Lucky Kilimanjaro、それぞれの意志のもとで分かち合う幸福 “繋がり”を体現した最新ツアー

 前述したインタビューで、熊木は「状況が感情に支配されるのが苦手」と語っていた。彼はきっと、感情を否定しているわけではない。感情は、どうしたって私たちの内側から沸き上がってくるものなのだから。彼は、「支配」という関係性を否定しているのだ。支配的にならずに、それぞれバラバラな私たちが共に歌う幸福を、分かち合えないかーーそんな繊細なトライアルが、きっと今回のツアーにはあったはずだ。

 あるいは、思えば私たちも、日常生活で飲み会に行ったり人と食事をしたりすれば、先に乾杯をして、そこから自由な雑談に流れていくものだ。そういう生活的な肌感覚を、ラッキリはライブに持ち込みたかったのかもしれない。

 27曲も演奏されたのに、「もうちょっと踊りてえ」と思うような塩梅で締め括られるところも絶妙だった。「山粧う」や「MOONLIGHT」のような楽曲では、穏やかでメロウなリズムに身を委ねることで安らぎのダンスが生まれる時間もあったし、「I’m NOT Dead」から「踊りの合図」、そして「でんでん」へと至る流れでは爆発的に踊った。特に「でんでん」は、かなり凶暴で最高だった。本編のラストを飾った「Kimochy」では最後、メンバー6人が全員、楽器を手放しステージの前方に出てきて、みんなで歌った。とても親密で、柔らかく、でも熱い瞬間だった。

 ラッキリは熊木が中心となって楽曲制作と音源制作は行われるが、「やはりラッキリはこの6人なんだ」と、ライブを観る度に痛感する。この日のライブの冒頭、1曲目の「Drawing!」が始まった時に照明に照らされ、光の中にシルエットとして映る6人の姿も最高にカッコよかった。この6人が生む温かな友愛の空間に、聴き手である自分も阻害されず、自由に繋がることができている……そんな感覚が、心地よく、尊い。

 アンコールの1曲目は「ペペロンチーノ」。乾杯や合唱で始まったライブは、トライ&エラーだらけの生活へと着地していく。とてもラッキリらしい着地点。今年4月21日にバンド結成10周年を記念して、久しぶりの日比谷野外大音楽堂でのライブ『Lucky Kilimanjaro YAON DANCERS 2024 supported byジャックダニエル』を開催することも発表された。また一緒に歌って踊る日を心待ちにしながら、それぞれの生きる場所で、ラッキリは「君が踊り出すのを待ってる」。

※1:https://realsound.jp/2023/10/post-1465092.html

■セットリスト
1. Drawing!
2. 350ml Galaxy
3. 後光
4. ひとりの夜を抜け
5. またね
6. Burning Friday Night
7. エモめの夏
8. 新しい靴
9. 千鳥足でゆけ
10. KIDS
11. 太陽
12. ファジーサマー
13. 山粧う
14. 初恋
15. 靄晴らす
16. MOONLIGHT
17. I'm NOT Dead
18. 踊りの合図
19. でんでん
20. 果てることないダンス
21. Heat
22. 一筋差す
23. HOUSE
24. 無限さ
25. Kimochy

En1.ペペロンチーノ
En2.君が踊り出すのを待ってる

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