乃木坂46 中西アルノ、プレッシャーをチャンスに変えてきた2年半 タフさとギャップが新たな武器に

 乃木坂46随一の歌唱力を活かした『Spicy Sessions』(TBSチャンネル1)でのパフォーマンスをはじめ、『NHK俳句』(NHK Eテレ)へのレギュラー出演などを通して、着実に活動の幅を広げている5期生・中西アルノ。昨年末の『新参者 LIVE at THEATER MILANO-Za』ではドラム演奏をサプライズ披露、今年1月の『34thSG アンダーライブ』では座長としてアンダーメンバーを力強く牽引し、8月21日リリースの最新シングル『チートデイ』では選抜メンバーに復帰。6期生の加入も近づく中で、個性を活かしながらグループの中核を担いつつあるメンバーへと成長している。

 リアルサウンドでは『Spicy Sessions』の収録を終えたばかりの中西に単独インタビュー。『Actually...』での加入まもなくしてのセンター抜擢から約2年半、個人として、5期生として積み重ねてきた様々な活動を振り返りながら、自身の変化を語ってもらった。(編集部)

『Spicy Sessions』『NHK俳句』……ジャンルの異なる番組で重ねてきた挑戦

──『Spicy Sessions』出演が発表されたときは適任だなと思いつつも、かなりの大役ということもありご自身としては驚いたのではないでしょうか。

中西アルノ(以下、中西):そうですね。最初にマネージャーさんからお話を聞いたときは、「なんで私なんだろう?」と不思議な気持ちでした。こういうセッションみたいなこともやるよとは事前に聞いていたんですけど、私にはそんな経験もなかったし、そもそもバンドで歌ったことも一度もなかったから、ずっと「大丈夫かな?」という気持ちで。実際、番組の中でやることの難易度の高さでいえば過去イチでしたし、収録のたびに毎回ヒーヒー言っているんですが(笑)、すごくありがたい経験だなと思いながら楽しくやらせていただいています。

──乃木坂46加入から半年ほど経った頃、中西さんに今後の目標についてお聞きしたら、「私もいずれ乃木坂46を背負って、外番組などの個人のお仕事を通して歌やダンス、演技などで恥ずかしくない存在になりたい」といった旨をお話しされていましたが、意外にも早く実現しましたね。

中西:自分でもまさかこうなるとはという感じではあるんですけど、本当にありがたいことだと思っています。

──歌に関する活動となると、5期生で出演する『超・乃木坂スター誕生!』(日本テレビ系)もありますが、あちらは11人いるからこそ成立している部分も大きいのかなと。そういう意味では『Spicy Sessions』はまったくの別ものですよね。

中西:2つとも歌番組という点では一緒ですけど、得られるものも学べることも全然違います。正直、『Spicy Sessions』が始まる前は乃木坂46メンバーとしてひとりで出させていただくので、「個人での戦いだ」と気を張っていたんです。でも、黒沢さん(黒沢薫/ゴスペラーズ)はもちろん、バンドや番組スタッフの皆さんがすごく温かくて、いろんな面でサポートしていただいています。

──『Spicy Sessions』はまず何より生演奏で歌うことが大きな特徴で、中西さんのソロ歌唱パートも用意されています。

中西:生演奏で歌うのとオケ(バックトラック)で歌うのとは、本当に全然違っていて。生演奏では歌う自分が指揮者みたいな感覚になるんです。例えば、自分の歌のペースにバンドの方々が合わせてくれるので、そこに対して自分がどんどん先陣を切って曲を進行させなければならない。それを初めて経験したときは、ちょっと新鮮だと感じつつも難しいなと思いました。

──番組初回では椎名林檎さんの「丸ノ内サディスティック」をひとりで歌っていましたが、緊張はしているんでしょうけど、同時に気持ちよさそうに歌う感じも伝わりました。

中西:ありがとうございます。生バンドで歌うこと自体が初めてだったので、確かに緊張していたんですけど、私とバンドの皆さんの呼吸がカチッとハマる瞬間が何度も感じられて、その気持ちよさも大きかったんだと思います。あの瞬間は本当に何ものにも変えがたいというか、ここでしか味わえない気持ちよさがあるんです。でも、同時に少し大変なタイミングというのもたくさんあって。それこそ収録のたびに新たな挑戦の連続で、急に「ハモりをやってみようか?」とか歌割りもその場で決まっていくことも日常茶飯事なので、いかに柔軟に対応していけるかという部分では、いつもヒリヒリしています(笑)。

──放送された中で、特に印象に残っている曲を挙げるとしたらどれになりますか?

中西:いろいろあるんですけど、川崎鷹也さんと歌わせていただいた「366日」(HY)はいろんな人から「あれが好きだった」と言ってもらえることが多くて。私も川崎さんも歌い方や歌へのアプローチが異なるんですけど、それでも2人の声が合わさったときは自分でも「今、呼吸が合っている!」って強く実感できたので、忘れられない1曲です。あと、乃木坂46の「思い出が止まらなくなる」をバラードアレンジで披露したときも反響が大きくて。私にとっても初めてアンダーセンターをいただいた大切な曲ですし、MVの雰囲気や振り付けの可愛らしさも気に入っていたんですけど、バラード調にテイストを変えただけでこんなにも切なさが増すんだなと。オリジナルバージョンとはまた違った魅力に溢れていて、歌っていても気持ちよかった1曲でした。

