SHE'S、初のビルボードライブで見せたバンドの深化 新曲も飛び出した特別な一夜をレポート

 全員が今回のビルボードライブの感想を話すタームでは、木村が「これから!って感じなのに2回(2会場)しかやってないから、もっとこのメンバーでまわりたい」と手応えを話し、井上は「『シンクロ』(管弦楽団を加えた恒例のスペシャルライブ『Sinfonia “Chronicle”』)もコーラス入れてやりたい」と言うと満場の拍手が。そして「Memories」の着想については、「春らしい曲を書いたことがなかったけど、3月にビルボード(ライブ)だし」「(高校)卒業からは13年も経ってその感覚は忘れてるから、そういう人にかける言葉もないしと思って、自分の元を去っていった人について書きました。くだらなくても何者でもなくても、今日も生きて、明日も生きようと」と、紹介したこの曲のハチロクのリズムが醸す堂々とした演奏のなんと背筋の伸びることか。まさにゴスペルクワイア調のコーラスが〈Take care, see you again〉という何気ない別れの挨拶に命を吹き込む。そしてラストの〈どんな道のりも/選んだのならば何も言わないぜ/選んだあなたの 僕は味方だ〉のロングトーンの力強さが楽器も渾然一体となって、オーディエンスに放たれた。今回、「Memories」を初披露したことが大正解なこの演奏で高まったチアフルなムードが、全員参加のクラップとシンガロングで沸き立つ「Grow Old With Me」に繋がり、ともに生きる人たちへの感謝が誰の胸にも去来する「Stand By Me」で胸のすくエンディングとなった。

 アンコールも本編終盤のチアフルなムードを引き継ぎ、井上とコーラスの第一声が痛快に響く「Dance With Me」。意外なことに広瀬がフロアに降りる場面もあり(井上が降りるのは少しテンプレになりつつあったが)、バンドの自由な空気にニヤついてしまった。この会場に似合うライブアレンジを実現したとも言えるが、そもそも洋楽をバックボーンに持つSHE'Sのレンジの広さを再認識する機会にもなったので、ぜひ規模を拡大しての実現を希望する。同世代バンドのなかでも独自の深化を見せるSHE'Sのライブは、毎回が新しいのだ。

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