スピッツ、10-FEET、ACIDMAN……話題映画主題歌を手掛けるバンドの共通点 キャリアと信頼がヒットの鍵に

ACIDMANら映画主題歌バンドの共通点

 1月19日に公開された映画『ゴールデンカムイ』の主題歌をACIDMANが担当している。『ゴールデンカムイ』は、シリーズ累計2700万部を超える同名漫画の実写映画化作品。明治時代末期・日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌの金塊を巡る大自然のなかのサバイバルを描いた作品だ。その『ゴールデンカムイ』の主題歌は、ACIDMANが書き下ろした新曲「輝けるもの」。ロックフェス『ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」』の主催や6度の日本武道館公演を通し、今年で結成から27年目に突入し、ロック/バンドシーンで存在感を放ち続けてきたACIDMANと、映画『ゴールデンカムイ』とのタッグに今注目が集まっている。

ACIDMAN - 輝けるもの ( 映画『ゴールデンカムイ』主題歌 )

 『ゴールデンカムイ』に限らず、近年は長期連載漫画のメディアミックス作品の主題歌に、長年ロックシーンで活躍し続けてきたバンドが起用されるケースが多く見られる。本稿では、その理由について深掘りしてみたい。

 近年の漫画原作の映画のヒットで真っ先に思い浮かぶもののひとつは、昨年公開された劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』だろう。シリーズ最大の138億円の興行収入を記録した『黒鉄の魚影』の主題歌となったのは、スピッツの「美しい鰭」。同曲は、『黒鉄の魚影』における舞台・八丈島の風景とも重なる瑞々しいサウンドスケープが印象的な一曲。スピッツらしい柔らかさと優しさを感じさせつつ、映画における江戸川コナンや灰原哀といったキャラクターをさりげなくも彷彿とさせるフレーズが散りばめられた歌詞は、キーキャラクターが敵組織に拉致されるという『劇場版 名探偵コナン』シリーズのなかでも屈指のシリアスな展開となった『黒鉄の魚影』の緊張感を緩和させ、物語をあたたかくまとめ上げる。「美しい鰭」はタイアップ作品とバンドの絶妙な距離感、そしてロックバンドとしてのスピッツが作り出すしなやかなアンサンブルから生まれた楽曲であり、35年以上のキャリアをもってして出来上がった一曲と言えるだろう。

スピッツ / 美しい鰭 Spitz / Beautiful Fin

 昨年末の『第74回NHK紅白歌合戦』での演奏も大きな話題を呼んだ10-FEET「第ゼロ感」も、バンドのキャリアがあってこそ生まれた楽曲だ。ご存知の通り、映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌としてリリースされた同曲は、10-FEETの歴史においてナンバーワンヒットソングともなった。ハイテンポなミクスチャーサウンドは『THE FIRST SLAM DUNK』で描かれる山王戦の肉薄するスピード感に呼応する。25年間ライブハウスを主戦場としてきた10-FEETだからこそのロックチューンが、『THE FIRST SLAM DUNK』の世界観との親和性を高めた。

10-FEET – 第ゼロ感(映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌)

 一方で『THE FIRST SLAM DUNK』のオープニングを飾ったThe Birthdayの「LOVE ROCKETS」は、チバユウスケらしいダーティなロックンロールが『THE FIRST SLAM DUNK』における湘北高校のメンバーの空気感と一致。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT時代から突き詰め続け、一層の深みを帯びたチバのロック像が湘北高校のメンバーをより際立たせたのだ。

The Birthday - LOVE ROCKETS【MV】(映画『THE FIRST SLAM DUNK』オープニング主題歌)

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