マイキ×VoiSona開発者が語る、「MYK-IV」制作秘話と音声創作ソフトウェアの課題

AIが普及していけば、いろんな使い方をする人が出てくるのは当然(マイキ)

ーー「MYK-IV」のリリースタイミングでマイキさんは「ゴーストライター feat.MYK-IV」という楽曲をYouTube上にアップされていましたよね。

マイキ:はい。「MYK-IV」と一緒に歌いました。あれはね、ソフトの制作陣も驚かせたいなと思って作ったんですよ。AIと僕で、どこをどっちが歌っているかわからない曲にしてしまおうと(笑)。なので「MYK-IV」の調教は僕にグッと寄せてますし、逆に僕自身の歌い方も「MYK-IV」に寄せちゃってる部分もあります。

大浦:おもしろい試みをしていただいて、本当にありがたかったです。

マイキ:完成してからちょっと時間が経った今、僕自身もどっちがどっちかわからないですからね。「あれ、俺どこ歌ったっけ?」みたいな(笑)。

ゴーストライター feat. MYK-IV / マイキP

ーー最近はAIの使われ方について様々な議論がなされていますよね。意図していない使われ方、例えば「MYK-IV」を使った楽曲が、マイキさんの曲として勝手に発表されてしまう可能性もないわけではないじゃないですか。そのあたりに関してはどう思っていらっしゃいますか?

マイキ:そんなの僕が「歌ってないよ」って言ったらそれまでじゃないですか? ただ、意図しないという意味で言えば、「MYK-IV」を使ってあんまり変なことは言わせたくないかも。官能小説を読ませたりとかね。もちろんそこは使う人の自由ではあるけど、僕にめっちゃ下ネタを言わせるのはやめて欲しいです(笑)。

大浦:クレジット掲載のルールや、公序良俗に反する利用の禁止など、MYK-IVの利用に際して守って頂きたいガイドラインを弊社では策定しています。とはいえ、ガイドラインがきちんと守られているかどうか、VoiSonaを用いた全ての作品をパトロールすることは難しいため、現状ではユーザーさんのモラルに委ねている部分も一定あります。創作の自由度とのバランスもありますし、AIの使われ方を巡る状況も日々変わっていく昨今ですので、弊社も日々より良いあり方を模索しています。あとは、AIを使ったフェイクが存在する時代だということを啓蒙していくことも私たちの仕事の一つだと思っているところもあって。例えば昔はアイコラを信じてしまっていた人が多かったですけど、今は画像を合成したり、AIを使って生成できるということがある程度、周知されているじゃないですか。

ーーなるほど。確かに昔ほどは騙される人は少ないかもしれないですよね。

大浦:そうそう。それは音声に関しても同様で。これからはAIによる音声がもっと一般的になってくる部分もあると思うので、そうなったときにちゃんと「この人がこんなことを言うはずがないからこの声は合成音声だろう」と疑った耳で聴けるような世の中にしていきたいところもありますね。

マイキ:AIが普及していけば、いろんな使い方をする人が出てくるのは当然で。でも僕はそこに対してネガティブな感情はまったくないかな。「MYK-IV」を使ったいろんな方の楽曲も聴いてますけど、どれも本当におもしろいですからね。公式で作っていただいたAiraさんの「ピラニア」とか、めっちゃ衝撃的でした。その方ごとの声の調教の仕方は、僕としてもすごく勉強になるところが多いです。

大浦:マイキさんが歌わなそうな曲を歌わせている方もけっこういらっしゃって。SIAM SHADEの「1/3の純情な感情」は世代的にかなり感動しましたね(笑)。

マイキ:あーそれ僕も観ました。おもしろいですよね。

ーーリスナーからの反響はどのように受け止めていますか?

大浦:正直、自分がファンの立場だったら複雑な気持ちを抱くこともあると思うんです。推しているアーティストの声が、自分のイメージとは違う楽曲を歌うこともあるわけで。でも、YouTubeのコメントなどを見ると、マイキさんのファンの方々が受け入れてくれているのが非常に嬉しいです。それは、マイキさん自身が楽しんでくれている様子をすごく見せてくれているおかげだとも思っていて。我々が把握していないところでも、「MYK-IV」の魅力を紹介してくれていたり、すごくありがたいことだなと思っています。

