マイキ×VoiSona開発者が語る、「MYK-IV」制作秘話と音声創作ソフトウェアの課題

マイキ×Voisona開発者対談

良き相棒としてアーティストの方にも受け入れていただきたい(大浦)

ーー声の抽出に関しては、既存曲のデータから取り込んでいった感じですか?

大浦:そうですね。ただ、それだけでは足りないところもあったので、マイキさんにいろんな曲を新たに歌っていただいたりもしました。

マイキ:基本的には僕が歌いたい曲を十曲ぐらいレコーディングして。それを送らせていただいた感じです。自分としてはカラオケ的な感覚で(笑)。それでも足りないものは追加で録ったりもしましたよね。

大浦:そうですね。“みゃ”“みゅ”“みょ”みたいな言葉を追加で録らせていただいたり。それ以降はいただいたデータを元に、AIにラーニングさせて行く流れだったので、次にマイキさんとやり取りしたのはキャラクターの制作でした。

MYK-Ⅳ
MYK-Ⅳ

ーー「マイキV」という愛称を持つ、歌唱AI搭載のアンドロイドという設定のキャラクターになっていますね。

大浦:“マイキさんに似ている何か”というテーマでイメージをしていきました。イラストレーターさんに関しては、こちらからもご提案をさせていただきつつ、最終的にはマイキさんからのリクエストで決まった感じでしたね。

マイキ:以前から大好きだったLAMさんにぜひお願いしたいとリクエストさせてもらいました。なかなかLAMさんのスケジュールが空いていないっていう状況がありながらも、結果的に最高のイラストを描いていただくことができて。予想以上の仕上がりに、「神だ!」って思いましたよ。「マイキV」は俺より全然かっこいいですからね(笑)。

大浦:マイキさんはドラマーでもあるので、ドラム要素を入れていただいたところがポイントですね。今は金髪にされてますけど、マイキさんと言えばピンクの髪というイメージがあったので、色味的にはそこを踏襲していただいたりもしました。あとはLAMさんならではですけど、目の部分に特徴が出たなと思っていて。

マイキ:そうそう。サイバーパンク感というか、近未来なイメージのある目になっていますよね。めちゃくちゃかっこいい仕上がりになってます。

ピラニア / Aira feat.MYK-Ⅳ(2.0 Beta)

ーーそんな過程を経て完成した「MYK-IV」。マイキさんは初めて触ったときにどんな感想を持ちましたか?

マイキ:シンプルに感動しました。同時に、自分がいつも使っている音楽ソフトから自分の声が出てくるので、ちょっと不思議な感じもありつつ(笑)。とは言え、「MYK-IV」は完璧に僕ではないんですよ。なので、AIとして「こんな歌い方もできますよ」っていう提案もしてくれる。そこには僕が持っていないアイデアが含まれていることも多いので、すごくおもしろい。「MYK-IV」の歌い方が逆輸入的に僕の歌に反映することもあったりして。

大浦:最終的にお渡しした“2.0 Beta”というバージョンについては、マイキさんの声の再現度への自信はかなりありましたが、マイキさんご自身から反応をいただくまでは正直、怖かったですけどね(笑)。

マイキ:その気持ちは僕もいちクリエイターとしてよくわかります(笑)。自分としては「神曲できた!」と思っていても、それを聴いてもらう段階ではやっぱりドキドキしちゃうものなので。いやでも“2.0 Beta”のクオリティは本当にすごいですよ!

大浦:当初、開発していたのは“1.0系”と呼ばれるバージョンなんですけど、そこから社内で大きな技術革新があったんですよ。で、イラストをお願いしていたLAMさんのスケジュール調整のおかげで少し時間ができたので、その新しい技術を乗せたバージョンも作ることができて。それが“2.0系”なんですよね。

マイキ:僕はどっちのバージョンも使わせてもらったんですけど、かなり違いがありました。2.0の方が圧倒的に僕の歌を再現できているし、そもそも人間により近い感じになっている印象がありますね。プラスチック製だったアンドロイドが、人間の皮膚や肉を纏ったような質感になったというか。

大浦:実際の人間に限りなく近づけていくというのが私たちのひとつの目標ではありますが、そこに関してはほぼクリアできる時代になってきていると思いますね。その上で次はどういった評価軸で研究を続けていくかという議論になってたりもしますね、音声合成関連の研究分野では。

ーーアーティストの立場からすると、ご自身の声をハイレベルで再現できてしまうAIソフトの登場は脅威になる部分もあったりするんでしょうか?

マイキ:それは全然ないですね。AIが発達すると今まで人間がやっていた仕事が奪われてしまう、みたいなことが常々言われてますけど、実際はそんなことはないと思うんですよ。例えばシェフが作った美味しい料理を大量生産する場合、作業の効率化を図るという部分でAIが活躍することは確かにあると思うんです。でも、大本の料理をクリエイトするシェフの仕事は絶対にAIではできない気がするんです。そういう意味で、クリエイターの僕としてはあまりそこに脅威を感じてはいないんですよね。

大浦:最初にお話ししたように、弊社は「人間とAIとの共存、共栄」をテーマにしているので、一緒に成長していければいいなと思っているんですよね。先ほどマイキさんがAIの歌い方をご自身に逆輸入するといったお話をされていましたが、そういった相乗効果がどんどん生まれていくのが理想です。最近は音声提供者の方と、その声を使ったAIがライブでデュエットするようなケースもありますからね。脅威としてではなく、新たな武器あるいは良き相棒としてアーティストの方にも受け入れていただけたらいいなと思います。

マイキ:AIの技術がより発達していけば、アーティストである僕らもよりクオリティを上げようと努力するようにもなりますからね。

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