Newspeak、新章に向けたスタートダッシュ 2年ぶり東名阪ワンマンツアーファイナル

 Newspeakが約2年ぶりの東名阪ワンマンツアー『Newspeak One Man Tour 2024』を開催。ファイナルの東京公演を目撃した。このシンプル極まりないツアータイトルの理由は、長きにわたる曲作り期間のなか、シンプルにワンマンライブを行いたかったという渇望がダイレクトに表れたもの。ボーカルのRei(Vo/Key)が前作『Turn』の際のインタビューでも、ワールドスタンダードな完成度を褒められるよりも、今はライブハウスで目の前のオーディエンスをアップリフトするのが嬉しいという思いを話していたが、その意識はさらに加速しているという印象を今回のライブで受けた。

Rei(Vo/Key)

 アートギャラリーのような表参道 WALL&WALLのミニマムな空間は、各々のアーティストによってイメージを変える。久しぶりのワンマンに期待値を高めたファンでソールドアウトした満員のフロアはイギリスのウェアハウスのような趣でメンバーの登場を待つ。スターターは「State of Mind」。日本語歌詞を導入した今のNewspeakを象徴する一曲をド頭に持ってきたことがこのライブを示唆している。英語と日本語のスムーズな接続、〈君〉の姿を見ることで自分を思い出すという歌詞もバンドの今を再認識させる。サビで多くの手が上がり、すでに浸透していることも証明された。続いて、踊れるUKロックの系譜にある「Wide Bright Eyes」や「No Man's Empire」といった1stアルバム『No Man's Empire』からの選曲が続き、このライブがキャリアを一望し、今のバンドのモードでアップデートしたベスト選曲になりそうなことを理解した。それにしてもバンドが非常に生々しい。しかも90年代以降、主にUKロックで育ってきたリスナーにはあまりにも自然な音場だ。

Yohey(Ba)
Steven(Dr)

 「『Newspeak One Man Tour』ってアホみたいなタイトルでやってますけど(笑)」と、突っ込まれる前に自ら笑い飛ばすRei。それ以上でも以下でもないということだ。メンバー全員、自然と笑顔になっている。それで十分じゃないかという気がしてきた。

 続いてはReiとサポートギターのTAKE(Attractions)のアンサンブルがいい、これまた生バンドのインパクトが強いライブアレンジの「Leviathan」、キャッチーなダンスファンクチューン「What We Wanted」、マイナーキーとメジャーキーを行き来し、Reiの深みのある声を堪能できる「Firelight」と、さまざまな時代の楽曲を効果的にセット。次にどの曲が来るのか待ち望みつつ、イントロの一音からそれぞれのテンションで歓喜するファンのリアクションがとてもビビッドだ。

 新旧のナンバーにすっかり温まったフロアに人懐っこいReiのMCが放たれる。「SNSをフォローしてくれてる人は知ってると思うけど、僕ら一生制作してます」と話すと、わかってるとばかりのリアクション。「スタジオにこもってると家に帰れないけど、ライブをやると僕らの家はここなんだなと思う。『HOME』ってツアータイトルでもよかったかな?」という言葉にも納得した感じの反応が。そして「心の帰る場所について書いた2曲をやります」と話すと、ここまでのグルーヴィーな展開から一転、夜明けの街に帰るような情景がイメージできる「Jerusalem」へ。Yohey(Ba)のシンセベースもグッと空間を拡張。落ちサビ前のパートは郷愁を誘うような切なさだ。シアンブルーの照明が似合う「Ocean Wind & Violet Waves」は、リズムもシンセもギターリフもゆっくりとレイヤーを重ねていくような美しさ。Reiの地声からファルセットまでの声の変化もストーリーを映すように展開していく。楽曲の完成度のスタート地点はやはりReiのボーカルの深みなのだと再認識した。

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