Subway Daydream流の応援ソング「New Day Rising」に宿った“変化”への強い意思 たまみと藤島裕斗が語るバンドの現在地

Subway Daydream流応援ソングを語る

 今年1月に1stフルアルバム『RIDE』をリリース、2月には大阪と東京でのレコ発ライブ『1st Album "RIDE" Release Party -like a daydream-』も大成功させたSubway Daydream。あのアルバムを作ったことはバンド自身にとっても大きなステップとなったようで、その最中で得た手応えを胸に、彼らはギアを上げて走り始めている。そんななかで届いた最新曲は、その名も「New Day Rising」。京都橘大学のブランドムービーに書き下ろしたということもあって迷ったり悩んだりしている人の背中を力強く押すような、サブウェイ流の応援歌となっている。そしてそこに描かれる「変われるんだ」という強い意思は、まさに今のSubway Daydreamに宿る確信そのもの。今回インタビューに答えてもらったたまみ(Vo)と藤島裕斗(Gt)の言葉からも、今のサブウェイの力強さを感じ取ってもらえるのではないかと思う。(小川智宏)

『RIDE』はSubway Daydreamの方向性を位置付けた作品に

――アルバムを出しての反響はいかがでしたか?

藤島:アルバムを出したことで新たに僕らのことを知ってくださった方が増えたこともそうですし、実際コロナも落ち着いてきて状況が良くなったっていうのもあって、ライブのお客さんの反応がアルバムを出す前よりもすごく良くなったなっていうのは肌感覚で感じていて。たまみちゃんもそうかな?

たまみ:うん、同じく。ライブで声を出してもよくなったので、歌ってくれる人もいますね。

藤島:「Radio Star」という曲とか、曲自体は去年の5月ぐらいからもうライブでやってはいたんですけど、アルバムを通して正式にリリースしたことによって、お客さんもこの曲をライブで聴いたらどういうふうに楽しめばいいのかをすごくわかってくれてる感じがしていて。『RIDE』のなかでもそういう楽しい曲は、ちゃんと演奏したらお客さんもついてきてくれる感じは、ここ数回のライブで特に感じてますね。やっぱりライブを想定して作った曲でもあるので嬉しいです。

――あのアルバムを作ったことは、バンド内にはどんな影響を及ぼしていると思います?

藤島:『RIDE』は「Subway Daydreamとはこういうバンドだ」っていう方向性を位置付けた作品だったと思っていて。あれを出したことによってメンバー一人ひとりが、「Subway Daydreamのギタリストだったらこうあるべきだ」「ドラマーだったら、ボーカルだったらこうあるべきだ」っていう役割により自覚的になって取り組んでいる気がします。僕がそうなっているっていうのももちろんあるんですけど、メンバーそれぞれがバンドの方向性のなかで個人としてどういう目標を持って活動していくか、どういうことができるかっていう、立ち位置みたいなものをより理解するようになっているのかなと何となく感じてますね。

たまみ:確かに個性が出てきたと思う。自分たちのことをお客さんに対してどういうふうに発信していくかがどんどん定まってきているなとは思いますね。

Subway Daydream たまみ
たまみ

――たまみさん自身はボーカリスト、フロントに立つ人間として、Subway Daydreamにおける自分の役割ってどういうものだと考えているんですか?

たまみ:ライブでは先陣を切ってお客さんのところにみんなを引っ張っていこうっていうイメージをしていたんですけど、最近はみんなの個性やいいところがたくさん出てきているので、どんどん自分から前に行くというよりは、みんなで同じスタートラインからお客さんに向かっていくイメージでいますね。

藤島:サブウェイのライブは塊みたいに全員でパワーを放出しているんですけど、中心にたまみちゃんがいるっていうのは、ライブを始めたてのときよりも顕著になってきていて。たとえばライブ中に僕がギターソロで前に出たりしても、お客さんはみんなたまみちゃんのほうを見ているんですよ(笑)。でもそれは決して寂しいことではなくて。それだけたまみちゃんがフロントマンとして魅力的になっているということだし、むしろ他のメンバーの演奏でたまみちゃんの魅力をブーストすることができているのであればそれはすごくいいことだと思っています。

――曲作りの部分ではアルバムを経たことで見えたことはありますか?

藤島:これは『RIDE』のときから意識していたことではあるんですけど、やっぱり歌とメロディを中心に考えるようになっていますね。今も新曲をいっぱい作っているんですけど、自分のエゴもある一方、それはあくまでたまみちゃんの歌をブーストするための要素なんですよね。真ん中に歌があって、その外堀をどう埋めていくかみたいな形で作るようになりましたし、『RIDE』を聴いてくれた方の反応もあって自信も生まれて。今の作り方が今の僕らに合ってるなっていう感じもあって、わりとスムーズにできていますね。

――メロディとたまみさんの歌っていう柱の部分がしっかりしたからこそ、より自由度が高まるという感じ?

