イラストレーター のう、ボカロPが楽曲を書き下ろす『レゾンデートル』への手応え ボカロ文化らしい制作のキャッチボールも
関わってくれる方々の「存在」が感じられるものにしたい
――続く「ローラー」はかいりきベアさんとの楽曲で、人狼がキャラクターになっています。
のう:かいりきベアさんは、「私のイラストといえばこの方」と連想していただくことも多いくらい長くお仕事させていただいている方で、私自身、かいりきさんの楽曲からイラストを描くことをずっと続けてきたこともあって、最初は「上手くいくのかな?」と実は一番心配でした。
ただ、長くご一緒しているからこそ分かるんですけど、かいりきさんってその方のバックボーンや特徴が一番生かせるような、それでいてかいりきさんの作家性を失わないような楽曲をつくられていて、その寄り添う力がすごいな、と思うんです。だからこそ、お忙しい中だとは思ったんですけど、「ぜひお願いしたい!」と思ってお声がけしました。
――かいりきベアさんには、どんなことをオーダーしたんですか?
のう:私の中でかいりきさんらしいサウンドだと思っている、パッと聴いてそれが分かるような、印象的なギターサウンドが入っている、キャッチーな楽曲とお願いしました。それに加えて、かいりきさんはボカロPさんとして活躍される前はヴィジュアル系バンドで活動されていたので「ヴィジュアル系バンドのファンの女の子」の楽曲をつくってもらえると、楽曲との親和性も高いんじゃないかと思いました。そこで、今っぽい地雷系風のテイストとヴィジュアル系の要素を合わせたようなファッションをしている人狼の女の子、というキャラクターが浮かんできました。楽曲が上がってきたときは、(ユニークなテーマにも関わらず)すごく説得力ある楽曲になっていたので、いい意味でものすごく笑ってしまいました(笑)。
――そして5曲目「メロウライト」はまらしぃさんの担当曲で、キャラクターとしては人魚をテーマにした楽曲になっています。
のう:まらしぃさんは長く活動されていて、ボカロ曲も出されていてピアノも弾かれているという唯一無二な方で、絶対にお願いしたいと思っていました。まらしぃさんといえば思い浮かぶような、綺麗なピアノの旋律とご一緒したいと思っていたんです。泳ぐようなピアノの旋律と合うと思って、人魚のキャラクターの曲をお願いしました。
――実際の楽曲もワルツのようなリズムになっていて、まさに水の中で踊っているような雰囲気になっているのが印象的でした。
のう:イラストから要素を丁寧にすくっていただいて、キャラクターに合った楽曲にしていただけて嬉しかったです。その上で、「叶うかな、叶わないかな」と悩んでいるような、色々な人が共感できる内容の楽曲にもなっていると思います。
――アルバムにはボーナストラックも3曲収録されています。中でも「ローラー」のインスパイアソング「ラペイシャス」が収録されているのが印象的でした。
のう:この曲は「ローラー」に登場する人狼の女の子が好きなヴィジュアル系バンド・Midnight×Werewolfの曲ってどんなものだろうと考えてつくっていただいた楽曲です。単体で聴いてもらうだけではなくて、「ローラー」の女の子はこういう曲を聴いているんだな、とキャラクターの世界観に没入してもらえたら、と思っていました。楽曲をつくっていただいたぐちりさんもヴィジュアル系が好きで聴かれてきた方と伺っていましたので、サウンドに説得力が出ると思いましたし、いろんな楽しみ方ができるようなものになったと思っています。
――CDジャケットや、付属するアートブックで工夫したことはありますか?
のう:この『レゾンデートル』は、本来は存在しないはずの生物をモチーフにしたキャラクターたちを、CDにすることで「存在させる」ことを目的にしたプロジェクトなので、ジャケットもキャラクターたちの存在感のあるものをお願いしました。それから、アートブックのデザインは、極秘の生物の調査資料のようなイメージでつくっていただいています。
――たとえばエイリアンなどで連想するような、未知の生物を集めた極秘の調査資料のイメージなんですね。キャラクターの三面図が掲載されているのも印象的です。
のう:私自身、「このキャラクターの背中側ってどうなっているんだろう?」と気になることが多いですし、いろんな考察や二次創作も楽しんでもらえると思ったんです。それに加えて、今回は未知の生物をテーマにしているので、極秘設定資料集のようなつくりになりました。
――今回の作品制作は、のうさんにとってどんな経験になったと思っていますか?
のう:二次創作を含めて、「創作活動って面白いな」と改めて思う機会になりました。絵を描くこと自体もそうですし、作家さんとキャッチボールをしながら積み重ねていく作業もそうですし。そういった作業が終わった後に、二次創作で“歌ってみた”や“描いてみた”のようなものが生まれてくれるとするなら、「私もそんな世界をつくってみたいな」と思っていたんです。2年ぐらいかけて用意をしていったので、とても感慨深いです。
――お話を聞いていると、のうさんは様々な方との関係性の中で作品をつくっていくことに楽しさを見出しているようにも感じられました。
のう:きっとそうだと思います。誰かとご一緒するなら、自分の企画でも各作家さんの作家性も出していただきたいと思いますし、まさに関わってくれる方々の「存在」が感じられるものにしたいと思っています。たとえば日々の仕事でも、私のイラストでぜひお願いしたいと言っていただけると自分の存在意義が感じられるので。今回も、各作家さんにはそういう気持ちでお願いをしましたし、聴いてくれる方には、「自分にもこういう気持ちがあるな」と共感していただいて、安心したり熱くなったり、いろんな側面からあなたはあなたでいい、という「存在意義」を考えてもらえるような作品になっていたらいいな、と思っています。今回の制作は自分主体での創作の楽しさを思い出すような経験になりましたし、これからは自分で世界観を生み出していくこともやっていきたいな、と思えるようなきっかけにもなりました。
■リリース情報
『レゾンデートル』11月8日発売
<収録曲>
01「リリィアラート」雄之助 [Raison d'être file 1 “ユニコーン”]
02「phoenix」164 [Raison d'être file 2 “不死鳥”]
03「オチは同じ」なきそ [Raison d'être file 3 “メデューサ”]
04「ローラー」かいりきベア [Raison d'être file 4 “人狼”]
05「メロウライト」まらしぃ(作詞のう) [Raison d'être file 5 “人魚”]
Bonus Track
06「phoenix」 Acoustic ver.
07「メロウライト」Solo Piano ver. Piano:まらしぃ (グランドピアノスタジオレコーディング)
08「ラペイシャス」Midnight × Werewolf (performance byぐちり) [Raison d'être file 04 “人狼”spin-off Song]
アルバム特設サイト:https://www.subcul-rise.jp/raisondetre/