。会場のオーディエンスの大合唱とともに聴こえてきたのは、前回の東京ドームライブで募った「Sing Loud!」の歌声。あの時の想いと声がここで復活するという感動的なスタートだった。

 この数年を振り返ると、「止まった」とか「失われた」という言葉が思い浮かぶ。悲しみや悔しさ、たしかに数多くの大切なものが奪われた。

 しかし、気がついたこともある。音楽をデカい音で、たくさんの人たちと共有し、歓声を上げ、一緒に歌うことは、当たり前の事じゃなかった、そして不要ではなく、大いに必要だった。

 2曲目の「SHINE ON」の後のMCで、「いやー、本当にここまで長かった」と語る吉井和哉。「今夜はイエローモンキーのロックンロールを久しぶりにぶちかましたい! そんなにヒットはないけど、代表曲のオンパレードでお届けします!」の言葉に、「うぉぉぉおーっ!」という唸りのような声で応えるオーディエンス。

 4曲目の「Tactics」の前には「Oh Yeah!」のコール&レスポンスが。〈永遠に踊る〉というリフレインが印象的に響く中、ステージが暗転し、ギターの菊地英昭、EMMAがソロを弾く。パイプオルガンのようなエフェクトがかかった音色。荘厳で美しく刹那的で、祈りが込められたようなギターに満員のドームは静まり返り、5万人の視線がEMMAに注がれる。そこから演奏されたのは、「聖なる海とサンシャイン」。

 ライブというのは、バンドとオーディエンスのエネルギーがぶつかり合い、うねりのようなものが生まれる。そして、そのエネルギーが融和され、一体感が生まれる瞬間を「聖なる海とサンシャイン」で強く感じた。圧倒的な演奏力と吉井和哉のボーカルに飲み込まれた東京ドーム。

 その空気をガラッと変えたのは、ドラムの菊地英二、ANNIEのスティックが叩くハイハットが合図となって飛び出してきた「BURN」だった。興奮のあまり前日は一睡もできなかったというベース、廣瀬洋一、HEESEYもアグレッシブにステージを動き回る。

 個人的な見解なのだが、「BURN」の「フッフー」というコーラスは最高だと思う。THE YELLOW MONKEYのバンドとしての魅力はたくさんあるが、そのひとつは、ハードロックの文脈の中に洗練された歌謡曲とJ-POPさが融合されているところ。この曲ではそれが存分に味わえる。

 そして、ライブの演出を手掛けた映像作家・山田健人の演出も素晴らしかった。THE YELLOW MONKEYの楽曲と演奏をより立体的に、そしてより感情の深いところまで届けてくれる(東京ドームの国内最大級のビジョンも大胆に使用した演出はぜひとも映像作品でご覧いただきたい)。

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