楠木ともり『PRESENCE』『ABSENCE』対談 前編:中村未来(Cö shu Nie)、ハルカ(ハルカトミユキ)と語る制作の背景
『チェンソーマン』マキマ役、『プリマドール』鴉羽役、『デカダンス』ナツメ役など、数々の代表作を持つ声優の楠木ともり。その活動と並行して、自ら作詞・作曲をするというスタイルで音楽活動も行なっていた彼女が、アーティストとしてメジャーデビューをしたのは2020年8月、1st EP『ハミダシモノ』だった。その後、4枚のEPをリリースし、独自の世界観を表現し続けてきた楠木ともりが、1stアルバム『PRESENCE』『ABSENCE』を2枚同時リリース。これまで発表してきた楽曲を『PRESENCE』(=存在)と『ABSENCE』(=不在)というテーマで再構築。それぞれに、自身が作詞・作曲をした楽曲と、彼女と関わりが深い、もしくは影響を受けたアーティストが提供した2曲の新曲が収録されている。
リアルサウンドでは、楠木ともりと楽曲提供をしたアーティストとの対談を行い、楽曲制作についての裏側を存分に語ってもらった。前編は『PRESENCE』に収録の「BONE ASH」を手掛けたCö shu Nieの中村未来、そして『ABSENCE』に収録の「それを僕は強さと呼びたい」を手掛けたハルカトミユキのハルカとの対談をお届けする。(塚越淳一)
楠木ともり×中村未来(Cö shu Nie)
提供曲:「BONE ASH」
(楠木ともりは)“近い雰囲気を感じるアーティストさん”だと思っていた
ーー楠木さんはどんなきっかけでCö shu Nieさんを好きになったのですか?
楠木ともり(以下、楠木):音楽の趣味が合う事務所の後輩が、LINEのBGMに設定していて、そこで聴いたのが最初なんです。
中村未来(以下、中村):何の曲だったの?
楠木:「asphyxia」でした。それが衝撃で! 力強いサウンドなのに、声に透明感があって。でも儚いだけでなく芯があるんですよね。そういうボーカルがもともと大好きだったので、私にとってドンピシャだったし、サビが変拍子になっているところにも強く惹かれて、そこからは取り憑かれたかのように新曲を聴いて、全部いい! ってなっていました(笑)。そこからずっと大好きですし、いつか自分もこういう音楽をやりたい! と思ったアーティストさんのうちの一組です。
ーーそう言われてみると、影響は色濃く感じます。中村さんは今回オファーがあったときはどんな思いでしたか?
中村:びっくりしました! なんだろう……まず提供という経験がそんなになかったというのもあるし、ともりさんの曲も聴いたことがあったんですよ。
楠木:そうなんですか!
中村:オファーをいただくより前に聴いていて、近い雰囲気を感じるアーティストさんだなと思っていたんです。そのときは声優さんかどうかというのもよくわかっていなかったんですけど。そこからいろいろ調べていって、いろんな役を演じられている方だと知ってからのオファーだったので、点と点が繋がって、すごく縁があるんだなと思いました。
楠木:何の曲を聴いたんですか?
中村:変拍子の曲で、MVがあった曲だから「Forced Shutdown」かな。
楠木:あれはまさしく、アレンジのリファレンスとして、Cö shu Nieさんの曲を出していました……。
中村:そうじゃないかなと思ったし、Cö shu Nieの雰囲気に近いから聴いてみてって、作曲家の友達に言われたのがきっかけでもあったんです。こんなアーティストさんがいるんだ! と思って、正直嬉しかったんですよ。しかもそこから本人がオファーをしてくださるって、すごい熱量じゃないですか。それも嬉しくて。
楠木:変な印象を持たれていないですか?
中村:全然全然!! だって、ジャンル的に偏ったものっていうのかな(笑)。そういうシーンを一緒に作ってくれるミュージシャンが増えたほうが嬉しいでしょう?
ーー声優/アーティスト業界にも、仲間ができた、みたいな感じですか。
中村:そうそう。ここにも仲間がいたので一緒にやっていきたいなぁって。
楠木:でも、確かにジャンルというと、名前がついていない感じはしますね。
中村:いろんなものが混ざっているからね。私たちで決めて呼べばそうなるかも(笑)。だから、ともりさんの音楽を聴いて、こういう音楽をやりたいと思う人が増えてくれたらいいなって思います。
楠木:そうなれるように頑張ります!
中村:あと私、少年漫画が好きで。ともりさんは『チェンソーマン』でマキマを演じているので、そこから声優としての活躍も知っていったんです。
楠木:『チェンソーマン』の音楽動画をアップされていましたよね!(※「大好きな作品〝チェンソーマン〟への、音楽というかたちでのファンアートです Cö shu Nieのリハスタより愛を込めて」動画)
中村:そうそう!
楠木:それもすごく聴いていました。