連載『lit!』第77回:ボカロ『無色透名祭Ⅱ』登場の名曲4選 異端イベント見出す新たな才能も

芝(バーミーズ)「ホン・デ・ジュ」

「ホン・デ・ジュ」

 数多のリスナーを視聴開始12秒で戸惑わせた、イベント屈指の名(迷)曲「ホン・デ・ジュ」。冒頭から軽やかで心地よいボサノバミュージックでサウンドメイク力の高さを見せつけた後から一転、曲調からはあまりにもかけ離れたシュールな歌詞でリスナーの興味を一気に惹きつけた手腕は見事と言わざるを得ない。VOCALOID黎明期より根強い支持を得る“ネタ曲”カテゴリに分類される作品だが、サウンド単体でも十分に戦いうるハイクオリティな作品であるからこそ、余計に力の抜けるリリックが笑いを誘う。制作を手掛けたのは音楽ユニット・バーミーズの芝。本イベントの醍醐味たる躍進で、その名を大勢のリスナーに鮮烈に焼きつけた1曲ともなった。

ヤマギシコージ「ハイド・アンド・シーフ」

「ハイド・アンド・シーフ」

 数ある投稿作の中でも、群を抜いたプロクオリティで注目を集めたのがこの「ハイド・アンド・シーフ」となる。華やかかつ煌びやかな安定感のあるポップキラーチューンは、大型商業作品のタイアップをも彷彿とさせる“プロの犯行”タグに相応しい1曲だ。制作者予想では大勢が、実際に音楽業界の第一線で活躍経験のあるクリエイターの名を挙げるという展開もあった中、その正体は2022年にボカロPとして活動し始めたばかりの新人P・ヤマギシコージ。耳の肥えたリスナーの中には予想を的中させた人も見受けられ、その曲作りの地力の高さはすでに一部では浸透していた模様。今後の活躍が楽しみな才能が、こうして本イベントではまた一人発掘されている。

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