GLAYが示したデビュー30年目の底力 『Back To The Pops』で首位獲得、大胆な“曲順”が生んだ効果

 しかし、最もインパクトがあったのは冒頭2曲、「Romance Rose」から「Buddy」までの流れだろうか。まず「Romance Rose」で耳が捉えるのは、リバーブが強めの音作りに性急なビートとゴリゴリ楽曲を引っ張るベース、コーラスのかかった控えめなリードギター。エイトビートのタイトさの中に細かいフレーズを組み込み、さりげなく手数を増やしていくドラムを叩いているのはピエール中野だ。ニューウェーブからビートロックがオーバーラップする80年代から90年代初頭の空気感を今あえて再現したようなサウンドには意表をつかれた。だが、元々TAKURO(Gt)が20歳前後の頃にすでに書いていたレパートリーだったということも含めて、自分たちのルーツにかえろうとする本作の1曲目にはある意味ふさわしかったのかもしれない。続く「Buddy」はファンキーなイントロにブラスセクションが登場したかと思えば、オーケストラル・ヒットと煌びやかなベルが鳴り響く冒頭の展開にまず驚かされる。ほかにも、2番Aメロやラストのサビ後でエイトビートになるあたりも、親しみやすさと掴みどころのなさが同居した奔放な構成も面白い。

 この2曲の流れには、「いったいどんなアルバムになるんだ……」と固唾を呑んでしまうようなところがある。実際アルバムを俯瞰すれば、30年の年月を重ねて作りあげてきたバンドのカラーを堂々と披露するような、バラードからロックチューンまでが満載の貫禄あるアルバムなのだけれど、異様にフレッシュに感じられるのは、この曲順の効果が大きいだろう。

 各所のインタビューでも語られているが、この曲順がくじ引きで決められたというのは驚きだ。そんな大胆なこと、思いついてもやる勇気があるバンドがどれくらいいるだろうか。デビュー30周年のGLAYの底力を感じる一作だ。

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