エド・シーラン、紆余曲折を乗り越えた渾身作 アーロン・デスナーのプロデュースで導かれた“悲しみの先にある深い愛”
テイラー・スウィフトのヒットシングルを手がけたマックス・マーティンとシェルバックがプロデュースを務めるリードシングル「Eyes Closed」(M3)は、親友 ジャマル・エドワーズに捧げられた1曲であり、感情を堪えるような冒頭の歌唱と、高らかに歌い上げるサビとのコントラストにより、悲しみながらもどうにか前に進もうとしているエドの姿勢が伝わってくる。その次のM4はまさに「Life Goes On」で、大切な人を失っても人生は続くという“諸行無常”のようなテーマを垣間見ることができ、歌声の力強さを最大限に活かしたフォーキーかつ光射すようなアーロンのアレンジが胸に刺さる。M10「Spark」では生まれた小さな光が消えないように、希望を捨てない彼の願いが描かれており、M12「Sycamore」では妻と子供の心配をしながらも、愛と栄光がいい方向に導いてくれることを信じている。
冒頭でも触れた通り、『―』はエドが10年以上かけた「マスマティックス・プロジェクト」シリーズ最後の作品になると発表されている。2011年にリリースされたデビューアルバム『+』は、彼をメインストリームの音楽シーンに押し上げ、2014年の『×』では、『+』を何倍にもするかのような成功を収めた。12年前に『+』をリリースしたときに想定していたかは不明だが、人生から大切なものを引かれて“失った”とき、自分と向き合い、新たな人生を歩んでいくのが『―』という作品だ。その意味でも、シリーズラストに『―』を持ってきたのは適切だったと言える。足されたり、引かれたり、人生におけるアップダウンを経験しつつもバランスを保ち、前に進むための解を模索する“方程式”を表現するエドの人間味溢れる渾身の作品だ。
(※1,筆者訳)https://www.instagram.com/p/CpPY7qyI6XB/
(※2、筆者訳)https://www.music-news.com/news/UK/157281/Ed-Sheeran-reveals-the-songs-inspired-by-his-wife-s-illness
■リリース情報
エド・シーラン『 ―(サブトラクト)』
2023年5月5日(金)リリース
国内盤価格:¥2,970(税込)
ダウンロード/ストリーミング
https://edsheeranjp.lnk.to/subtract
<トラックリスト>
1. Boat / ボート
2. Salt Water / ソルト・ウォーター
3. Eyes Closed / アイズ・クローズド
4. Life Goes On / ライフ・ゴーズ・オン
5. Dusty / ダスティ
6. End Of Youth / エンド・オブ・ユース
7. Colourblind / カラーブラインド
8. Curtains / カーテンズ
9. Borderline / ボーダーライン
10. Spark / スパーク
11. Vega / ヴェガ
12. Sycamore / シカモア
13. No Strings / ノー・ストリングス
14. The Hills of Aberfeldy / ザ・ヒルズ・オブ・アバフェルディ
15. Wildflowers / ワイルドフラワーズ
16. Stoned / ストーンド
17. Toughest / タフェスト
18. Moving / ムーヴィング
19. F64 / F64(国内盤ボーナストラック)