マイキ:もともと僕のファンの子たちの懐が深いというか(笑)。そもそも「MYK-IV」という製品が素晴らしいものなので、ファンの方々も僕のアーティストとしての表現の幅が広がったと思ってくれていると思いますし、みんなから好評を受けている印象があります。

ーーまた、アーティストへの収益還元という点も特徴的ですよね。

マイキ:もちろん、アーティストに還元していただけることは嬉しいですが、それよりもクリエイターに寄り添ってくれるテクノスピーチさんの姿勢がすごくありがたいです。僕はあまりAIに対して抵抗感がないタイプではあるんですけど、それでも先ほどのお話にもあったAIの懸念点などを踏まえた上で、クリエイターのことを考えながら製品化してくれる。そこに会社としての温かさも感じました。

大浦:そう言っていただけるととても嬉しいです。新しい技術が生まれる中で、個人法人問わずどうしてもグレーなことをする人たちも増えてくるわけで。例えば本人の許諾を得ずに音楽CDからラーニングしてほしいというリクエストをいただいたこともあります。ただ、弊社はそういったグレーなことをしないということを、学会の招待講演などでも常々お話しさせていただいて。技術的な評価もいただいておりますが、そういった部分がアーティストさん·クリエータさん双方からの信頼に繋がっているのではないかと思います。「VoiSona」自体はまだまだ始まったばかりのサービスなので、ビジネスという意味では大きな収益還元に繋げられているわけではないのですが、そこは今後より強化していきたいですし、弊社とアーティストの方とそのファンの方々と理想的な関係性を構築していきたいですね。

ーーでは最後に、「MYK-IV」のユーザーに対して何かコメントをいただけますか?

マイキ:シンプルにクオリティが高いソフトなので、思う存分たくさん使ってほしいですね。こんなこと言っちゃうのはアレですけど、世の中にある男性の合成音声ソフトの中では「MYK-IV」が一番クオリティが高いように思うんですよ。だから男性の声が欲しいときには、ぜひ「MYK-IV」を使ってください!

大浦:大プッシュ、ありがとうございます(笑)。ソフトとしては、これからもいろんなタイミングでアップデートしていこうと思っていて。実際のマイキさんができないようなパターン、例えば「MYK-IV」にインド語でしゃべってもらうとか(笑)、そういったことも盛り込んでいけたらおもしろいなと。まだまだ可能性は無限にあると思いますし、マイキさん自身が「MYK-IV」のことを非常におもしろがっていただけている状況なので、これからもどんどん向上させていくつもりです。

マイキ:ひとつリクエストするならば、現状のソフトはクオリティが高い分、ちょっと動作が重かったりするので、そこを改善していただけるとありがたいですね。Logic ProとGarageBandの関係性のように、「VoiSona」にもiPhoneで使えるような簡易版があってもいいかもしれないですよね。そうすればもっと身近な存在になると思うので。

大浦:そうですね。低スペックのデバイスでも使えるように改良することはこちらとしても考えているところではあって。いつかはスマホ版に関しても作りたいですけどね。こういう話をすると、うちの開発エンジニアが苦い顔をしそうな気が(笑)。

マイキ:あははは。

大浦:でもユーザーさんからの意見を真摯に受け取り、「VoiSona」をより広く使っていただけるように進化させていきたいですね。これからも期待していただけるとありがたいです。

「オラトリオ|ねじ式 feat. MYK-IV (version 1.0)」

■リリース情報
『MYK-IV』(読み:エムワイケーフォー)
CV:マイキ
キャラクターデザイン&イラスト:LAM
企画・制作:株式会社テクノスピーチ
URL:https://voisona.com/artist/myk-iv_ja_JP_song/
公開日:2023年7月13日
形態:ダウンロード
価格:
年間ライセンスとして6,000円(税別)
月間ライセンスとして800円(税別)
※「MYK-IV」ボイスライブラリには、VoiSona現行エンジンによるボイスバージョ「1.0.0」「1.1.0」に加えて、開発途中の新エンジンによるボイスバージョン「2.0 Beta」「2.1Beta」が試験的に搭載されています。

■MYK-IVプロフィール
ドラマーシンガー「マイキ」の歌唱AIを搭載したアンドロイド(愛称:マイキV)。
手に持ったドラムスティックはマイク兼用。衣装にあしらわれた幾何学模様はスピーカー一体型のドラムパッドになっており、音色も自由にカスタマイズできる。
ヒマになるとひとりセッションをはじめがち。
身体年齢:18歳
身長:170cm

■マイキ 関連リンク 
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