乃木坂46、モデルケースなき最初期から1期生が築いてきたもの 多方面での成長と絆を支える、理想的なコミュニティへ

 そうした個々人の発展の一方、グループとしての表現に目をやると、決定的な転機によってある時点で一気にブレイクしたというよりは、時間をかけて徐々に知名度を高めつつパフォーマンスを洗練させてきたと言えるだろう。活動開始から間もないデビューシングル曲「ぐるぐるカーテン」(2012年)と、グループの社会的認知度がぐっと高まっていた2度目の『レコード大賞』受賞曲「シンクロニシティ」(2018年)との間には、少女的な表現が色濃く残る最初期から着実に歩みを重ね、よりユニバーサルな共鳴を歌う円熟したパフォーマンスへと、自然に発展してきた過程が感じられる。

乃木坂46 『シンクロニシティ』

 メンバー個々が自身のキャリアを描いていくための拠点として、あるいはグループ単位で世に向けた表現を作っていくための場として在る乃木坂46という土壌はまた、メンバーが相互に受け入れ合う拠り所/コミュニティとしての性格も強く持つ。すなわち、メンバー個々人をさまざまなジャンル、さまざまな客層へと届かせるための外向きな発信力を持ちながら、同時にメンバー同士の慈愛が内向きの求心力も持つということであり、この独特のコミュニティ性は長らくグループの基調を形作ってきた。ファンや聴き手は、乃木坂46をホームグラウンドとしながら、アイドルという“生”を歩むメンバーたちの営みを日々、享受している。

 この共同体は、後進のメンバーたちを次々に受け入れるフェーズに入って以降、その意義をより強く浮かび上がらせている。新たに乃木坂46の一員となるメンバーたちが育まれていくにあたって、この“場”の存在を前提にできることはきわめて重要である。

 草創期を支えたメンバーが次々に旅立っていっても、乃木坂46として築いたコミュニティは現在、新たなメンバーによって求心力をもって維持されている。そんな豊かな共同体がこれからも続いていくイメージを容易に描けるのは、この特有の“場”が今日半ば自律的な趣をもって存在しているためだ。それは1期生メンバーが礎となって、たくさんの挑戦や試行錯誤を重ねてきた先に生まれ、さらにその軌道上に新たな景色を描く後継メンバーたちによって今なお発展し続けている、グループの大きな財産である。

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