藤島:そう、そうなんですよ。

「New Day Rising」に込めた「はみ出すことを恐れるな」というメッセージ

2023年度京都橘大学「!?予想外にいこう。」ブランドムービーFULL ver.

――そんななか待ちに待った新曲「New Day Rising」がリリースされました。これまた素晴らしい曲ですが、いつごろ作った曲なんですか?

藤島:この曲は今年の3月ごろに、京都橘大学さんのブランドムービーの楽曲制作の依頼をいただいて、そこから作り始めました。3月のうちにはレコーディングしていたので、結構急ピッチではあったんですけど。

――そういう意味では本当にアルバム以降のモードのなかで作った感じなんですね。でも大学のブランドムービーの音楽っていうことで、メッセージもすごくはっきりしているじゃないですか。お話をもらってから作っていくなかで、どういうことをイメージしながら進めていきましたか?

藤島:歌詞にいちばん力を入れて作りました。実際僕も大学受験して大学に入っていろいろ学んだ経験があるので、受験に臨む高校3年生の自分はどんなんだったかなって思い返すところから歌詞を書き始めたんです。大学は人生のなかでも結構特殊な期間だという気がしていて。大人でもなければ子どもでもない、ちょうどその中間、グラデーションの時期でもあるじゃないですか。でもそれは裏を返すと、定まっていないからこそ何でもできる期間でもあると思うんですよね。そういうところが大学の好きなところだなって思ったので、高校3年生から大学1年生に上がるぐらいの時期の自分に戻って、当時の自分を鼓舞するような気持ちで歌詞を書きましたね。

Subway Daydream 藤島裕斗
藤島裕斗

――その当時、どういう気持ちを抱いていたんですか?

藤島:僕は「これがしたい」っていうことがとくになかったんですよ。親の言うことを聞いて大学受験した感じなので。なんなら大学に入ってからも実際にバンドを始めるまでに4年かかってますし、バンドをやりたい気持ちはあったけど、大学祭の実行委員会に入ったり、バイトを転々としたり、結局自分も何がやりたいのかわからないみたいな、そういう大学生だったんですよね。そんな自分の反省というか後悔もあるんですけど、一方でいろんなことに手を出したことが結局全部今に繋がってるなっていうのをバンドをやっていくなかでも節々で感じることがあって。だから、あんまり未来を見据えた学生ではなかったです(笑)。

――今回の歌詞の主人公も、明確に「何かになりたい」とか、具体的な夢を持っているわけではないけど、何か変わりたいとか、新しいところに行きたいみたいな気持ちがあって。それで沸々としている感じがありますよね。

藤島:はい。大学は何でもできる環境だからこそ、逆に言うと周りの人間に合わせに行くような場所でもないじゃないですか。いかに自分から学んで自分から行動できるかがすごく試される場だと思うので、そういう意味では僕はやりたいことは定まってなかったけど、いろいろ手を出すなかのひとつだったバンドが今に繋がったのはよかったなって。バンドをやり始めたとき、友達に「今さら?」とか笑われたりしたんですよ。悔しい思いもしたんですけど、でも今の自分の人生にとってはそうやってはみ出したことがきっかけで大きな経験をいっぱいさせてもらっているので、「はみ出すことを恐れるな」っていうことを……月並みなメッセージですけど、そういうことをこの曲ではいちばん言いたかったですね。

――たまみさんはこの曲を自分で歌っていくなかでどういうことを感じました?

たまみ:私も過去の経験や気持ちを思い出しながら歌っていました。自分がやりたいことをやっているときとかやる前のすごくわくわくした気持ちを思い出しながら。京都橘大学はいろんな専門分野があって、学生がやりたいことを一生懸命やっているイメージがあったので、そこに自分を重ね合わせながら、大学生にエールというか、その背中を押してあげられるような曲になったらいいなと思ってレコーディングに挑みました。

Subway Daydream 藤島雅斗
藤島雅斗

――自分と重なる部分がたくさんあった?

たまみ:そうですね。「なんか自分みたいやな」と思って。好奇心が旺盛なので、「やりたいことはとりあえずやってみよう」みたいなことが学生のときもたくさんあったから、それがすごく重なって。自分のことのような気もするし、自分みたいな子たちを応援したいっていう気持ちでも歌ったという感じですね。

――たまみさんは根っからのポジティブ思考という感じなんですか?