──『Spicy Sessions』のみならず、中西さんは2023年4月から『NHK俳句』にもレギュラー出演しています。これも大抜擢でしたよね。

中西:本当ですね。俳句は小学校の授業でちょっと触れて以来だったので、お声がけいただいたときは本当にびっくりでした。この番組も『Spicy Sessions』と同じくらい難易度が高くて(笑)、毎回苦戦しながら俳句を作っているんですけど、番組のスタッフさんがすごく温かく接してくださって。そういう優しさに触れるたびに「俳句って私が思っている以上に敷居が高くないものなんだ」と思えるようになって、収録を重ねるごとにどんどん好きになっていきました。

──いろいろな困難を経験しながら、それをすべてプラスに捉えて自分のものにしている感じがあります。

中西:いやいや。ちゃんとできているかわからないんですけど、『NHK俳句』然り『Spicy Sessions』然り、いろんな場面で誰かのいい部分を吸収して自分に取り込もうっていう意識は常に持っているつもりではいます。

「知らなかった自分に出会えたのがアンダーライブ」

──ここからは乃木坂46での活動についてお話を伺っていきます。中西さんは昨年春の『32ndSG アンダーライブ』からアンダーライブに参加し始めましたが、それ以前に客席からアンダーライブを観たときにその熱量にやられた、自分もいつか経験してみたいとおっしゃっていたことが印象に残っていて。

中西:乃木坂46に加入する前の研修生時代、初めて全体ライブを配信で観させていただいたときはその美しい世界観に引き込まれたんですけど、その一方でアンダーライブはメンバーの心の叫びが直接こちらにぶつかってくる感じがして。もちろんどちらも魅力的で素敵なんですけど、特にアンダーライブのあの泥臭さや熱さがカッコいいなと魅了されたことをよく覚えています。

──実際にご自身でアンダーライブを経験してみたことで、そういう思いに対して何か変化を感じたりはしましたか?

中西:自分も先輩方と同じように気持ちを素直にぶつけられるようになったのは『34thSG アンダーライブ』(2024年1月)からのことで、それまでは新しく覚えることもすごく多くて先輩のあとを必死についていくだけに近かったんですけど、34枚目シングルからは「自分たちでライブを作っているんだ!」っていう意識が強く芽生えてきて。そこからは自分たちの気持ちもしっかり歌に乗せられるようになったと思います。

──中西さんが座長を務めたアンダーライブでしたね。

中西:座長としてやらなければいけないことがたくさんあったので、過去のアンダーライブとは全然違いました。会場に来てくださる方の多くはアンダーライブをずっと観てきてくださっている方ばかりで、目が肥えていると思うんです。その人たちによかったと思ってもらうには、まず私が先頭を走っていかなきゃいけなくて。そのプレッシャーもかなり大きかったので、過去のライブを観返したりしながら「どうやって向き合っていこう?」「どうやって作っていこう?」って模索しました。

──その答えは、ライブを通して見つかりましたか?

中西:いろいろ考えたんですけど、最終的にはがむしゃらにぶつかっていくことだという結論に達しました。私は自分の心を素直にさらけ出すことが苦手だったんですけど、『34thSG アンダーライブ』では私たちが思いをぶつけると、それと同じだけの思いが客席から返ってきたので、そこである種、ファンの方々の反応から手応えを感じたというか。そういう実感を得られたのは、すごく大きな経験だったと思います。

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──先ほど、座長としてまず先頭を走っていかなくちゃいけないという話がありましたが、積極的に先輩や同期メンバーを引っ張っていくことはできましたか?

中西:いや、もう全然でした(苦笑)。今でもよく覚えているんですけど、1曲目の「マシンガンレイン」で私の両サイドが松尾美佑さんと中村麗乃さんで。ステージに出る前は怖くて泣いていたんですけど、2人が「絶対大丈夫!」って背中をさすってくれたり、時には気合い入れで背中を叩いてくれたりしたこともありました。だから、自分がみんなを引っ張るというよりは、みんなが支えてくれてなんとかステージに立てたライブでした。

──5期生としてのアンダーセンターは中西さんが最初でしたが、思えば29thシングル『Actually...』のときもいきなり5期生から初選抜入り、かつ初センターでしたものね。

中西:そう考えると、先陣を切っていくことが多いですよね。その都度「どうしよう?」と不安になっているんですけど、先輩方然りスタッフさん然り、周りにいる方々がいつもフォローしてくださったし、同期もすぐそばで励ましてくれていました。

──視点を変えれば、それだけチャンスを多くもらえているということでもありますものね。

中西:そうですよね。そこを活かすも殺すも自分次第ですし、常にありがたく感じています。

──実際、昨年からアンダーライブを重ねるごとに中西さんの存在感や自信がどんどん強まっている印象があるんです。

中西:本当ですか。そう感じてもらえたのはすごく嬉しいです。私自身も、今まで自分が知らなかった自分に出会えたのがアンダーライブでしたし、個人的にもすごく変われたなと思っていて。加入してからしばらくは手探りの状態が続きましたけど、今はそういう迷いが減っているんじゃないかという気がします。でも、それは私に限ったことではなく、きっとほかの同期のみんなも回を重ねるうちに自分なりのやり方をそれぞれ見つけて、ライブもどんどんいいものにできるようになったんじゃないかな。そういう意味では、同期の存在は本当に刺激になっています。

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