04 Limited Sazabys GEN×KOTORI 横山優也、ライブシーンを語り合う 熱狂の最前線は今どこにある?
【特集:バンドからバンドへと受け継がれるもの】
ライブハウスは今も昔もロックバンドの熱狂の最前線だ。時代が変わり、世代が移ろい、世のなかにいろいろなことが起きても、その文化は根っこの部分で脈々と受け継がれている。今回はそんなライブハウスシーンで活躍するバンド2組のフロントマンに集まってもらった。
かたや名古屋のローカルシーンから飛び出し、今やアリーナクラスの会場でもガンガンライブをやるようなスケールになりながらも、相変わらずライブハウスのDNAを燃やし続けている04 Limited SazabysのGEN。かたや、埼玉・越谷EASYGOINGSをホームに活動を続け、昨年メジャーデビュー。ここからどんどんスケールアップを果たしていくであろうKOTORIの横山優也。ライブハウスとそのカルチャーを愛し、それを胸に活動を続ける両者に、そこから受け取ったものをたっぷり語り合ってもらった。(小川智宏)
モッシュ・ダイブがある派手さみたいなものに、僕らはだいぶ助けられていた(GEN)
――おふたりが昨年12月にラジオで対談しているのも聴いたんですが、ちゃんと話すのはあの時が初めてぐらいな感じだったんですか?
04 Limited Sazabys・GEN(以下、GEN):そうかもしれないですね。いつもフェスとかで「おつかれ〜」ぐらいの話しかしてなかったから。
――GENさんはKOTORIのこと、横山さんのことはどんなふうに思っていたんですか?
GEN:最初出てきた時は、アー写でもbachoのTシャツとか着てるし(笑)、やっている音楽もそういった匂いがすごくしましたね。「この世代でこういうことをやりたがるバンドが出てきたのがめっちゃいいな」って思いました。
――横山さんから見て、04 Limited Sazabysはどういう存在でした?
KOTORI・横山優也(以下、横山):知った時はもう「テレビの人」って感じ。
GEN:出てないよ、別に(笑)。
横山:いや、あるじゃないですか、有名人みたいな。そういう見え方だったから、俺からするとすごく売れてる人(笑)。でも、ちゃんと話してみるとGENさんはいろんなバンドを知ってるし、めっちゃライブも観に行ってるし、すごく説得力があるなと思って。そういうのが好きだからバンドでもこうやって活動をして、いろんな人が(フォーリミのライブを)観ているのはだからなんだな、って。
――今回「ライブ」というテーマでお話を伺いたいなと思うんですけど。2組ともずっとライブの現場で戦ってきているバンドですけど、長く続けていくなかでライブハウスとかライブをやることに対する意識って変わってきました?
GEN:やっぱりコロナ禍を受けて、ライブハウスシーンのモッシュとかダイブとか、そういうもの自体がひょっとしたら過去のものになってしまうのかなって危惧していたんですけど、今こうやって(コロナ禍が)明けてみると、これまで以上の熱狂がある気がしていて。やっぱり強かったんだなというか、カルチャーとしての厚みがしっかりあったんだなって思います。お客さんも一度取り上げられてしまったぶん、すごく求めてお腹が空いていた感じがするので、今はライブハウスでライブをやっていて本当に楽しいですね。
――そのあたりのライブハウスカルチャーというところでは、横山さんはどうですか?
横山:もともとKOTORIは、ジャンル的にもモッシュ・ダイブがない、きれいめなギターロックをやっていたんですよ。それこそ、初めてbachoと対バンした時にモッシュとかダイブというものを体験したんです。
GEN:あ、そうなんだ? むしろそういうものを起こす気でやってるもんだと思ってた。
横山:全然なくて。でも、お客さんと僕らのなかでも「(やっても)いいんじゃない?」みたいな空気があったりはして。そこから、みんな栓を抜いたように飛ぶようになって。いざそうなったら自分も嬉しいし、お客さんも待ってたんだな、やりたかったんだなと思ったんです。それまではおそらく手を上げるのが精一杯だったライブのお客さんの喜びの表現がそれ以上のものになったということが、俺のなかではすごくデカくて。それから作る音楽性も変わってきました。ライブから作る曲が変わっていく感じだった。それが今に繋がってますね。
――今はどんな感じになってます?
