Kenta Dedachi、LAレコーディングにより育まれた感性 Scary Pocketsと共に放つボーダレスなグルーヴ

 サブスクリプションサービスでの音楽配信や、YouTube、TikTokをはじめとする動画配信サービスの普及により、邦楽と洋楽の境目は非常に曖昧なものになってきている。どこからでも音楽を発信し、同時に受け取ることができる昨今の環境では、そうした区別も大きな意味をもたなくなりつつあるのだ。そんな音楽のグローバル化の波を乗りこなす新世代のアーティストのひとりが、シンガーソングライターのKenta Dedachiである。YouTubeのカバー動画が世界中の音楽ファンの間で話題を呼んだことを後押しに、2018年、18歳にして渡米を果たしたKenta Dedachi。初めてのアルバム作品『Rocket Science』の制作では、東京とロサンゼルスを行き来しながら日米のスタッフと共にレコーディングを行い、さまざまな音楽的価値観を吸収する実りのある経験を積んだ。

 コロナ禍に日本でレコーディングされたメジャー初フルアルバム『Midnight Sun』(2022年)は、“白夜の太陽”というタイトルが示唆するように、パンデミック期の暗闇に光が差し込むような救いのアルバムに仕上がっている。新型コロナウイルス拡大により社会情勢も激しく変化するなか、試行錯誤しながら制作されたこのアルバムのリリースを経て、今年4月にリリースされた配信限定シングル「Hunger for Blood」より再びLAでのレコーディングを再開することに。音楽のみならずLAの雰囲気すべてを血肉化すべく、同曲のレコーディングでは現地の音楽集団 Scary Pocketsが招かれた。Kenta Dedachiのキャリアの原点と同じくYouTubeに投稿されたカバー曲が話題を呼び、チャンネル登録者数100万人以上を誇るまでに成長しているScary Pocketsだけあって、お互いに刺激を与え合いながらレコーディングが進んだ。

Kenta Dedachi - Hunger for Blood (Official Music Video)

 そんなレコーディングによって生み出されたフォーキーなナンバー「Hunger for Blood」は、アルバム『Midnight Sun』を“陽”とするのであれば、その真逆の“陰”のイメージ。同曲で表現されるソリッドに削ぎ落とされたサウンドは、内省を深めることで辿り着いた生々しい緊張感が漂うシリアスなものに仕上がっている。

 そして、5月31日にリリースされた最新配信シングル「I’d hate 2 B a girl like U」も、引き続きScary Pocketsの主軸メンバーとスタジオ内でセッションしながら制作された。生音が気持ちよく、Scary Pocketsらしいディスコファンク調な質感に仕上がっている「I’d hate 2 B a girl like U」は、シンプルでフォーキーな「Hunger for Blood」と打って変わってゴージャスな印象。ここで発揮されているKenta Dedachiの“人種や国籍を超えて人の心を掴むボーダレスなグルーヴ感”は、日本にルーツを持ちながらLAに飛び込み、双方のカルチャーを消化することで生まれた彼なりのシグネチャーのひとつである。

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