20th Century、アイドル最年長の極上エンタメ 少年隊から“友達の曲”まで楽しむ純粋な心

 坂本昌行、長野博、井ノ原快彦による20th Century(以下、トニセン)がライブツアー『20th Century Live Tour 2024 ~地球をとびだそう!~』を開催した。6月の仙台公演を皮切りに全国9カ所、全24公演を敢行。「地球の皆さんに、宇宙から熱い思いを送りたい」というコンセプトのもと、ヨーロッパ企画の上田誠が脚本参加するなど、トニセンならではのエンターテインメントショーとなっている。本稿では、神奈川県民ホール 大ホールで行われた7月19日昼公演の模様をレポートする。

 この日の1曲目は「トライアングル」。ステージを覆う紗幕に、様々な三角形とトニセン3人のシルエットがカラフルに描き出されていく。ステージ上段を照らす青、紫、緑3色のライトの下、黒いスーツ姿の3人が浮かび上がると波のような拍手が贈られる。〈信じられるかい 全て 長い夢の途中だよ〉と突き抜けるような井ノ原のボーカルに坂本と長野の声が重なり、静かに熱を帯びてライブは幕を開けた。

 そんな静けさから一転、バックダンサーがステージに登場し大人の魅力たっぷりのダンスで魅せた「X,T,C, beat」、激しいラップナンバー「Over Drive」と続き、サングラスを身に着けて始まった「大人Guyz」ではファンと歌声の掛け合いに加え、札束が噴射される演出でライブ序盤とは思えないほどの盛り上がりを見せる。アダルトなラブソング「Air」では、歌い出しで大歓声が巻き起こった。情感たっぷりに歌い上げられるなか、一人ひとりにライトが鋭く当たり、最後には6色の照明がステージを彩る演出も心憎い。V6の数ある楽曲のなかでも人気のアルバム曲が連続で披露され、会場の熱も上昇し続けていく。キュートな振り付けとアイドルらしい笑顔で歌われた「夏のメモリー」、客席に降り、ファンに囲まれながらのパフォーマンスとなった「旅立ちの鐘」と、オープニングから怒涛のセットリストだ。

 トニセンのライブと言えば、長野が何らかの形で“空をとぶ”のが恒例。長野はツアータイトルになぞらえ「今は宇宙時代。グローバルを超えてユニバーサルに行かないと」と語るが、坂本は「今回長野くんはとびません!」と断言する。この会話にもどこか“含み”が感じられるが、そのままトニセンらしい和やかなMCが展開した。

 続いてのブロックでは、ステージ上にクラシックな扉やシャンデリア、レトロな窓などが次々と現れ、昨年11月原宿にオープンしたトニセンプロデュースの喫茶店「喫茶二十世紀」を再現したセットに様変わり。「喫茶二十世紀」の制服風の衣装に着替えた3人が次々と喫茶店の扉から登場し、「回れよ地球」をパフォーマンスした。曲の終わり、メンバーが揃ってほっぺたにハートを作る姿に、客席からの「かわいい!」の声が鳴りやまない。井ノ原が「『かわいい』って言われることに病みつきになっちゃって……」と語ると、会場はさらなる「かわいい」コールと笑いに包まれた。

 次に「喫茶店でライブをしたら」というテーマのアコースティックライブコーナーへ。この回で披露されたのは「不惑」。カホンをはじめとしたパーカッションやアコースティックギターが3人の声と合わさって、心地好い音色を響かせる。毎回その場で長野が振り付けを考えているという最新曲「Hurry up ~今すぐに君の手を~」では、ハンドクラップとペンライトを使った振りで会場がひとつになった。

 続いてV6の楽曲「ある日願いが叶ったんだ」をアコースティックならではの柔らかなアレンジで披露するが、途中から異変が。なんと長野が曲の途中にもかかわらず、喫茶の扉から出て行ってしまうのだ。ステージ中央のモニターにUFOにアブダクションされてしまった長野の姿が映し出されると、大きな笑いが巻き起こる。宇宙から戻ってきた長野は軽快なステップで階段を降り、ロックダンスを披露するなど上機嫌な様子だ。坂本と井ノ原も戸惑いや苦笑いの表情を浮かべながら歌い切るが、何があったのかを尋ねられた長野は、「願いが叶っちゃった」「まだ僕も混乱してるから落ち着いてから伝えたい」とふわふわした様子で答えるばかり。舞台俳優としても活躍する3人のコミカルな演技と息の合ったやり取りで、会場を爆笑の渦に巻き込んでいく。やり取りのなかで坂本が「ふふっ、楽しいね」と、思わず本音をこぼした場面も印象深い。

