Cö shu Nie、偽りない感情を爆発させる大切さ 孤独の殻を破ったロックで伝えたいメッセージ
新たなライブ編成で、全国9カ所を巡るツアー『Cö shu Nie Live Tour 2023-unbreakable summer-』を終えたばかりのCö shu Nieが、新曲「Burn The Fire」を10月18日に配信リリースした。爆発力のあるロックナンバーでありつつ、ビートの緩急によって独特の揺らぎも堪能できる同曲では、〈うんざりしてる/僕を苦しめ続けてるすべてに〉〈今壊せ自分を生きろ〉と燃え盛る炎のような意志がストレートに歌い上げられている。2024年秋にリリース予定のアルバムに向けた曲でもある「Burn The Fire」での“殻を破った挑戦”について、中村未来(Vo/Gt/Key/Manipulator)、松本駿介(Ba)に話を聞いた。(編集部)
初の4ピース編成に挑戦したツアーの手応え
――全国ツアー『Cö shu Nie Live Tour 2023-unbreakable summer-』が9月30日に終了しました。ツアータイトルは、今年6月に配信リリースした楽曲「no future」の〈終わらない夏休みが欲しい〉という歌詞から来ているんですよね。
中村未来(以下、中村):そうですね。「no future」をリリースしてすぐのツアーだったので、曲の歌詞から名づけました。Cö shu Nieには夏に関する曲が多いのと、ライブのMCでも話した通り、私は夏に対して深い思い入れがあるので、“終わらない夏休み”がテーマのツアーにしようと思って。衣装は金魚をイメージして作ってもらいました。ツアー前にゲームのような動画を3本出したんですけど、その動画の中で、金魚が私に変わる場面があるので。
――あの衣装、とても素敵でした。
中村:ありがとうございます。大阪でブランドをやっている、長い付き合いの友達に作ってもらったんです。
――改めてツアーの感想を聞かせてください。約1年半ぶりの全国ツアーだったそうですね。
松本駿介(以下、松本):1年半ぶりだったんですけど、お客さんの高まり方が以前よりもすごくなっていて。ツアーファイナルだけでなく、仙台とか、他の地域の盛り上がりもすごくて、今までよりお客さんが“近い”感じがしました。ツアーをまわるのは久々だったけど、音源はずっと発表していたので、会えてなくても音楽でちゃんと繋がっていたんだなと。そう感じられて嬉しかったですね。
中村:フロアを見ていると、ニコニコしている人もいれば、泣いている人もいるんですよ。お客さんと顔を突き合わせると、私も感情移入して、泣いちゃうこともあって……今回も、特別なツアーでしたね。生きているともちろんいろいろなことがありますけど、やっぱりライブをやっていると「オールオッケーやな」と思えます。あと、今までは3ピース編成でツアーをまわっていったんですけど、今回は、長年やりたかった4ピース編成に挑戦して。すごく手応えもあったし、このライブを来てくれたみんなに届けられたのが嬉しかったです。
――今回の新曲「Burn The Fire」は、リリースに先駆けてツアーで披露されていた曲です。
中村:新曲を披露することは、ツアーを企画した段階から決めていました。「ライブに来てくれた方々に初披露するぞ!」と気合いが入っていましたね。
――ツアー7公演目の徳島公演で、初めて完成版を披露したとか。
中村:そうですね。ファイナルまでの3本では、完成版を演奏しました。レコーディングをしながらツアーをまわっていたので、途中でアレンジが変わったし、もちろんライブアレンジも育っていって。各公演で違いがあったのが面白かったですね。
――それは、お客さんの実際の反応を見て?
中村:いえ、お客さんの反応によって変えるということはないですね。ライブハウスで鳴らしてみて、「なるほど、こういう聴こえ方になるんやな」と感触を確認しながら、シンセの音色やフレーズなど、細かいところを変えていきました
松本:だから、歌詞とかが変更されることはなく。
中村:うん。歌詞はそのままでしたね。
感情を爆発させるために必要だったロックの要素
――曲の成り立ちを伺えればと思いますが、2024年秋リリース予定のアルバムの収録曲として作ったんですよね?
