Jr.EXILEが先導するJ-POPルネサンス アジアアーティストとの相次ぐコラボで高まる存在感
コラボレーションが実現した“必然性”
時代を開拓するエポックメイキングな名曲というのは、(偶然にしろ)ある瞬間、軽々と国境を越えたり、アクチュアルなコラボレーションや化学反応を生み出したりするものである。1991年、日本のダンス&ボーカルグループとR&Bシーンの画期的存在となったZOOがドロップした「Choo Choo TRAIN」は、まさにそんな記念碑的なナンバーだった。
同曲の功績は、その後J Soul BrothersからEXILEが組織され、今なおLDHグループ全体の歴史として伝承されている。Jr.EXILE世代に区分されるFANTASTICSが、韓国のC9 Entertainmentから2021年にデビューしたボーイズグループ EPEXとコラボレーションしたEP『Peppermint Yum』を今年3月にリリースした。同EPは、昨年より、プロダンスリーグ『D.LEAGUE 23-24』のアンバサダーを務めたFANTASTICSとEPEXによる鮮やかな手合わせだが、コラボレーションが実現した偶然性が面白い。
コラボレーションのきっかけは、EPEXがTikTok上にアップしたFANTASTICSバージョンの「Choo Choo TRAIN」のダンス動画をFANTASTICSメンバーが見つけ、SNS上でやり取りするようになったことだというのだ(※1)。FANTASTICSは2022年11月に、LDHグループではEXILE以来となる同曲の正式カバーをリリースしている。同カバーは、2022年5月に始動した『FAN FAN PROJECT』の一環で制作された「FAN FAN三部作」第2弾シングルであり、サウンドプロデュースには亀田誠治が参加。オリジナル版リリースから30年以上経ったこの令和のSNS上で、日本と韓国の若手アーティストが、ひとつの楽曲によって邂逅を果たす。この偶然の出会いからコラボレーションをモノにするとは。まさに現行シーンを疾走する過程で生まれた“必然”と言わざるを得ないだろう。
T-POPマーケットでの武者修行
FANTASTICSとEPEXがある種の必然的な共演を成し遂げたのは、コロナ禍以来、アジアを中心に海外進出への舵取りを続けたLDHの戦略に裏打ちされている。2023年10月からEXILE AKIRAが代表取締役社長CEOを務めるLDH台湾だけでなく、今や韓国のK-POPに追いつけ追い越せの勢いで迫るT-POP市場を拡大中のタイとも密接な連携関係がある。
2022年、タイの音楽レーベル HIGH CLOUD ENTERTAINMENTとのパートナーシップを結び、その第1弾プロジェクトとして同年8月、Jr.EXILEからBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERが現地へ送り出された。タイのヒップホップ界を牽引するラッパーにして、HIGH CLOUD ENTERTAINMENT設立者のひとりでもあるF.HEROのもと、異国の地での武者修行を行ったのだ。PSYCHIC FEVERは、同年7月にデビューアルバム『P.C.F.』をリリースしたばかりだったが、タイのダンス&ボーカルグループ DVIをフィーチャーした「To The Top feat. DVI」を2023年2月にリリースしたり、デビュー時から米ビルボード「グローバルチャート1位」という目標を掲げるPSYCHIC FEVERにとっては先陣的なラッパー SPRITEとも同年9月リリースの「FIRE feat. SPRITE」でコラボレーション。「To The Top feat. DVI」と同じビートメイカーのチームが制作し、多彩なアーティストと共演を続けた。
BALLISTIK BOYZもT-POPシーンを代表するTRINITYとコラボレーションした「Drop Dead feat. TRINITY」を2023年2月にリリースし、TPop Weekly Chartで初登場4位にランクイン。同曲は、グループ初の全編英語詞で、グローバルな展開を視野に入れた実践的アプローチでもあった。実際、YouTubeで公開されたMV再生回数は1300万回以上(2024年7月末時点)。このドロップで勢いを得た彼らは、次にタイの人気俳優 GULF KANAWUTをフィーチャーした「All I Ever Wanted feat. GULF KANAWUT」を2023年10月にリリースし、初登場5位のチャート成績を記録した。
こうしたT-POPマーケットでの武者修行の影響は、マレーシアやシンガポールなど他のアジア諸国にも広がっている。GENERATIONSの楽曲プロデュースを担当したこともあるJP THE WAVYをプロデューサーに迎えたPSYCHIC FEVERの「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」は、マレーシアを足がかりにアジア各国でバイラルヒットしたばかりか、南アフリカのリスナーをも刺激。アジアを含めた全世界でのヒットのポテンシャルを十分に示した。