横山:僕らはコロナ禍に、お客さんの制限も踏まえて“モッシュ・ダイブが必要ない曲”という方向に振り切ってアルバム(『We Are The Future』/2021年5月リリース)を作ったりしたんですけど、またそこから戻ってきてほしいという思いもあって、ここ1、2年くらいは今を見据えて曲を作ってきたので、それがやっと体現できている感じです。
――フォーリミは去年アコースティックアルバムを出したりもしましたけど、コロナ禍で曲作りが変わったりはしました?
GEN:「状況に合わせた曲を作ろう」という気は、僕らは正直なくて。自分たちがやりたいことは本当にずっと変わっていないので。でも、待っているような状態でしたかね。「無理して出さなくていいかな」とは思ってました。コロナ禍においてモッシュ・ダイブがないというのがスタンダードなライブ活動をしていくなかで、「これもできるんだ」っていう気づきはありました。モッシュ・ダイブがあってお客さんがわーってなっている派手さみたいなものに、僕らはだいぶ助けられていたんだなってすごく感じたんですよ。もちろん席がある会場でもちゃんとできるバンドになりたいと思って活動してましたし、そうなれた気がしてるんです。だから、今後もそれはそれでやっていきたいという気持ちになってます。
――あと、それこそ『YON FES』は、ワンマンとは違って本当にいろんなお客さんが来るわけじゃないですか。実際にステージでも言ってますけど、ダイブとかモッシュとかリフトとかも含めたライブの作り方は、今どんなふうに考えていますか?
GEN:昔は、曲を作る時点で「こうなってほしい」というイメージを持って作った曲が多かったんですよ。「ここでグチャッとなるだろう」「ここはシンガロングだ」「ここはこうやってノるんだ」みたいな。お客さんがこうなるだろうということを意識して曲を作っていたので、(実際のフロアが)そうならなかった時はムカついていたんですよ(笑)。
横山:わかる(笑)!
GEN:「なんなん、それ?」みたいな(笑)。自分たちのワンマンライブだとあまり起きないことでも、フェスだと――言ってしまえば、僕があまり好きじゃないノリ方をしていることもよくあって、それをよく言ったりしてたんですよ。「それはダサいからイヤだ!」とか「やめてくれ!」とか。
――よく言ってましたよね。
GEN:でも、そういうのも一旦コロナ禍ですべてを取り上げられた時に、なんかどれでもよくなりました。「ダサいな」とか「何それ?」とか思ってはいるんだけど、「まあ、楽しそうやな!」みたいな感じ。今は逆に何も言わなくなったかもしれないです。みんなが考えて、みんなが思うようにやってもらえたらいいかなっていうフェーズです。あまりにも目に余る奴はちょっとアレですけどね、自由の意味を履き違えてる奴とか。だけど、基本的に今はなんでも温かく見てる(笑)。
横山:そういうノリ方みたいなことで、俺も何回も炎上してます(笑)。
GEN:俺もたぶん散々してるよ、今まで。しかも曲解されたりもしちゃうじゃん。ずっとリフトが苦手だったんだよね。歌ってる時にバーってリフトができて、みんなで「イエーイ!」みたいな。こんなに自分はエモーショナルな気持ちになってるのに、何が「イエーイ!」だよってすごくイラついて、わざわざ下ろしたりしたこともあるんですよ。でも、それを言ったことによって「GENはダイブが嫌い」と思われてしまって、「あいつらは変わっちまった」とか言われたり。そういうジレンマがありましたね。
――そういうことの伝え方って難しいですよね。
GEN:それに、そうやって言うこと自体がロックじゃないというか。新しいルールが増えた、というわけじゃないけど。
横山:だから、俺はコロナ禍でも「モッシュ・ダイブ禁止」とは言わなかったんですよ。もともと禁止なことなのにそれをやっちゃった奴らの文化だと思っているから、「やっていいよ」ってこっちから言ったこともないし、だから「やるな」とも言いたくなくて。