石崎ひゅーい、今まで出会ったリスナーへの感謝とまだ見ぬ未来への渇望 デビュー10周年を締めくくるビルボードライブレポ

 オリジナルカクテルを紹介したMCで「お酒が飲めない方も大丈夫です。なぜなら、次の曲でめちゃくちゃ酔わせるので」と気障な発言が飛び出したのは、ビルボードのラグジュアリーな雰囲気があってこそだろう。「フゥー!」と盛り上がる観客も含め、いつもとは違う空間をみんなで一緒に楽しんでいるのが微笑ましい。そして、直後に始まった「パラサイト」は確かにかなり色っぽいアレンジだった。抑制した声色。ピアノが静かに鳴らすコード。低音域で歌うチェロの旋律。バイオリン&ビオラのピチカート。石崎の歌もバンドの演奏も最初は情熱を内に秘めていたが、曲が進むとともに熱量が溢れ出してくる。

 客席からシンガロングや手拍子が起きた「ファンタジックレディオ」。ピアノ&バイオリンとともに届けたアイリッシュ調の「1983バックパッカーズ」。あのギターリフをストリングスで再現してみせた冒頭から、バンドがサッと止み歌だけが残るラストまで、終始スリリングだった「ワスレガタキ」。さらに「僕がいるぞ!」や、デビュー曲の「第三惑星交響曲」がこの編成ならではのアレンジで披露されるなか、石崎が自然と「楽しいなあ」と呟いた。

 この日最後のMCでは、「10周年イヤー、付き合ってくれてどうもありがとうございました」と改めてファンに感謝を伝える。その上で「今までにしがみつくんじゃなくて、今までも全部引き連れたい」と、さらに「たぶん、思っているよりも人生は短くて。みんなとこうして会えるのはあと何回だろうと思った時、新しい景色をもっとみんなと共有したいなと思いました。もっと音楽したいなって思ってます」と今後の活動について語った。

 そんなMCも相まって感動的に響いたのは「ピリオド」で、ファンにとって馴染み深いあのイントロに乗せて石崎が「声を聴かせてください」と呼びかけたのは「花瓶の花」。人が人を想う気持ちを描いた楽曲を会場全体で歌う光景はとても美しいものだった。観客の歌声に、石崎が「ありがとう。素敵です!」と顔をほころばせる。喜びからか、アウトロのスキャットはいつになくソウルフルだ。ライブのラストを飾ったのは、新曲「宇宙百景」。これまで出会った人たちとの縁によって、今の自分は形作られていると歌うアルバム表題曲だ。先行配信などは行われておらず、ファンもこの場で初めて聴いた形だったが、この1年での石崎の活動がそのまま音楽になったような楽曲だったからか、「新曲だから」と緊張するのではなく、素直に受け取っている人が多かったのが印象的だった。渾身のシャウトによってライブが締め括られると、観客が石崎に大きな拍手を送る。歌に漲るエネルギーの根源にあるのは、今まで出会ったリスナーへの感謝と、まだ見ぬ未来への渇望感。“次の10年”に想いを馳せたくなる、気持ちのよいエンディングだった。

※1:https://realsound.jp/2021/12/post-929740.html

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