KICK THE CAN CREW、3人だからこそ成り立つ曲作り 『みんなのうた』書き下ろし曲制作から“互いへの憧れ”まで語る

 KICK THE CAN CREWが久々の新曲「カメとピューマとフラミンゴ」を5月24日にリリースした。同曲はNHK『みんなのうた~ひろがれ!いろとりどり』に向けて制作された「生き物の多様性」がテーマのSDGsソング。カメ、ピューマ、フラミンゴという、見た目も特性も違う三者三様の動物たちが、それぞれ自分にはない個性を持つほかの2匹の動物に憧れを抱くというストーリーが描かれる。

 カメのラップパートをLITTLEが、ピューマをKREVAが、フラミンゴをMCUがそれぞれ担当。自分がコンプレックスを抱えているように感じることも他者から見たら長所に思えるという、多様な個性を肯定する楽曲に仕上がっている。

 今回は、KICK THE CAN CREWの3人へのインタビューが実現。この曲の制作背景、そして今の3人の関係性について語ってもらった。(柴那典)

「俺だけかもしれないけど、カメに合点がいった」(LITTLE)

――今回の「カメとピューマとフラミンゴ」はまず『みんなのうた』からの依頼があったわけですよね。それを受けての第一印象はどんな感じでした?

KREVA:「なるほど」みたいな感じかな。『みんなのうた』でラップか、ラップでSDGsか、時代だなと思いました。で、結構ガッツリ決まってたんですよ。俺がピューマで、LITTLEがカメで、雄志くん(MCU)がフラミンゴで、それでSDGsの歌で……というのが最初から決まってたんで。あとはやるだけっていう感じでした。

――曲のテーマやモチーフが完全に決め打ちだったんですね。

KREVA:しかも、本当にカメとピューマとフラミンゴが同居する可能性があるのかとか、そういうところまで検証してくれて。一つひとつの動物の特徴とかも教えてもらったんです。資料とか、伝えたいこととかを見比べながら、みんなで書いていきました。

――LITTLEさん、MCUさんのファーストインプレッションはどうでした?

LITTLE:俺だけかもしれないけど、カメに合点がいったというか、「なるほど」と思いました。

MCU:本当にほぼ決まっていたので、それを聞いて納得した感じです。でも、最初はあまり把握ができてなくて。オンラインで打ち合わせをしたんですけど、実はあれ苦手で。集中できないというか……。

KREVA:対面していないと、言いたいことも言えなかったりするからね。

――カメとピューマとフラミンゴという、それぞれのキャラクター設定についてはどうでした?

KREVA:別に俺らがこの3つにしたかったわけじゃなくて、『みんなのうた』の方がライブを観てそう思ったって言ってもらえたので。本当にそう見えたんだったらしょうがないなという感じです。

――そこから設定や資料などを受け取って、皆さんで持ち帰って自分のパートを書いていったんでしょうか?

KREVA:そうですね。あとは、いろいろ検索してみたりして。でも、いただいた資料からずれないようにしよう、あまり飛び出さないようにしようという話をみんなでやってる時にしましたね。せっかく調べてくれたパワーバランスを崩さないようにやろうって。でき上がったらプロデューサーの人に褒められましたね。よくこれだけのものをこの短さにまとめてくれた、みたいな話をしてくれました。

――言うべきことが決まっているからこその大変さがあったと。

KREVA

KREVA:しっかりベースが固まってたし、時間的な制約もあったので、何を言って何を言わないかを考えたり、書いてきたものの順番を入れ替えてみたり、それは結構大変だった気がします。ピューマがカメをいいと思って、フラミンゴはピューマをいいと思ってる……っていうのが、どうやったら表現できるかみたいなことを考えながら作っていったというか。

――こういうラップの書き方って今までありました?

KREVA:いや、ここまではないかな。

LITTLE:小節が限られてるというのもあったからね。何小節使って自分の特徴を言って、何小節使ってどう憧れて、どう思うかみたいなのを考えながら作った感じですね。

MCU:僕もいただいた資料を見て、そこからいろいろ拾って、韻を探してストーリーを作っていくみたいな感じで作ってました。フラミンゴは意外と長いんで、韻を探すのが結構大変だったかな。

――それぞれのラップパートを書いて、それを持ち寄ってサビを書いていく感じでしたか?

