ハルカミライ 橋本学×TETORA 上野羽有音、自由を重ねていく活動スタイル “武道館バンド”としてのリスペクト

ハルカミライ橋本×TETORA上野 対談

サブスクや同世代バンドとの距離感

――ちなみにTETORAは「インディーズで武道館」という目標を掲げていましたが、“インディーズ”であることにも何かこだわりがあるのでしょうか?

上野:いや、メジャーに行きたくないとか、ずっとインディーズがいいとか、そういうことでは全然なくて。ただ、ちょっと他のバンドと違うことがしたいなと思っていて。インディーズで武道館に立つバンドってあんまりいないから、やりたいなっていうくらいです。

――こだわりと言うと、TETORAはサブスクや配信は解禁せず、音源はCDのみでリリースしています。ハルカミライもインディーズ時代はサブスクや配信をしていませんでした。お二人はデジタルリリースについてはどのように考えていますか?

橋本:自分が10代とか20歳過ぎたくらいのときって、金がなくてCDを全然買ってなかったんですよ。むしろ今のほうが買ってる。サブスクで聴けないアーティストもいっぱいいるし。そういう時代を生きている20歳前後の子からしたら、インプットするにはサブスクはすごくいいものだと思っていて。CDからサブスクに世間が切り替わるタイミングって、“CDこそ正義”みたいな風潮があったと思うんですけど、金ないやつもサブスクだったら聴けるし、5年後、10年後もずっと好きだったらそのとき買えばいいんじゃね? くらいに思っていますね。別にそれがCDを大切にしていないというわけではないと思うし。

上野:私は、サブスクのサービスが始まった頃は「もし自分が音源を出せるようになったら、サブスクは解禁してもしなくてもどっちでもいいや」と思っていたんですけど、いざ自分がサブスクを利用し始めたら、「そこにいたくない」って思うようになって。メンヘラみたいやけど、「私らだけは特別な存在でいさせてほしい」みたいな気持ちになった。でも、だからといって一生その気持ちかどうかはわからない。今はそう思っているけど、一生やりたくないとも思っていないし、サブスク解禁したからってバンドが変わるわけでもない。甲本ヒロトさんのバンド(ザ・クロマニヨンズや↑THE HIGH-LOWS↓)がサブスク始めたら、TETORAも始めようかなくらいの軽い気持ちです(笑)。

――サブスクを解禁していないがゆえの特別感みたいなものは、ファンの方が抱いているものでもあったりしますよね。

上野:はい。だから私たちの気持ちを汲んでCDを買ってくれる人たちがいることはすごくありがたいです。それこそ絶対金ないやろうに、バイトめっちゃ頑張ってたり、お年玉を貯めてくれたりしているわけで。それもわかった上で、今はまだ特別でいさせてほしいです。

――お二人は、仲の良いバンドやライブの共演者以外に、同世代のアーティストの音楽は聴いたり、意識したりしますか?

橋本:リリースされたら聴きますよ。俺、音楽ナタリーとハライチ 岩井(勇気)さんだけをフォローしているXのアカウントがあって(笑)。それを時々見て、「誰々がどこでライブやるんだ」とか「新曲リリースするんだ」とかはチェックしています。けどリリースに関しては勝負事だと思っていないんで、単純に気になったら聴いて、よかったら「うわ、超いいじゃん!」だし、そんなにハマらなければ1〜2回聴いて終わりっていうくらい。

編集担当:これを機にリアルサウンドのフォローもぜひ宜しくお願いします(笑)。

橋本:はい!(笑)

――最近気になっているアーティストがいたら教えてください。

橋本:俺、基本的にずっとディズニーランドのBGMを聴いているんですよ。40周年のアルバム(『ベスト・オブ・東京ディズニーリゾート®・ミュージック ~リメンバー・40thアニバーサリー~』)とか、めっちゃよくて。

上野:確かに、学さんに「今度初めてディズニーランド行くんです」って話したときに「パレードだけは絶対に観たほうがいい」って言われました。

橋本:曲がいいんだよな〜。実際、ディズニーに行って、流れている曲を聴いて「このビートカッコいい!」とか「このキックいい」と思ったらボイスメモを開いて、「ドッタ、ドッタ」って自分の声で残しておいたりするんですよ。

上野:へぇ、すごい!

