B'z、『おむすび』主題歌担当 スピッツ、ドリカム、桑田佳祐……“人生を描く朝ドラ”を彩った名曲たち
2017年4月から9月まで放送された『ひよっこ』の主題歌は桑田佳祐の「若い広場」。1964年の高度経済成長期における日本の姿を、有村架純演じるみね子を中心とした様々なキャラクターたちの姿によって映し出す『ひよっこ』では、劇中に様々な形で“音楽”の要素が表出する。たとえば、銀杏BOYZ・峯田和伸演じる小祝宗男がThe Beatlesの初来日に喜ぶエピソードや、みね子の家族が『家族みんなで歌自慢』というテレビ番組に出演するエピソードなどは、まさしく音楽がストーリーの重要な要素を担っている点だと言える。
なによりも『ひよっこ』における音楽の要素と言えば、劇中でみね子をはじめとした各キャラクターたちが歌う昭和歌謡だろう。みね子の同僚である愛子がザ・ピーナッツの「恋のバカンス」を口ずさんでいたり、みね子が和田弘とマヒナスターズ&田代美代子による「愛して愛して愛しちゃったのよ」を歌っていたりと、数え切れないほどの昭和歌謡ソングが劇中に登場する。そしてそれらの楽曲は、他でもない桑田佳祐にとっても音楽的なルーツのひとつだ。サザンオールスターズのデビュー曲である「勝手にシンドバッド」は「恋のバカンス」に影響を受けて制作されたとされており、「愛して愛して愛しちゃったのよ」はサザンオールスターズとしてカバーし、映画『稲村ジェーン』のサウンドトラックも収録されたアルバムに収録されている。桑田にとっても『ひよっこ』に登場する昭和歌謡の数々は自身の音楽的なルーツであるとともに、みね子にとっても青春時代のピースだった。そんな昭和歌謡に対して大いなるリスペクトを込めて制作されたのが、正しく歌謡ライクなサウンドが心地よく響く「若い広場」なのだ。
ここまで挙げた3つのドラマとその主題歌に共通しているのは、作品の舞台やテーマ、そして時代背景など、それぞれ様々な切り口でありながらどれも作品と共鳴して生まれていることだ。先述したベテランアーティストたちはもちろん、現在放送中の『虎に翼』の主題歌である米津玄師の「さよーならまたいつか!」が初の女性弁護士をモデルとした本作品で描かれるフェミニズムというテーマと真摯に向き合って制作されたように、作品のどの部分を切り取り、いかに自身を重ね合わせるのか、ということが主題歌制作の上でいっそう重要となる。特に朝ドラは、ひとりの人間の半生や生涯が描かれることが多い。刹那的な享楽や感情ではない、“人生そのもの”を描く朝ドラという作品を深く理解し、共鳴し、鮮やかに描くことができるアーティストこそ、その主題歌をまっとうできると言っても良いだろう。B'zが担当する『おむすび』の主題歌タイトルは「イルミネーション」。果たしてB'zは、『おむすび』とどんな形で共鳴し、どのような楽曲で作品を彩るのだろうか。
※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年7月13日19:00、リアルサウンド編集部)
誤:行動経済成長期
正:高度経済成長期
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