中村:そうです。ライブのMCでも話したように、今、“自己愛の復活”をテーマにアルバムを作っていて。「no future」もアルバムに向けて作った曲なんですけど、「Burn The Fire」は第2弾の曲として作りました。大人になるにつれて、子どもの頃にあった無敵感みたいなものがなくなっていってしまうように思うんですよ。
――それは、一般論としてですか?
中村:一般的にそういうことはあると思います。いろいろなものに揉まれていくうちに、自分にどんどん重荷を課して、自分の根源を愛せなくなってしまう感覚というか。例えば、「今日までにこれをやりたかったのに、できひんかったな。自分ホンマに最悪や」と思うことってありませんか? そういう小さな積み重ねがあって、自分のことを責めてしまう。だけどそうじゃなくて、自己愛を復活できたらと思って。今までも理不尽に対して曲をいろいろ書いてきましたけど、この曲に関しては、「だけど私はこうだ」という感じでもなく、嫌なものは嫌って言っていいんじゃないかなっていう。自分の感情を隠さずに爆発させる曲にしたいなと思いながらスタートしました。
――だからこそ、激しいロックサウンドの楽曲になったと。
中村:私たちのルーツはロックですからね。ブレイクビーツで焦燥感を表しつつ、ジャングルビートに“揺蕩うように現状を乗り越えていきたい”という想いを託していて。あと、アウトロのブレイクダウンは、最初の段階から絶対に入れようと決めていました。やっぱりハードロックやメタルにはなくてはならない表現だし、感情を爆発させるという意味でも効果的なんじゃないかと。
――ドラムをRussel Holzmanさんにオーダーした理由は?
中村:この曲ではブレイクビーツとジャングルビートを使っているんですが、(Russel Holzmanは)ブレイクビーツを生音で再現した動画をSNSにたくさん上げている方で。日頃から友達と情報交換をしながら「いいミュージシャンおらへんかな」と探しているんですけど、動画を観て、すごくかっこいいなと思ったのでオファーさせてもらいました。キャロライン・ポラチェックのドラマーとしてフジロック(『FUJI ROCK FESTIVAL '23』)に来ていたので、ライブも観に行って。
――松本さんは中村さんからこの曲を受け取った時、どう感じましたか?
松本:ギターリフとドラムのフレーズが印象的だなと思いました。それをAメロやBメロに持ってきつつ、こういうサビと繋ぎ合わせているのがカッコいいなと。
中村:サビはブラックなノリにしようかと悩んだんですけど、ロックの大きなノリで歌った方が、メッセージがストレートに伝わるだろうと思って。
松本:サビで白玉(伸ばした音でコードを演奏するバッキング奏法)をバーンと弾くことって、自分のベース人生でもあんまり経験してこなかったので、新しい扉が開けた感じがありました。本当はライブでも、ベースのストラップをすごく長くして、ヘドバンしながら演奏したいなと思ったくらいで。完全にそういうアレンジですよね。
――アートワークも、メタル/ハードコア系のテイストです。後ろの炎はCGではなく、実際の炎だそうですね。
中村:そうなんです。すごく熱かったです。実際に炎を出してもいいスタジオを探したんですよ。
松本: 室内で撮影したので、煤(すす)もたくさん舞って、「だいぶハードなバーベキューをしたのかな?」って感じになってましたね。後ろに人が2人いるじゃないですか。「どっちがしゅんす(松本)なの?」ってよく聞かれるんですけど、ホンマに燃え盛っているから、仮にどちらかが俺だとしたら、脚が丸焦げになるんだよなと思って(笑)。
中村:こんなところおったらホンマに大火傷よ(笑)。この椅子は、これまでのライブでも使ってきた椅子なんですよ。〈“この椅子に座れ”〉という歌詞もありますが、Cö shu Nieってまさに自分で作った玉座だなと思って。自分の居場所として作ったバンドなので。椅子に座るということにすごく意味があると思っています。