 喫茶の制服のエプロンを外し、スパンコールのついた白いジャケットを身にまとうと、かつてバックダンサーを務めていた3人の“ルーツ”とも言える少年隊のヒット曲メドレーへと移る。「What's your name?」「ダイヤモンド・アイズ」「デカメロン伝説」と、立て続けにハードながらエレガントなダンスで魅了し、「君だけに」では空いっぱいの星を思わせるライティングのなか、美しい掛け合いで名バラードを熱唱。お馴染みのアウトロでのフィンガースナップからのじゃんけんも、トニセンらしいお茶目なワンシーンだ。

 「レイニー・エクスプレス」に続いて「まいったネ 今夜」では女性ダンサーとのムーディなパフォーマンスでジャズの魅力を開花させる。振り起こしをせずとも、振りは各メンバーの身体に浸み込んでいたと言うが、まさに全身でリスペクトを表現したクラシカルなステージだった。

 ここで落ち着きを取り戻した長野が、なぜ曲中にステージから去ったのかを説明する。「呼ばれたような気がして」と外へ出たところUFOにさらわれ、「宇宙人からメッセージを受け取った」とのこと。パラボラアンテナ型のロボット・PARABOによって、地球の情報が宇宙に送られていると語り、「地球の音楽は宇宙で大流行、なかでも邦楽は最大の人気。僕たち3人の音楽もV6の頃からの根強いファンが多いらしいよ!」と誇らしげに話す。さらに宇宙最大の音楽フェス『ギャラクシーソニック』、通称『ギャラソニ』にトニセンがヘッドライナーとして招待されたという。「喫茶二十世紀」にひそかに搭載されていた宇宙船で、会場のファンごと『ギャラソニ』に参加することに……という怒涛の展開だ。

 彼らには宇宙と交信できる“銀河チャート1位”になった楽曲があると明かされると、「WAになっておどろう」が流れ始める。客席とステージが一体となって手を振ってUFOを呼び寄せると、いよいよ宇宙船が地球をとびだした。紗幕越しに繰り広げられるダンスパフォーマンスで宇宙を旅する様子が描かれた「地球をふりだそう」は、歌詞の一部が今回のライブ仕様になっていて、『ギャラソニ』への期待を煽っていく。

 メタリックなロングジャケットを羽織ったトニセンが再登場すると、いよいよ『ギャラソニ』がスタート。イントロだけで会場の温度が上がった「MUSIC FOR THE PEOPLE」、ライブの定番曲「Believe Your Smile」と続く。ジャケットを脱ぎ捨てジャンプスーツ衣装になると、スクリーンに宇宙人キャラクター・うちゅ友が手拍子するキュートなアニメーションが映し出され、「愛のMelody」へ。手拍子と振り付けで会場をひとつにし、怒涛のV6メドレーを繰り広げていく。

 さらにComing Century「夏のかけら」を披露すると、会場は大きな驚きに包まれた。曲のアウトロで井ノ原が「俺たちの友達の曲です!」と叫ぶと客席から大歓声が贈られ、続く「Theme of Coming Century」のイントロで観客のボルテージが最高潮に達する。赤、オレンジ、黄色の照明のなかで行われた全力のコール&レスポンスと熱いパフォーマンスからは、“友達”の楽曲を愛をもって歌い継ぐという意志に加え、トニセン自体が次の時代へ進んでいく高らかな宣言のように感じられたのだった。

 本編最後の楽曲は「カノトイハナサガモノラ」。無重力によって3人の名前が変化したこの楽曲は、トニセンらしいあたたかさと優しさにあふれていた。曲中に行われたバンドのメンバー紹介もユーモアたっぷりで、チームワークを感じさせる。そしてファンが笑顔でペンライトを揺らし、舞い散る銀テープにその光がキラキラと反射する光景は、トニセンの音楽がもたらす喜びを象徴するような印象的なシーンだった。

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