德永英明、より一層深みを増す芳醇な歌声 音楽を介してファンと繋がった最新ホールツアー

 德永英明の約3年4カ月ぶりのホールツアー『Hideaki Tokunaga Concert Tour 2023 ALL BEST 2』が、12月8日、愛知県芸術劇場 大ホールでファイナルを迎えた。4月1日八王子を皮切りに全19会場で22公演行われたこのロングツアーは、2020年に予定されていたツアーがコロナの影響により延期、さらにその2021年のツアーも中止になったこともあり、本人もファンも待ちに待ったホールツアーだった。

 2022年11月から12月にかけて行われたライブハウスツアーが『Hideaki Tokunaga Live House Tour 2022 ALL BEST』だった。さらに多くの人に歌を届けるべく、春から秋、そして冬にかけて全国のホールを回り、ファンが聴きたい曲、德永が伝えたい歌、長年愛されてきた名曲の数々を一人ひとりの心に届けた。その『Concert Tour 2023 ALL BEST 2』のセミファイナル、12月2日の川口総合文化センター リリア メインホール公演を観た。

 その、どこか儚げでスモーキー、極上の優しさで包み込んでくれる歌は、62歳になった今、まるで樽の中で熟成されたウィスキーのようにさらに深みを増し、薫り立ってくるようだった。

 これまでの作品のジャケットが次々と映し出され、時間の流れを振り返り、数ある名曲の中から何が歌われるのか、どんなベストなセットリストなのか期待感が煽られる。坂本昌之の優しいピアノの音色が「青い契り」のイントロを奏でる。憂いを帯びた柔らかな德永の歌が会場を包み込む。その歌に寄り添うような土方隆行のギターが、歌をさらに“立てる”。このツアーのバンドは坂本昌之(Key)をバンマスに、土方隆行(Gt)、松原秀樹(Ba)、渡嘉敷祐一(Dr)というまさに鉄壁の布陣。“歌心”溢れる演奏で德永の芳醇な歌を伝えていく。

 「輝きながら…」はただただ美しく、〈夢を信じて/生きてゆけばいいさと〉〈心のままに/生きてゆけばいいさと〉という歌詞はもちろん、〈明日へ走れ〉〈破れた翼を/胸に 抱きしめて〉という言葉が、キャリアを積み様々なことを乗り越えてきた德永が歌うことで、格段の説得力を纏い伝わってくる「夢を信じて」、早くも一曲も聴き逃すことができないライブになるということが伝わってくる。一曲歌い終わる毎に客席から德永への掛け声が飛び交う。

 「時代」(中島みゆき)、「駅」(竹内まりや)、「誰より好きなのに」(古内東子)と女性アーティストのカバー曲が続く。一音一音を丁寧に発音しながら、歌詞の行間に浮かび上がる感情や思いまでを丁寧に掬い取るように歌う。オリジナルが描く風景にさらに色や匂いを加えたような感覚で、胸が締めつけられるような感動が押し寄せてくる。

 1994年に発表された「永遠の果てに」は、まるで人の生涯を表しているような歌詞が、聴き手に考えるきっかけを与えてくれる。聴く人や立場によって感じ方も様々だ。だから聴き継がれている。德永の抒情的かつ熱い歌が感情を揺さぶってくる。歌い終わると大きな拍手が送られ、德永はそれを全身で浴びるように観客の思いを受け取った。

 1986年のデビュー曲「レイニー ブルー」は、19歳の時に軽井沢で作ったという制作秘話を挟み、切々と歌いあげていく。ドラマティックでまるで匂い立つように切なさが全編を包み込むJ-POP史に残る名曲は、改めて德永のあの声、繊細な表現があってこそ生まれる絶妙な温度感が魅力なんだ、ということを感じさせてくれる。

 休憩後は一部とは打って変わって激しいサウンドが鳴り響き、沢田研二に提供した「DAYS」(1989年)から総立ちに。沢田の妖艶な世界とは違う、まるで心が湧き立ってくるようなロックな「DAYS」で会場の温度が上がるのが伝わってくる。白いコートを纏った德永は、「情熱」「Wednesday Moon」と、腕を突き上げるアップテンポ3曲をシャウトやフェイクを織り交ぜ激しく、太い歌で届ける。

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