連載『lit!』第111回:STU48、清 竜人25、ファントムシータ……令和のコンセプチュアルなアイドルグループ

 古くは「放課後のクラブ活動」として一時代を築いたおニャン子クラブや「笑わないアイドル」として一世を風靡したWink、平成に入ってからも「いま、会えるアイドル」としてアイドル文化を飛躍的に押し上げたももいろクローバーZ、聖地・秋葉原から「萌えキュンソングを世界にお届け」でおなじみのでんぱ組.inc、最近だと「原宿から世界へ」を打ち出すKAWAII LAB.が輩出したFRUITS ZIPPERなど、時代を彩ってきたアイドルグループはそれぞれの活動を特徴づけるコンセプトを持っていた。その切り口は令和になっても変わらず、名刺代わりのキャッチコピーとしながら、他のグループとの差別化を図っている。今回はここ1か月の新譜の中から、楽曲やルックスに特徴を持つコンセプチュアルな作品をピックアップしてみた。

STU48『懐かしい明日』

【公式】STU48 1st Album 『懐かしい明日』ダイジェスト映像

 “会いに行けるアイドル”をコンセプトに活動する秋元康プロデュースの48グループ、国内6番目のグループとして結成されたSTU48は、ときに社会的に排除されてしまうようなマイノリティーの心のわだかまりを代弁する楽曲を発表してきた。デビューシングルにして〈生きることに傷つきうろたえて/無様でいたい〉と言い放った「暗闇」に始まり、手の届かない夢をもがきながらも追いかける「無謀な夢は覚めることがない」、混乱を極める世界情勢を憂えた願いのうた「花は誰のもの?」など、従来の王道アイドルのイメージに一石を投じてきたSTU48だが、2017年の結成から7年あまりで満を持してリリースされた1stアルバム『懐かしい明日』のリード曲「愛の重さ」もまた、SNS文化が普及し時代とともに他者とのリアルな関わりが希薄になりつつある現代の愛の感じ方を投影しているようだ。

 絶対的センターだった瀧野由美子が昨年卒業し、転換期を迎えたSTU48が放つメッセージに引き続き注目していきたい。

清 竜人25「Will you marry me ?」

清 竜人25 - Will you marry me ?

 「清 竜人25、再結成」のニュースを目にした瞬間、解散前の活動を観ていたいちファンとして興奮を隠せなかった。それまでソロで活動していたシンガーソングライター・清 竜人を中心に取り囲んでパフォーマンスする“一夫多妻制アイドルユニット”で、そのハーレム状態をまざまざと見せつけられながらも不思議と虜になってしまう画期的な音楽体験だった(再結成前のシングルやアルバムがDVD付きでトールサイズパッケージだったのが懐かしい)。ラストコンサートから約7年の時を経て再結成されたわけだが、迎えられた新メンバーは清 さきな(=頓知気さきな/femme fatale)、清 嬉唄(=島村嬉唄/きゅるりんってしてみて)、清 凪(=根本凪/ex. 虹のコンキスタドール、でんぱ組.inc)、清 真尋(=林田真尋/ex. フェアリーズ)と、アイドルファンならご存知であろう錚々たる“夫人たち”が揃った(その後、清 嬉唄とはお別れして、清 ゆな(=チバゆな/きゅるりんってしてみて)と“結婚”したそうだ)。リアレンジが施され新たな夫人たちによって再録音された代表曲「Will you marry me ?」は、原曲のグルーヴ感をそのままによりタイトに削ぎ落された音像と厚みを増したエフェクトで、再結成の高揚感に満ち溢れている。

 いつかのテレビインタビューで、「周りから求められているのであれば」とまんざらでもない表情を浮かべていた清竜人。あのにんまりした笑顔でステージに現れ、オーディエンスを包み込んでくれることだろう。

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