舐達麻がBAD HOPに仕掛けたビーフはなぜここまで大規模に? 両者のスタイルをあらためて検証
セルフプロデュース力の高さが際立つBAD HOPのスタイル
BAD HOPは、神奈川県川崎市をルーツとして結成されたクルー。デビューから加速度的に注目を集め、2017年には2ndアルバム『Mobb Life』で“王道感”を見せ、同アルバムを提げて全国ツアーを開催。その名を全国に轟かせた。勢いそのままに、2018年には日本武道館で満員ライブを成功させ、2020年以降はHIPHOPフェスへの参加はもちろん、今年にはロックフェス『FUJI ROCK FESTIVAL ’23』への出演を果たした。
彼らが打ち出す楽曲は、USで主流となっているHIPHOPのトレンドを自らのものとし、再構築したものが目を引く。「Kawasaki Drift」や「Ocean View」などの楽曲からわかるように、テイストは千差万別なれど、リリックには地元・川崎での特異な過去や、そこから抜け出して成り上がる様が綴られており、どれもリスナーを高揚させるものとなっている。言うなればHIPHOPの文化的背景にも通ずる下剋上精神とクリエイティビティが、絶妙なバランスで成立しているのだ。
BAD HOPはラジオやインタビューなど、楽曲以外でのブランディングにも注力している。リスナーが求めるものを常に模索する熱量は他のアーティストを凌駕しており、言うなれば彼らは卓越したマーケットイン的思考を持っている。また、ステージ外での彼らを見ると、非常に謙虚な姿勢であり、そして何よりもアーティストとしての立ち振る舞いを理解しているように思える。すべてはクルーの、さらにはHIPHOPのために。この“情熱”こそが、BAD HOPの音楽性を高めている根源たるものだろう。
なお、BAD HOPは2024年2月に国内HIPHOPアーティスト未到の地である東京ドームでのライブを予定しており、これを最後に解散することを発表している。
舐達麻とBAD HOPの音楽性の違いからもわかるように、さまざまなジャンルが乱立し、それぞれの生き様を歌うのがHIPHOPというシーンの魅力である。とりわけビーフはアメリカでは認知度も高く、ジャンルの枠を超えて広く拡散するコンテンツだ。国内HIPHOPシーンで起こったビーフについて振り返れば、K DUB SHINEとDEV LARGE、SEEDAとTERIYAKI BOYZなど、長い歴史とは言い切れないが多様な抗争が繰り広げられている。
12月15日には、ジャパニーズ マゲニーズが舐達麻のディスソングと同様のビートでの楽曲「I guess I'm beefin' (prod. GREEN ASSASSIN DOLLAR & 7SEEDS)」を投稿し、舐達麻とBAD HOPを中心に巻き起こる戦いに油を注いだ。12月16日に渋谷で開催された舐達麻のライブにRYKEY DADDY DIRTYが乱入した動画もSNS上で拡散されている。多くの人々の目に留まり、過去最大級とも言える注目を浴びている今回のビーフは、どのような結末を迎えるのであろうか。
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