つばきファクトリー一色に染まった『ひなフェス 2023』 グループの始まりから現在までを振り返った浅倉樹々卒業公演

つばきファクトリー浅倉樹々卒業公演レポ

 そしてアンコールに応え、ピアノとアコースティックギターの穏やかなイントロに導かれるように1人ゆっくりと姿を現したのは、濃紺のドレスに身を包んだ浅倉だった。歌い始めたのは、浅倉自身が「私の始まり」だと語るBuono!の楽曲「You're My Friend」だ。この日ここまで終始晴れやかな笑顔で歌い踊り続けてきた浅倉だったが、残りのメンバー11人がステージ上に現れた間奏以降はあふれる思いを抑えきれず、かすかに歌声を涙で詰まらせるのだった。

 続いてステージでは卒業セレモニーが行われ、浅倉がこの日のためにしたためてきた手紙が読み上げられた。「まず、卒業ライブと題した演目で行えることをすごく感謝しています」という一文から始まるその手紙では、Buono!をきっかけにアイドルに興味を持ち「そんな存在に私もなりたい。いや、なるんだ」と決意するところから始まった彼女のアイドル人生がぽつりぽつりと語られていく。

 その後ハロプロ研修生となり、2015年につばきファクトリー結成メンバーに選出されたことについては「1からのグループで、まだまだ基礎を学ばなければいけないと思っていた。誰に見られても恥じない堂々としたパフォーマンスができるようにがんばりたい、絶対に成功させたいという強い気持ちが生まれました」と当時の思いが綴られる。2016年にヘルニア治療のため一時的に活動を休止した件にも触れ、「不安にさせてしまうことも多かったと思いますが、その経験があったからこそ自分を見つめ直すきっかけが生まれ、何より支えてくださる皆さんの存在の大きさに気づくことができました。『必要としてもらえるならがんばろう』って思えたんです。本当は逆の立場でいないといけないのに、皆さんは優しくて温かくて。そんなみなさんに応援していただけたことが、何より私の誇りです」とファンへの思いを吐露。

 さらにメンバーに対しては「初期から一緒にいるりこ、りさ、きそ、あみ、ゆめ。私を最年少のように甘えさせてくれるようになっているのがうれしい」「みずほ、さおり、まおの3人は追加メンバーとして加入してきましたが、この3人がいなかったら正直ここまで続かなかったと思います」「ゆうみ、しおり、まりん、るのは私たちにとって初めての後輩でした。後輩だからとか関係なく、つばきをどんどん引っ張っていってほしいです」と語りかけ、スタッフ陣への感謝も付け加えたのち、まっすぐな眼差しで「これからは別の道を進むことになります」と告げた。

 そして「大切なことにいっぱい気づかせてくれた9年間、本当にありがとうございました! 最高すぎる仲間たちと歩んできた経験、思い出が味方です」と総括。「新しい環境、ソロになってもきっと大丈夫だと思います。だから言わせてください。『さよなら』じゃなくて『行ってきます』! これからもお互い、それぞれの場所で椿の花を咲かせましょう」と満面の笑顔で締め括った。

 これに対して残る11人が言葉をかける段になると、メンバーたちは次々に笑顔から一転、号泣し始める。涙で言葉を詰まらせながら、豫風瑠乃は「浅倉さんのいるつばきファクトリーに入れて本当によかったです」、福田真琳は「ロック魂を持っている浅倉さんが大好きです」、八木栞は「面白くないギャグから相談まで、本当になんでも親身になって聞いてくださる」、河西結心は「これからもずっとずっと憧れの存在です」、秋山眞緒は「いろんなことがあったけど、みんながいたから、樹々がいたから乗り越えてこられた」、小野田紗栞は「樹々がオーディションのときに『絶対一緒のグループに入ろうね』と言ってくれた言葉、有言実行できたね!」、小野瑞歩は「樹々は私のこと心配かもしれないけど、樹々がいなくてもちゃんとがんばっていきたい」、岸本ゆめのは「これからは自分が樹々ちゃんの代わりになるくらい、もっと強くグループを引っ張っていかなきゃなって」、谷本安美は「(ほとんど声にならない声で)ずっと1人のファンとして応援していきたい。樹々大好き、きれいだよ!」、新沼希空は「強くて可憐で、本当に椿の花言葉にふさわしい女性だなって」、山岸は「最初のときはお互い壁があって、こんなに仲良くなると思ってなかった。かわいらしい中に強さがあって、憧れてます」といった言葉をそれぞれ贈り、それまで気丈に振る舞っていた浅倉の目からも大粒の涙がこぼれ落ちる結果をもたらした。

 12人体制のつばきファクトリーとしてのラストナンバーには、「ハッピークラッカー」が選ばれた。彼女たちは濡れた頬も乾かぬままに、このアッパーでポジティブなポップチューンを明るく元気にパフォーマンス。涙あり笑いあり、さらに切なさや爽やかさをも含有する、オーディエンスのさまざまな感情を刺激し続けた3時間近いステージはこの楽曲をもって大団円を迎え、椿の花のように気高く咲き誇った浅倉の約9年間もここで華々しく幕を閉じた。

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