20th Centuryが切り開く新たなジャニーズポップス 竹内まりや、曽我部恵一、ミツメらアーティスト提供曲の充実

 そして、そうしたジャニーズグループの先輩に当たる20th Century(以下、トニセン)も、数々の現役アーティストたちから楽曲提供を受けている。

V6 / 雨

 遡れば、V6時代からアーティストとのタッグは盛んで、特に、2021年9月、解散前のタイミングでリリースされた最後のオリジナルアルバム『STEP』には、森山直太朗、Micro(Def Tech)、小原綾斗(Tempalay)などが楽曲制作に携わっていた。数ある楽曲の中でも、千葉雄喜(KOHH)が手掛けた「雨」と「家族」の2曲は、アルバムにおいて特に重要な役割を担っていた。アダルトな魅力が冴え渡るシックなヒップホップ路線を追求したこの2曲は、26年間にわたり絶え間なく変化・進化を続けてきたV6の旅の最後を飾るにふさわしい楽曲であった。

20th Century / 夢の島セレナーデMV

 V6の解散から約半年後の2022年5月、トニセンから待望の新曲「夢の島セレナーデ」が配信リリースされた。同曲は、井ノ原快彦はじめメンバーにとって20年来の友人である曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が書き下ろしたもの。「静かにそっと背中を押してくれるような  優しく包みこんでくれるような曲です。」というメンバーコメントがあるように、同曲は、温かな味わいを感じさせるフォークロックで、年齢を重ね深みを帯びた3人の歌声と非常に相性が良い。まさに、メンバーと同じ時代を生き、一緒に年を重ねてきた曽我部だからこそ作り出すことができた提供曲だ。

20th Century / 水曜日MV

 「夢の島セレナーデ」のリリースをもって音楽活動を再開させたトニセンは、その後も続々と新曲を世に送り出し続けていく。2022年8月には、シティフォークバンド・グソクムズからの提供曲「風に預けて」をリリース。グソクムズは、はっぴいえんどやシュガー・ベイブから強い影響を受けているバンドであり、爽快なグルーヴが心地よい同曲には、彼らの音楽性が色濃く反映されている。続けて10月には、ミツメからの提供曲「水曜日」をリリース。クールな平熱をキープしながら、豊かなバンドアンサンブルを通して聴く者の心をじっくりと躍らせる同曲は、まさにミツメの真髄を凝縮した楽曲である。グソクムズもミツメも、トニセンにとって一回り以上下の世代にあたるが、世代の違いを超えて、音楽性に共鳴できる新しいアーティストと出会えたことは、今後のトニセンの活動においてフレッシュな原動力となったはずだ。

ツラいチャプター
メイプルと君と

 昨年末には、東京スカパラダイスオーケストラの川上つよしが作曲、谷中敦が作詞を手掛けた「ツラいチャプター」と、音楽プロデューサーの冨田恵一が作曲、井ノ原が作詞を担った「メイプルと君と」をリリースした。「ツラいチャプター」は、ライブの起爆剤となるような高速スカナンバー、「メイプルと君と」は、編曲・サウンドプロデュースを手掛けた冨田によって丁寧に作り込まれた端正なポップスである。この2曲によって、トニセンの音楽性はさらに一気に広がったと言える。

20th Century / 恋はこれから Live Movie

 そして今年2月には、新たに2つの新曲がリリースされた。竹内まりやが作詞・作曲を手掛けた「恋はこれから」は、竹内のソングライティングスキルが遺憾なく発揮された上質な歌謡ナンバー。トオミヨウの編曲によって、最新のJ-POPとして響き得る奥行きと深みを獲得している。また、YO-KING(真心ブラザーズ)が作詞・作曲を手掛けた「君の笑顔につられて」は、ポジティブなフィーリングが弾ける快活なポップチューンで、リスナーを優しく包み込むようなたおやかなメロディがとても美しい(なお、同曲の編曲には、元plentyの江沼郁弥が参加している)。

 今回、昨年から今年にかけてリリースされたトニセンの曲について振り返って感じたのは、キャリアを重ねてもなお次々と新しい音楽性に挑戦し続けているということだ。例えば、「夢の島セレナーデ」や「恋はこれから」は、大人のアイドルとして成熟を果たした今の3人だからこそ歌い上げることができる新たなジャニーズポップスである。また、若い世代のアーティストとタッグを組んだことで生まれた「風に預けて」や「水曜日」は、好奇心と冒険心をもって挑戦し続ける3人のスタンスを表していると言える。今もなお、現役アイドルとして精力的に音楽活動を続ける3人の姿勢は若手グループにも影響を与えていきそうだ。

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