After the Rainというユニットの価値を再確認 そらる VS まふまふ、歌で繰り広げた熱戦
楽曲披露からMCまで、勝負の目を宿したそらるとまふまふ。結果として、音楽に対する真剣さと、互いへの尊敬と信頼が垣間見えたところに、After the Rainというユニットの価値が光り輝いた。
8月10・11日、千葉・LaLa arena TOKYO-BAYにて『After the Rain Live 2024 ~ そらる VS まふまふ ~』が開催された。『After the Rain Winter Live 2023 アイムユアヒーロー』以来、約8カ月ぶりのAfter the Rainのライブだ。今回はライブタイトルにあるとおり、バーサス(対決)がテーマ。世界がパリ五輪に沸く最中で開催するあたり、セカイ系(曲の概要欄が世界から始まる)の楽曲を持つAfter the Rainらしい。引き分けだった初日。果たして、2日目はどうなるのか。そう期待を膨らませて36℃にものぼる猛暑日、会場に足を運んだ。
ステージ上の円形トラスのなかに、黒衣装の勇者に扮したそらると白衣装の天使に扮したまふまふが姿を現すと、ふたりの勝負が幕を開けた。早々にコール&レスポンスを叶えた「極楽地獄」からドロップされたのは、7年前の曲「アンチクロックワイズ」。After the Rainの作品のなかでもまふまふの高音パートの難易度が高い一曲である。艶のあるそらるの歌声と空を切り裂くようなまふまふの歌声は、透明なシャワーとなって客席へと降り注いでいく。ヒートアップする掛け合いと、大胆に片足を蹴り上げるまふまふからもこの日にかける熱い思いがひしひしと感じられる。バトルを彷彿とさせる派手なレーザーが飛び交い、「レッドスプライト」でスパークラーが吹き出し花火を描くなど、ステージは歌を強調するシンプルな構成になっていた。
今回のライブでは、珍しくふたりのソロパートがメインに据えられていたことも特筆しておきたい。先攻は「捨て子のステラ」を歌い上げたそらる。「まふまふのことをこてんぱんにしていこうと思うのでよろしくお願いします!」の一言は、一瞬でそらるの立つ場所を格闘技におけるリングに変えた。特効の炎が燃え上がる「アイフェイクミー」で〈敗北のない 駆け引きじゃ 施しも夢も無いぜ?〉とライブのテーマをよぎらせ、マイクスタンドで高音域を響かせた「待ちぼうけの彼方」。包み込む低音が特徴のそらるがまふまふの作った楽曲を歌うと、その声にはどこかまふまふのハイトーンボイスに通底するところも感じられた。
繊細な声を発するその身体から徐々に抑えきれない感情が解き放たれていく「悔やむと書いてミライ」からまふまふのソロパートへ。「みんなで声出してこうな!」と煽った「マトリョシカ - Arrange ver. - 」でボカロの最盛期を思わせる空気感へと場内が染まる。片腕を客席に預けて歌う声は笑顔。龍に似たギターの音色と叫びを混ぜた声色での英詞が共鳴した「ECHO」もカバーでありながら圧巻だった。その声は迷いなくダイレクトに響いてくるもので、そらるとは異なるエネルギーを感じさせるパフォーマンスだ。
軽装になったそらるはギターロックチューン「アノニマス御中」、「ハローディストピア」へディープダイビング。「(歌声は)速くて高いほうが強いだろう……でも、高けりゃいいってもんじゃないから」と、まふまふのいないステージでこっそり優位に立とうとするそらる。「オーロラ」の〈高く高く〉という歌詞を挑戦状さながらに響かせた。一方、細身のパンツに衣装チェンジしたまふまふが、腰を低く構え、天まで届くような声で「サクリファイス」を歌う姿は、そらるの挑戦状を払いのけるかのごとく映り、魂の戦いを目の当たりにしているかのようで新鮮だった。
「速くて高いほうがポイントが高いみたいに言ってたけど、キーには適性があるので、僕の最高値とそらるさんの最高値は平等。……うわあ、これで好感度爆上がりですよ(笑)」と、まふまふ。これには客席も笑いの渦に包まれた。続けて、ダウナーな「おとといきやがれ」、「ナイティナイト」、「喰病しのイデア」、「ナイトクローラー」と多彩に駆け抜けた。