サバシスターの“始まり”を見た渋谷クアトロワンマン ロングツアーで手にしたバンドの根幹を支えるもの

サバシスター、初ワンマンを観た

 これが今までで一番大きくて長いツアーだった。何週間も家を空け、メンバーとずっと一緒にいた。いろんな県に行く中で、曲が完成していく実感を初めて得られた。本編後半のMCでなち(Vo/Gt)が語り始めたことである。

 2022年の春結成、わずか5カ月で『SUMMER SONIC』出演、その後も快進撃が続く……と言われてきたサバシスターだが、コロナ禍のスタートに足りなかったのは、そういうシンプルな巡業の日々だったと今さら気づく瞬間だった。若いから飲まず食わずで機材車を走らせたとか、客なんか10人もいなかったとか、多くの諸先輩が笑い話として披露する下積み時代。いわば「アマチュアの集団」が「話題のバンド」になっていく羽化の時期。話題性はすでにあるのでサバシスターは順番が逆な気もするが、バンドがバンドになっていくプロセスはそう変わるものではない。一番大事なところを、今、彼女たちは経験したばかりなのだ。

サバシスター ライブ写真

サバシスター ライブ写真

 事実、4人はバンドになっていた。昨年見た時「とにかく幸せそうに楽器と戯れる女子3名+冷静にサポートに徹する長身ベーシスト」という印象だったステージは、アイコンタクトを取り、共に観客を煽り、笑顔でジャンプを繰り返す4人のものになっていた。サポートのサトウコウヘイが「Dくん」の愛称で親しまれるナイスガイであることを私は初めて知ったが、一年足らずで関係性やキャラはこうも変わるのかと驚いてしまう。これは余談になるが、後半「22」の途中に挟まれたメンバーの画力対決企画では、上手か下手か全然わからないDくんの絵が結局一番の盛り上がりをさらっていたのであった。

 本題はあくまで音楽だ。開始早々に響き渡る「ジャージ」や「キラキラユー」は、もはや全員が唱和するみんなのうた。10代を振り切って大人になっていく瞬間を切り取るポップソングは、いつ見ても頬が緩むほど愛らしい。ただ、一発目の曲が「覚悟を決めろ!」であったように、今のサバシスターはもうちょっとピリッとしている。言い換えればロックンロールしている。〈僕のこの歌/誰にでもできるとか言われるよ〉と本人が歌っているのだから、なるほど真似できない技巧の持ち主とは言い難い。ただ、そんなことを真正面から歌うシンガーがまずいないように、自分たちにしか歌えないユニークなセンスに対して「覚悟を決めろ!」と言える段階に入っているのだ。

サバシスター なち ライブ写真
なち
サバシスター るみなす ライブ写真
るみなす
サバシスター GK ライブ写真
GK

 むろん、何もかもがロック化したわけではない。初ライブからずっと大事にしてきたと紹介する「しげちゃん」を筆頭に、中盤のバラードたちは今も重要な楽曲だった。ただ、バラードと言ってもひたすら熱唱が続くものではなく、るみなす(Gt/Cho)のギターソロのほうが雄弁に響くところが面白い。さらに「マイベストラブ!」や「東京こえー」ではGK(Dr/Cho)がテンポをがらりと変える瞬間に一番のダイナミズムがある。要するに、常にバンドサウンドが、各自が重ね合うアンサンブルが主役なのだ。その構造はアップテンポな曲よりもバラードのほうが伝わってくるくらいで、すべてロック化しては魅力が半減してしまうとの判断があるのなら、これはものすごくクレバーなことだと思う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる