水曜日のカンパネラ、詩羽が伝えたメッセージとは? 現体制初の日本武道館単独公演

 水曜日のカンパネラがワンマンライブ『日本武道館単独公演〜METEOR SHOWER〜』を3月16日に日本武道館で開催した。2021年コムアイが脱退し、詩羽が二代目主演・歌唱担当となった水カンにとって、現体制では初の武道館公演となる。この記念すべき一日をその目に焼きつけようと、九段下には多数のファンが集結した。

photo by 横山マサト

 会場レイアウトはセンターステージ方式が採用され、アリーナ中央に設置された八角形のステージを客席が360度囲むスタイル。アリーナを分断するような格好で南北方向に巨大な花道が設けられており、ステージ上空には映像を映し出すためのスクリーンも。客席には学生や社会人世代の男女を中心としつつも、幼児から高齢者、外国人までありとあらゆる属性の人類が一堂に会しており、幅広い層から支持される水カンならではの著しく多様性に富んだピースフルな光景が広がっていた。

photo by 興梠真穂

 開演時刻を少し過ぎた頃、不意に場内の明かりが落とされて武道館が暗闇に飲み込まれると、明滅する光の演出とともに重たいビートが打ち鳴らされ始めた。歓声と手拍子がこだまするなか、花道からウサギの耳を着けたダンサー隊が現れ、センターステージ上で円陣を形成。すると舞台中央に突如としてぽっかりと正方形の穴が出現し、オープニングナンバー「アリス」のイントロとともにウサギの仮面を着けた詩羽がその穴からせり上がって姿を現す。観客のボルテージは一気に上昇し、武道の聖地は一瞬にして巨大なダンスフロアへと変貌。1コーラスを歌い終えたところで詩羽はおもむろに仮面を脱ぎ捨て、「水曜日のカンパネラです。みなさん、今日は最高に楽しんでいきましょう!」と高らかに告げた。

photo by 興梠真穂

 現体制の幕開けを告げた楽曲「アリス」、「バッキンガム」の連投で口火が切られたライブは、続けざまに「シャクシャイン」、「ラー」といった初代ボーカリスト・コムアイ時代から歌い継がれる楽曲群が畳みかけられていく。以後は新旧織り交ぜたセットリストが繰り広げられ、会場の全員をひとりも置き去りにしない詩羽らしい選曲でオーディエンスを楽しませた。

photo by 興梠真穂

 MCではステージから360度全方位へ向けて満面の笑みで何度も「やっほー!」と呼びかけ、客席のリアクションを執拗に煽ったうえで「元気だね〜」とスカすという、いかりや長介ばりの巧みな話術で魅了する詩羽。水分を補給しつつ、「セトリがね、前半めっちゃ疲れるやつにしたから。文字数多すぎて、めっちゃ疲れるのよ」と冗談交じりに漏らし、「いつも通りのライブをこの大きなハコで皆さんと一緒に楽しんでいけたら」との心構えを口にした。「大舞台だから」と気負うことなく、あくまで普段通りに気軽に楽しもうという彼女らしいメッセージだ。

photo by 横山マサト

 ライブ序盤は比較的ストイックなステージングで展開。レーザー光などさまざまな照明を駆使した派手な空間演出こそ施されたものの、基本的には歌とサウンドのみを武器に勝負するスタイルで聴衆を惹きつけていく。観客はこれに全力の手振りや歓声、コールなどで応戦。「聖徳太子」では、同曲のMVさながらに金髪ボブ集団が現れて詩羽を取り囲み、ラジオ体操を彷彿とさせるキュートなシンクロダンスも披露された。歌い終えた詩羽は舞台中央のセリから奈落へと姿を消し、ダンサー隊のパフォーマンスタイムへ。これを契機に、ライブは次第に遊び心あふれるエンターテインメントショーとしての色合いを強めていった。

photo by 横山マサト

 暗転した場内には突如としてオオカミのインタビュー映像が映し出され、武道館という晴れ舞台で“騙し稼業”に臨める喜びがその口から語られるなか、舞台中央にコタツが設置されオオカミもそこにスタンバイ。すると花道から赤いチュールドレスに装いを新たにした詩羽が再び登場し、「赤ずきん」のパフォーマンスがスタートした。オオカミと詩羽による小競り合いの寸劇も交えながらの歌唱でオーディエンスを大いに楽しませると、続く「キャロライナ」(昨年12月にフジテレビで放送された『明日フェス〜明日までに新曲つくってくださいってお願いしたら曲が良すぎたのでフェスにしちゃいます〜』にて生まれた楽曲)では、舞台上をホタルのように舞う電飾が現れて幻想的な空間を創出。さらに「織姫」では、観客それぞれのスマートフォンのライトを点灯させ、会場内を一面の天の川に仕立て上げた。

photo by 興梠真穂

 極めつきは、「かぐや姫」での空中浮遊パフォーマンスだ。イントロが流れだすのと同時に花道でハーネスを装着した詩羽の体がふわりと舞い上がり、ちょうど2階席ほどの高さまで上昇したところでホバリング。暗闇に一筋のピンスポットライトが月光のように差し込むなかで彼女は穏やかな歌声を丁寧に響かせ、オーディエンスを夢心地に導いた。その後も舞台上に東京・渋谷の雑踏を再現してみせた「モヤイ」、ストップモーションの群衆と大量のスモークでおとぎ話の世界を描きだした「ティンカーベル」などがめくるめくように次々に展開されていくのだった。

photo by 興梠真穂

 詩羽が再びステージから姿を消す。するとスクリーンには紙芝居テイストのイラストが映し出され、昔話『桃太郎』の物語が読み上げられていく。そして、アリーナ内の東スタンド側に巨大な桃を載せたトロッコカーが出現したかと思うと、その桃がパカッと割れて、なかから詩羽が誕生した。トロッコカーはそこからアリーナ内をセンターステージに沿って時計回りに周回し始め、上に乗る詩羽は客席へきび団子に見立てたカラーボールを投げ込みながら「桃太郎」を熱唱。一般的なアリーナコンサートであればアンコールで繰り広げられるような大団円感あふれるその光景に、会場はもはやお祭り騒ぎの様相を呈した。続く「一休さん」からは、ライブのクライマックスへ向けて再び小細工なしのストイックなパフォーマンスで魅せるゾーンへと回帰。「ツイッギー」、「金剛力士像」と強力なダンスビートのハウスナンバーを畳みかけ、「一寸法師」では4人のファンをステージに上げて、ともにパフォーマンスを楽しんだ。

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