SAMとDJ KOOは止まらない、新ユニット・B.O.Cが還暦超えデビューで与える衝撃と勇気 人生100年時代に放つメッセージ

SAM&DJ KOO「B.O.C」が与える勇気

 デビュー30周年記念の日本武道館公演を今年の2月18日に開催したTRF。そのメンバーであるSAMとDJ KOOによるJ-RAPユニット「B.O.C」が、デビューシングル『NARIYAMA NIGHT feat.呂布カルマ、Ry-lax、DJ CHARI & 小室哲哉』を8月30日に配信リリースした。日本のダンスシーンの先駆者であり、下の世代にも多大な影響を与え続けているSAM。DJによる音楽表現を幅広い層に浸透させた存在で、近年は日本独自の文化である盆踊りを融合させた新しい形のダンスミュージックも探求しているDJ KOO――大ベテラン、大御所であるふたりを“デビュー”というフレッシュな言葉とともに紹介できる点に、このユニットの魅力が端的に表れているように感じる。

 今や人生100年時代とも言われる現代。そのなかで、何歳になろうが「やりたい」「好きだ」「面白い」と思うことに対しては忠実であるべきであり、挑戦を躊躇する必要なんてないのだと全力で表現しているのがB.O.Cだ。彼らと同世代の人々に対してはもちろん、下の世代にも響き得る大切なメッセージをデビュー曲「NARIYAMA NIGHT」は届けてくれる。

 最新のHIPHOPシーンの息吹に溢れた刺激的なトラックの作編曲を手掛けたのは、小室哲哉。DJ CHARI、Ry-laxとともに言葉を紡いだリリックでラップするSAMの説得力がものすごい。〈60過ぎてもストリート〉〈年号を3つも駆け抜けて ディスコtoクラブ 巡り巡り〉〈俺らいつまでやるのって? 夜中リビング筋トレしている〉〈アンダー、オーバー/知らねぇけど俺は行くぜ〉〈同じとこを大事にばっかで動いてねぇなら/ナンセンス〉など、SAMの実像とシンクロすることによって絶大なパワーを帯びるフレーズの連続だ。

 リリックでさまざまな角度から浮き彫りにされている想いとメッセージは、「NARIYAMA NIGHT」という楽曲のタイトルからも伝わってくる。「俺らの音楽は、まだまだ鳴り止まない」と捉えることもできるだろうし、「ワクワクしながら高まる胸の鼓動が鳴り止まない」という解釈もできそうなこのタイトルは、クラブシーンで勝ち上がってきたふたりの永遠の主戦場が“夜”だとさり気なく宣言しているのも嬉しい。フロアで煌びやかなライトを浴びながらSAMやDJ KOOがファイティングポーズを掲げている姿が何となく目に浮かぶ。リスナー対して繰り出してくる探求心、好奇心、向上心の三連打は、彼らと同世代に対してはもちろんだが、それ以外の層にとっても大きな刺激となるメッセージそのものだ。

 「NARIYAMA NIGHT」のリリックは、彼らの原点が“挑戦”である点も自ずと伝えてくれる。ダンサーやDJとしての活動に青春の日々を捧げた頃、「無謀な夢を追っている」というような類の言葉を浴びたこともあっただろう。それでも意志を貫いたからこそ、今の彼らがある。やりたいことがあるならば何よりも自分の心の声に耳を傾けるべきであり、夢や目標にふさわしい努力も必要なのは若者も大人も同じだ。若い世代の視点で生々しい言葉を放っている呂布カルマのラップ、SAMとDJ KOOがともに歌い上げるフックも含めて、楽曲全体がメッセージの鮮やかな結晶体と化している。

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