水曜日のカンパネラ、「エジソン」の大ヒットは予想外だった? ユニットの過渡期から飛躍を遂げた“上”を目指すマインド

 詩羽がコムアイに代わって二代目主演・歌唱担当に就任してから2年目を迎えた水曜日のカンパネラ。詩羽就任から間もない2022年2月にリリースした「エジソン」がTikTokを中心に大ヒット。2022年を象徴する楽曲として広く聴かれると共に、新たな“水曜日のカンパネラ”の姿をまざまざしく知らしめることに成功した。

 水カンのコンポーザーを務めるケンモチヒデフミは、「エジソン」を「過渡期の曲」と言い表す。コムアイ時代からコンスタントにヒット曲を生み出してきた水カンだが、ムーブメントを起こす音楽とはどのように作られているのか。そして「エジソン」の大ヒットはユニットに何をもたらしたのか。詩羽とケンモチヒデフミに2022年の活動を振り返ってもらった。(編集部)

ひねりのないストレートな曲がウケたことが意外(ケンモチ)

ーー水曜日のカンパネラにとって、2022年は快進撃の1年になりましたよね。ご本人たちの感触としてはいかがですか?

ケンモチヒデフミ(以下、ケンモチ):そうですね……2022年の初めごろに「招き猫」と「エジソン」を作っていて、僕の中では「これはカンパネラ史上でもめちゃくちゃポップな曲になったな」というイメージはあったんです。ただ、最初は「招き猫」のほうがウケるんじゃないかと思って、表題曲というか1曲目に設定したんですけど、結果的には「エジソン」のほうがバズっていったんで、なかなかそういう読みは難しいなと(笑)。

詩羽:「エジソン」がバズったこともあって、夏以降はフェスだったりいろんな場所に呼んでもらえる機会が増えて。今年の頭らへんはまだ加入して間もなくて、ライブも数えるほどしかやっていなかったし、「これからどうがんばっていこうかな?」と手探りの状態だったんです。でも、今はもうライブやイベントの本数が月5本以上になるのが当たり前みたいな感じになってきたし、どんどん時間の進みが早くなっている感覚ですね。スピード感としては、今まで生きてきた中で一番早い1年間でした。

ーーその状況は、楽しいですか?

詩羽:楽しいですよ!

ーー「もっと休みたい」とかもなく?

詩羽:全然ありますけど。休みたい(笑)。

ケンモチ:ははは(笑)。

詩羽:いや、でも休むのは大好きなんですけど、休みがありすぎると不安になるタイプでもあって。がんばった分、休みの価値が上がるというのも自分の中ですごくあるから、めっちゃ仕事があって「忙しいな、疲れたな」ってときに休みがあるのが一番自分には向いてるんだろうなとは思いました。

ーーそういう意味では、今の状況はちょうどいい?

詩羽:はい、ちょうどいいと思います。

ーー先ほどのお話にも出ましたが、やはり今年の水カンを語るのに「エジソン」の話題は避けて通れないと思います。この曲がこれだけ世間に広まった状況をどんなふうに受け止めていますか?

詩羽:リリースが2月でバズったのが5月と、ちょっとタイムラグがあったこともあって、最初から「来るだろうな」と思っていたかと言われたら思ってなかったですね。

ケンモチ:自分としては、かつてないほどシンプルでポップな曲を作った感覚だったので、「こんなんでいいのかな?」という気持ちもありながら出したものではあるんです。得てして大衆にウケるものとはそういうものなんだな、と感じましたね。ボーカルが詩羽に替わって間もないタイミングだったこともあって、あんまり従来の水曜日のカンパネラのマナーを引っ張りすぎるのもよくないなと思っていたし、その調整をしながら今後やっていこうと思いながら作った、言ってみれば過渡期の曲ではあったので。

詩羽:「どうやってバズるのか」って本当に想定がつかないものなんだなというのを、自分たちの楽曲で実感したような感じです。

ケンモチ:よく「『エジソン』がバズった理由はなんだと思いますか?」とか質問されるんですけど、そもそも僕の中でカンパネラのウケている理由というのが……たとえば2014年の「桃太郎」だったら、ちょっとひねってあってほかと違うところがいいのかなと思っていたので、「エジソン」みたいなひねりのないストレートな曲がウケたということが意外でもあって。ただ、「桃太郎」に関してはまぐれ当たりのような感覚も自分の中ではあったから、また違ったタイプの曲が世に広まってくれたことはサウンドプロデューサーとして若干の自信にはつながりました。

水曜日のカンパネラ - エジソン / THE FIRST TAKE

ーーつい今しがた「わからない」という話が出たばかりで恐縮ですが、なぜ「エジソン」がこんなにウケたんだと思います?

ケンモチ:そうですねえ……よくいろんな人に「何か楽曲としてバズる仕掛けをしたんですか?」みたいに聞かれたりもするんですけど、仕掛けたところでバズるものでもないですから。「エジソン」に関しては偶発的に誰かがを見つけてくれたことで自然に芽が出てきたみたいなことだったし、そういう流れじゃないとみんなも追随しないんじゃないかなっていう。それがTikTokの面白いところでもあり、難しいところでもあるなと。最初の火種みたいなところを作るのがなかなか難しいのかなという気がしましたね。

ーーたしかに、変に仕掛けると逆にうまくいかないイメージもありますね。詩羽さんは「エジソン」のどういうところが喜ばれていると感じます?

詩羽:耳に残るところ。シンプルなもののほうがTikTokをやっている人たちにはウケるんだろうなと思うし、「耳に残る」という条件がないとみんなが何回も使いたくならないんだろうなというのは思いましたね。

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