平野紫耀の新たな扉、神宮寺勇太の透明な声、岸優太の本心……Number_i、挑戦のアルバム『No.Ⅰ』全曲解説

Number_i、初アルバム『No.Ⅰ』全曲解説

 世界を目指す挑戦であり、彼らの歩みの記録であり、名刺代わりの一枚――。9月23日にリリースされたNumber_iの1stフルアルバム『No.Ⅰ』は、そんな作品だ。

 「フルアルバムではないから」と“0”とした前作のミニアルバム『No.O -ring-』に続く、正真正銘の“1”作目。頂点を目指す、または史上最高(GOAT)な作品という意味の“No.1”。読み方は異なるが、「Number=No.」とすればセルフタイトルでもある。タイトルだけでもさまざまな想いが読み取れるグループ初のフルアルバムには、彼らのインスピレーションと探求心、そして確かなスキルによって生み出された多彩な楽曲が詰まっている。

 世界への道のりは平坦なものではないだろう。どの道が正解とも限らないだろうし、そもそも進むべき道すら見えないかもしれない。しかし、やってみなければわからない。デビューから9カ月、エスカレーターではなく獣道を、彼らは手探りしながら一歩ずつ進んできた。Spotifyのグローバルチャート「TOP ALBUMS DEBUT GLOBAL」で同アルバムが4位にチャートインしたことは、そのひとつの成果だ。

 アルバムの新録曲に加え、デビュー曲「GOAT」からのリリース作品、平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太の各ソロ楽曲も収録された『No.Ⅰ』。本稿では、各サブスクリプションサービスでも聴くことのできる13曲について紐解いていく。

INZM

Number_i - INZM (Official Music Video)

 前作『No.O -ring-』に引き続き、今作でもメンバーがそれぞれ各楽曲のプロデュースを担当している。リードトラックの「INZM」は、神宮寺によるプロデュース。「GOAT」「BON」の系譜に連なるHIPHOPに、ロックサウンドを取り入れた力強いナンバーだ。アルバムの冒頭から〈一瞬で虜さ〉と歌われるのが挑発的で、それを体現するような途中のBPMチェンジ、シャウト気味のボーカルで畳み掛けていくラストなど、先の読めない展開が面白い。歌詞には随所に“3”という数字やそれにちなんだ言葉が盛り込まれ、『GOAT』『No.O -ring-』に続く3作目であることを強調するとともに、この3人で突き進むという意志が伝わってくる。

なんかHEAVEN

 岸によるプロデュース。タイトルの“HEAVEN”(天国)を表すようにして、浮遊感のあるトラックと脱力的なラップがサイケデリックな雰囲気を醸し出している。かと思いきや、〈What Does This Feelin’ Mean?/風が気持ちいい〉のような耳馴染みのよいメロディが現れ、異物感と気持ちよさが両立されているのがこの曲の面白いところ。こういう変化球的な曲は、普通であればもう少し後ろに配置するアーティストが多いと思うのだが、堂々と2曲目に持ってくるあたりにNumber_iとしての攻めの姿勢を感じてしまう。

ICE

 「なんかHEAVEN」と同じく岸プロデュースだが、テイストをまたガラリと変えた愛を歌うナンバー。情熱的なラテンサウンドや〈On me on me on me this way〉などのリズミカルなフレーズが気持ちの高揚感を表しているのに対し、ボーカルは派手に盛り上げず、クールに歌い上げているのが印象的。わずか2分半と、アルバムのなかでは尺がいちばん短い。間奏やアウトロもなく冒頭から流れるように歌われ続けることも、静まることのない熱っぽさが表現されているように思う。

Bye 24/7

 神宮寺のソロ楽曲。手掛けたのは、以前から彼と親交があり、『No.O -ring-』でも「i」を楽曲提供したKEEN(C&K)。同じ部屋で過ごしていた相手のことを今も想い続ける心情と情景描写が詰まったバラードだ。Spotifyで公開されたインタビュー「Liner Voice」(※1)で「ボーカルが際立つ楽曲に挑戦したかった」と話していたとおり、神宮寺の透き通るような歌声と繊細な表現に引き込まれる。比較的高いキーの時の彼の歌声にはどこか儚さを感じるのだが、切ない楽曲の世界観によって、その歌声の魅力が存分に発揮されている。

JELLY

 人がノリやすいBPMから決めたという、神宮寺プロデュース曲。金木犀の香りが秋の到来を告げるように、季節の変化を表すモチーフは数あると思うが、この曲はカブトムシのゼリーの甘い香りに着想を得て“夏の終わり”をテーマに制作したという点が面白い。歌詞には〈夏の終わり〉といった直接的な表現のほか、〈お祭りの金魚〉〈花火〉といった夏を連想させる言葉も含まれている。サビのパートが3回繰り返されるが、3回目だけ歌割りが変更されており、アウトロの岸のスキャットも含めて最後まで飽きさせない工夫が見られる。

透明になりたい

 作詞曲とアレンジをVaundyが手がけた平野のソロ楽曲。歌詞は平野が過去に見た夢がモチーフになっているといい、ゆったりとした浮遊感のあるサウンドが白昼夢=非現実感を表している。ボーカルは、平野が思うVaundyの“ダサさ”や“儚さ”を表現するような歌い方を参考にしたという。全体的に軽めの発音とアンニュイな雰囲気からは、相手の隣にいることが叶わない虚しさを表現するとともに、平野のVaundyに対するリスペクトも感じられた。HIPHOP調の曲で見られる低音で鋭い歌声とはまた異なる、平野の新しい扉が開かれたように思う。

Numbers

 岸→神宮寺→平野の順に繰り広げられる、いわば自己紹介ソング。1枚目のフルアルバムにこういった楽曲が入ることは必然だったように思うし、この曲があることで、より『No.Ⅰ』が彼らの名刺代わりと言える作品に仕上がったのではないだろうか。歌詞には彼らの発言やこれまでの楽曲といったファンならピンとくる言葉が盛り込まれている。曲調もそれぞれの歌唱パートによって変わり、3人の個性を堪能できるのも嬉しい。

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