ももいろクローバーZ 玉井詩織、アイドル戦国時代を煽動した“伝説の言葉” グループの未来を切り開く縁の下の力持ち
一方で、同年はグループから早見あかりが脱退し、“ももいろクローバー”から“ももいろクローバーZ”へ改名するなど、波紋を呼んだタイミングでもある。特に、改名については多くの戸惑いを生んだ。ただ、玉井のアジテートがすべての不安を吹き飛ばし、熱狂と興奮を湧き上がらせた。
余談だが、玉井が「ここが、この場所が、アイドル界のド真ん中だ!」と叫んだももクロのイベントに奇襲を仕掛けようとしたのがBiS(旧BiS)だ。まだ駆け出しだったBiSが新宿に乗り込んできたのも、今思えばエポックメイキングだったのではないだろうか。
書籍『ももクロ流 5人へ伝えたこと 5人から教わったこと』(2014年/日経BP)では、「いいか、お前ら!」などとアジテーションすることについて、マネージャー兼プロデューサーの川上アキラから「なんで玉さん(玉井)が言い出したんだっけ?」と尋ねられ、「お前だよ!」と川上の指示で煽るようになったと、笑いながら明かしている。
玉井は、2011年10月の『全日本プロレス両国大会』にゲスト出演したときのことを振り返り、「怖そうなプロレスラーの方に『お前!』って言うなんて、私じゃなくてもいいじゃんって、泣きわめいた時期もあったんですよ」と抵抗があったそうだ。ただ、川上は「妹キャラの玉さんがギャップのあることを言うのが面白い」と思いつき、さらに玉井には兄がいて意外とケンカ腰になりやすい性格にも目をつけて、その役割を与えるようになったという。
しかしそのキャラクター戦略がハマった。玉井はまさに“言葉の人”になった。書籍『Quick Japan Vol.95』(2011年/太田出版)でも、グループの未来について「本当に終わりがない。そうやってさらにいいものを作っていくのがももいろクローバーだと思うので」「ひとつのものに捉われない」とし、不安に思うことを問われても「ないです」「だって未来があるのに、今が一番だと決めつけられないから」と語っていた。今振り返ってみると、これらの発言は“ももクロ”という永遠性を感じさせるアイドルグループのことを見事に言い表している。
玉井には、たしかに安定感がある。ただ、それ以上にエキサイティングなアイドルである。私たちは彼女の言葉に何度も気持ちが昂った。今回の12カ月連続のソロ曲リリースも、いったい誰が想像できた企画だろうか。実は彼女は、こちらの想像の範疇を超えることを言ったり、やったりするとんでもない人なのではないか。初のソロコンの可能性も含めて、2023年のももクロは“玉井詩織イヤー”である。
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