KREVA:そんな感じですね。

「一人じゃ辿り着かないところに行けるのは間違いない」(KREVA)

――改めて聞きたいんですけど、KICK THE CAN CREWって、曲を作る時にはいつも3人で集まるんですよね。データのやり取りとかで進めていくようなことはなくて。

KREVA:サビを書く時とかは特にそうかな。そうやってずっとやってきてるので。

――データだけのやり取りと、実際に顔をつき合わせていることの違いってどんなところにあると思いますか?

LITTLE

KREVA:みんなで話し合って韻とか出し合いながらだと、自分で書こうと思っていたのとは全然違うところに着地したり、思ってない感じになったりするのが毎回だから、それを求めてるというのはありますね。それがKICKっぽいっていうか。

LITTLE:みんなで一緒じゃないとサビは作りにくいんじゃないかな。こっちの方が効率はいいんじゃないかなと思います。

――今回の曲はどうでしょう? サビで辿り着くラインも最初から決まっていましたか?

KREVA:いや、そこは資料にはなくて。サビは苦労した気がします。言いたいことはすごくわかるけど、これを言ってくれっていうのはなかったから。しかも通常のフックの倍の長さというか、ほぼバースですからね。いつも作ってる曲より長く、メロディを書いて歌にすることもなく、ストレートなラップにしたという。

――たしかに、KICK THE CAN CREWの曲で言うと、それぞれのバースを受けてサビでは短めのフレーズを3人が声を合わせて歌うようなイメージもありますね。

KREVA:このラップじゃないとこの内容は言えなかったのかなって思います。それぞれがそれぞれに憧れてるけど、まあ、最終的には自分は自分でいいんだよねってところに持っていくには、この長さが必要だったのかなと思います。

――この曲のサビを集まって書いている時って、振り返ってみるとどんな感じだったんでしょう?

LITTLE:いっぱい言葉を出しましたね。ちょっと知恵熱が出るような感じだった。さすがに量も多いし、“答えに辿り着いた”っていう感じ。達成感はありました。

――MCUさんは?

MCU:……ええ? あんまり……調子悪かったんで(笑)。

LITTLE:基本的に、雄志くんは黙ってるんですよ。1時間に1回くらい「うん」って言う(笑)。

KREVA:そうそう、俺がオススメして最近雄志くんがクリアしたゲームなんだっけ?

MCU:「メグとばけもの」?

KREVA:あれの村の会議みたいなところで、たまに「うん」だけ言うおじいちゃん、いるじゃん。ああいう感じ(笑)。

MCU:あのおじいちゃん、重要だよ(笑)。

LITTLE:そうそう。雄志くん、重要なんだよ。

――KREVAさんはどうですか?

MCU

KREVA:基本的に俺はとにかく数で勝負みたいな感じですね。全然関係ない言葉も含めて、思いついた韻もバンバン出して、その中でLITTLEが「こういう風に持っていったら話が繋がる」とか言って。で、雄志くんが1時間に1回くらい「ああ」って言う(笑)。

MCU:でも先ほども言った通り重要なんです。

――なるほど。3人が顔を合わせて集まった方が効率がいいというのは、本当にそうなんだろうなと思います。なぜそうなのかは言葉で説明しづらいですけど。

LITTLE:やっぱり、その場にいた方が思ったことが言いやすくないですか? そこまで劇的に変わるわけじゃないかもしれないけど、ちょっと思ったことがすぐ言えるというか。

――そうなんですよね。先ほども話に出ましたけど、コロナ禍でリモートのミーティングをたくさんやってきて思うのは、オンラインミーティングだと余計なことを言いづらいんですよね。

KREVA:それを使ってまで言うことじゃないなって思いますよね。同じ場所にいると、オンラインミーティングでは言わないようなことが出てくるじゃないですか。いっぱい言葉が出て、違う方に話が行って、それで良くなることもあるし。基本的にみんなで書いてる時は、スタジオに集まっているので、そこにマイクがあるから「ちょっと録ってみるわ」って歌ってみたりすることもできるし。LITTLEの〈小さく胸を張る〉のところとかも、ちょっと俺の間違いだったんだけど、「やっぱりそっちの方が言えてるかも」ってなって採用されたりとか。一人じゃ辿り着かないところに行けるのは間違いないんですよね。

――歌詞を書くのとレコーディングをするのも同時に進めていたりするんですか?

KREVA:サビとかはそうだね。最近は俺が録音してるので、録りながら決めていくこともあります。

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