橋本:やっぱり大人も子供も楽しめる音楽ってすごいなって思う。

――仲の良いバンド以外の同世代のバンドの活躍は気になったりしますか?

上野:フェスの出演者とかを見て「このバンドは出てるのに、私ら呼ばれへんやん」とかはたまに強く思います。音源はあまり掘り下げないかも。対バンしてライブを観てから、もっとさらに深く掘っていくぐらいしかしてないです。

橋本:俺は「こいつらのワンマン、女優とかモデルとか観にきてんのかな」とかは思ったりしますね(笑)。そいつらはそいつらの道だし、俺らは俺らの道だしって考えなんですけど、「女優とかモデルがライブに来てるかも」(本人の勝手な想像)っていうのは嫉妬して横目に見てます(笑)。

積み重ねた先で両バンドがたどり着く場所

――「俺らは俺らの道」という言葉もありましたが、ハルカミライは現状、大きな会場でワンマンを開催できる一方で先輩や仲間のツアーにも呼ばれるなど、ライブバンドとしての地位を確立しているように思います。この先のバンドの行方はどのように考えているのでしょうか?

橋本:全然決めていないです。いい形でやっていけたらいいなっていうくらい。ある先輩に言われたことがあるんですよ、「調子がいいときもあれば悪いときもあるし、登り下りは絶対にあるから。ただ、今ライブシーンで残っているバンドたちって、8割くらいのやつが1回下がってる。そこからまた上がってきたやつらが残っている」って。だから自分たちにもそういうときがくるんだろうなとはボヤッと思っていますけど、その状況に合わせてやっていけばいいんじゃねえかなと思っています。

――今、「ここを目指している」とか「こういう存在になっていきたい」というものはない?

橋本:そうですね。ただ俺個人では、カッコいい先輩たちとずっと仲良くしていたいなと思っています。一目置かれていたいというか。「こいつら、やべえよな」ってずっと思われていたい。例えばバンド主催のフェスで、セールスはあんまり多くないけど、主催バンドとの関係性があって出ているバンドってカッコいいじゃないですか。それが一目置かれていることだって思う。だからそこが目標ですね。バンドの人気が落ちたとしても「お前らはイカしてるからここにいろよ」って言われるようなバンドになりたいです。

――TETORAは「インディーズで武道館」という一つの目標がもうすぐ叶うわけですが、その先は現時点で何か考えているものはありますか?

上野:どうなるんでしょうね。いい意味ですごく自由だなと思っていて。メジャーを目指すのも一つやし、インディーズでずっとやるのも一つやし、それとは関係なくライブハウスでさらにかっこいいライブができるバンドになりたいし。今のところは「これをやりたいです」というのはないです。

橋本:TETORAも俺らもたぶん、「うわ、ここでやってみたい!」とか「これに出たいかも」とか、そういうものを一つずつ積み重ねてきただけなんですよね。「ここに行きたい」と思ったところで、そこに行くための正確なマップがあるわけじゃない。その都度その都度、「武道館やってみたいね」とか「あのフェス、出たいな。呼ばれたいな」を重ねていった先に、どこかにたどり着いているのかもしれない。そういう感じなんじゃないかな。

上野:確かに。そうやっていろいろ重ねて、バンドとして分厚く、深くなっていきたいなと思います。

橋本:なんかさ、一緒にライブやって、打ち上げして、2次会や3次会に行く人は行って、帰る人は帰って、次会ったときに「あのとき楽しかったね」って話をする。それだけでいいし、それが面白いよね。

上野:はい。打ち上げでも、いつもふざけたことばっかり喋ってたから、初めて学さんと“バンド”の話をできた気がしました。

橋本:たまにはいいね。

上野:はい、嬉しかったです。

橋本:TETORAみたいな純度100%のバンドの尖りって最高にカッコいいものだと思っているんだけど、その尖りの中には、“尖ろうと思って尖っちゃった”みたいなものも混ざっていると思っていて。俺がそうだったから。でも歳を取るにつれて、そういうものはどんどんなくなっていって、純度の高い尖りだけが残っていく。そうなっていくTETORAをこれから見られるのが楽しみだな。

上野:頑張ります。武道館も観にきてくださいね。

橋本:うん。もうバンドのスケジュールに入れてあるよ!

上野:本当ですか!? 頑張ります!

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