リアルサウンド連載「From Editors」第37回:スター チバユウスケに感謝

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。 

スター チバユウスケに感謝

 私が彼の活動を目撃できた期間は決して長くはなかったし、辛くてまだあまり読めていないけれど、すでにたくさんの追悼文が出ているし、正直に言うと一人のファンでしかない立場から、このテーマで書くべきか本当に悩んだ。

 チバユウスケは私にとってのスターだった。

 ステージで歌うためのような声、ざらついた愛に溢れた歌詞、言葉少ななMCと汗だくの前髪や髭の隙間から時折見せる笑顔、そしてこれぞバンドのフロントマン、というステージで放つ圧倒的な佇まい。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(以下、TMGE)の曲も、ROSSOの曲も、The Birthdayの曲も、チバの歌詞は荒削りなように見えて、愛と優しさ、平和への想いに溢れていた。傍にはいつもタバコとビールと音楽。その姿を見ると、“自由奔放”という言葉が浮かんでくる。それは傍若無人ということではなく、自分の好きなことにただただ素直で、曲と同じように愛と優しさに溢れているという意味だ。

 先日再放送された『トップランナー』(NHK総合)で、音楽で何を変えたいかという質問に「変わんないよ」と答えたかと思ったら「……いや、変える」と力強く話す、天邪鬼なようで照れ隠しと思われる表情にニヤリとしてしまった(もちろん、TMGEとは?の質問に「ロックバンド」と一言だけ答えたアベフトシも良かった)。彼がこの時に何を考えていたのかはわからない。でもチバユウスケの存在とその音楽はたくさんのバンドマンに影響を与えてきたし、確実に何かを変えてきた。だからこそ、つい思ってしまう。もっと彼から生まれる新しい音楽が聴きたかった。他のバンドでは決して観られない、熱いライブパフォーマンスをもっと感じていたかった。

 先日、ASIAN KUNG-FU GENERATIONがライブでTMGE「バードメン」をカバーしたとのこと。SpotifyのバイラルチャートではTMGEの曲がたくさんランクインしていたけれど、チバユウスケはそれ以外にも名曲を生んできた。(個人的には特にThe Birthdayへの思い入れが強かったりもするのですが)それらが何らかの形でこれからも歌い・聴き継がれていってくれるのなら、一ファンとしてそれほど嬉しいことはない。

 チバユウスケの死への悲しみは癒えない。でも今はただ、感謝の気持ちを伝えたい。

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