UNISON SQUARE GARDENにしかないマジカルな力を浴びせられた『TOUR 2023 “Ninth Peel”』ツアー

 さらに、ハイライトを作り出しては自ら超えていく構成のセットリストが、バンドの演奏をもっとスリリングなものにさせる。「WINDOW開ける」からの「シューゲイザースピーカー」を経て、ギターの残響音を斎藤自らリフで切り裂き、「アンチ・トレンディ・クラブ」がスタート。さらに鈴木の凄まじいフレージングを挟み、ステージ上でスモークが立ち込める中、「MIDNIGHT JUNGLE」へ。弦を掻きむしるくらいの勢いでギター&ベースを弾き倒す斎藤&田淵の姿に、高揚しながら拍手していた観客のほとんどが、「MIDNIGHT JUNGLE」がこのブロックのラストだと思ったに違いない。しかし斎藤が抑制した声色で「Phantom Joke」のタイトルを告げる。何度聴いてもたった3人で演奏しているのが信じられない高難度曲を、セットリストのこの位置に置くとは。しかし当の3人は疲れを見せるどころか、むしろゾーンに入っている。逸る気持ちのままテンポは前のめり気味になっているのに、キメるべきところを確実にキメてみせる手腕たるや。これには白旗を上げて笑うほかなかった。

 バラードのブロックでは「Numbness like a ginger」、「お人好しカメレオン」を披露。斎藤がブレスをとってから「お人好しカメレオン」を歌い始めたシーンに、大阪・舞洲での結成15周年ライブ『プログラム15th』を思い出した人も少なくなかっただろう。振り返れば、この日のライブは20周年への期待が膨らむ内容だった。その点については、「恋する惑星」の時に登場した様々なモチーフのネオンサインの中に“19th”と描かれたものがあったように、バンドが演出していた側面もあれば、「夢が覚めたら(at that river)」と「お人好しカメレオン」に関連性を見出したり(「お人好しカメレオン」もリリース時のツアーで披露されなかったレア曲。舞洲が初披露だった)、今回のセットリストからただならぬ何かを感じ取ったりしていた私たちリスナーが、勝手に物語を見出せるほど、バンドの歴史が分厚くなってきたという側面もある。

 そのうえで、鈴木の情熱的なドラムソロから始まった本編ラストブロック。新たな代表曲になりつつある「カオスが極まる」や、全てを包み込むようなアルバムリード曲「恋する惑星」で熱狂を生み出していたのが頼もしく痛快で、バンドが最高の状態で幕開ける20周年はさぞ楽しいだろうと胸が高鳴った。そしてアンコールラスト、「kaleido proud fiesta」によるフィナーレ。会場全体が明転になり、メンバーも観客も笑顔のなか、晴れやかなサウンドが明日へ橋を架ける。ユニゾンとともに生きる未来は、きっと楽しいものになるはずだ。そんな予感と温かい余韻とともに私たちは帰路についたのだった。

※1:https://unison-s-g.com/ninth-peel/interview/interview.html

■セットリスト
1.夢が覚めたら(at that river)
2.シュガーソングとビターステップ
3.ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ
4.Nihil Pip Viper
5.City peel
6.静謐甘美秋暮抒情
7.WINDOW開ける
8.シューゲイザースピーカー
9.アンチ・トレンディ・クラブ
10.MIDNIGHT JUNGLE
11.Phantom Joke
12.Numbness like a ginger
13.お人好しカメレオン
14.スペースシャトル・ララバイ
15.放課後マリアージュ
16.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
17.カオスが極まる
18.恋する惑星

En1.ガリレオのショーケース
En2.kaleido proud fiesta

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