たまみ:なんでもまずは行動しよう、みたいな感じですね(笑)。

――今Subway Daydreamにいることもその結果みたいなところもありますもんね。

たまみ:そうなんです。たぶんそういう自分がいたから「バンドしよう」「おもしろいんちゃうかな」と思えたんだと思います。軽音サークルに入ってはいたんですけど、何も知らないし、バンドをするぞともあまり思っていなかったし、ゆるくやっていたんです。でもメンバーに誘われたときには「どうしよう」ではなくて「やってみようかな」だったから。そこから始まりましたからね。

――ふたりはそういう部分でいうとわりと正反対なんですかね?

藤島:そうですね。だから今回曲を作る上でも、僕の経験をもとに歌詞を書いたんですけど、実際に歌うのはたまみちゃんだし、たまみちゃんに言ってほしいことっていうのも念頭に置いて書いたんです。今聴くとたまみちゃんのキャラクターにすごく合った歌詞になったなと感じますね。

――この曲に限らずサブウェイの曲って、歌詞のなかにネガティブに転びそうな感情とか出来事とかがあるじゃないですか。でもそういうものもたまみさんが歌うと全部OKになっていく感じがして。それがすごいパワーだなと思うんですよね。

藤島:確かに。ありがとうございます。

――この曲も確かにメロはポップなんだけど、サウンドには重さや暗さみたいなものを感じる部分があるし。

藤島:サウンドについていうと、前向きな曲っていうテーマがあったので、自分のなかでテンションを上げるために聴くような曲って何だろうと考えていって。それで最初に思いついたのがThe Get Up KidsとかCloud Nothingsとか、自分が大好きなエモとオルタナティブの中間ぐらいのサウンドで、まずはそれをイメージして曲を書き始めたんです。でも、歌詞もポジティブなものになることは想像がついていたし、それでサウンドもあまりにも元気すぎるとちょっと嘘っぽくなってしまう懸念があって。それで、コード進行とかドラムの感じとかはすごく元気なんですけど、リードギターのサウンド、Bメロ・Cメロのコード進行にはちょっとだけ翳りを入れるようにして。R.E.M.とかThe Smithsとかみたいなちょっとメランコリックな感じのバンドのギターを聴いてみて、そういう要素を入れる実験もしました。なので全体的にはすごくポジティブで明るいんだけど、暑苦しすぎないというか、「頑張れ」って言うだけの応援歌にはなっていない感じがすごく気に入ってますね。

――そこがめちゃくちゃいいですよね。ちょっとメランコリックで湿ったニュアンスもありつつ、でもメッセージとしては前向きで、しかもたまみさんの歌が乗ることによってポジティブなものになっていくっていう。そのバランス感覚がすごくちょうどいいところに着地したんじゃないかなと思います。

藤島:世の中に応援歌、前向きな曲っていっぱいあるじゃないですか。その無数にある応援歌のなかでサブウェイができる応援歌、そのなかで個性を出すにはどうしたらいいかもすごく考えたので、いい塩梅にできてよかったです。

たまみ:華やかすぎず、でも暗すぎず、ちょうどいいところが狙えていると思います。私はギターを弾いたりベースを弾いたりしないので、音の感じを言葉にするのは難しいんですけど、大きい音で聴いたときに、いいものが詰まっているなっていうのはありました。「これがサブウェイなんかな」ってちょっと確信に近づいたような気もしますね。

Subway Daydream Kana
Kana

――今たまみさんは「自分はギターもベースも弾かないけど」っておっしゃっていましたけど、逆に言うとそういう人が聴いてどう感じるかってめちゃくちゃ重要じゃないですか。そういう意味でもたまみさんの感覚ってSubway Daydreamにとってすごく大事なのかなって、今話を聞いていて思ったんですが。

藤島:めちゃくちゃ大事ですね。曲を作る僕のエゴが出すぎるのは絶対によくないっていうのはずっと思っていることなので、そういう意味でもたまみちゃんはいつもフラットな視点で意見をくれるのですごく助かってますね。メンバーに双子がいるっていうのも、すごく助かる反面、趣味も近いので考えが双子寄りになっちゃうところもあって(藤島裕斗とギター&ボーカルの藤島雅斗は双子)。そういうところをたまみちゃんがならしてくれるというか。

――そのバランス感覚というか、たまみさんは「確信」とおっしゃいましたけど、そういうものが見つかってきた、それを堂々とやれるようになってきたっていうのが「New Day Rising」なのかなと。めちゃくちゃ重要な曲かもしれないですね、今後のサブウェイにとっても。

藤島:そうですね。

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