ドラマ『silent』と『エルピス』、今期話題の2作品で光る音楽の演出 物語の中核をさりげなく担う役割
長澤まさみ主演、渡辺あや脚本によるドラマ『エルピス』。冤罪事件を巡り、テレビ局員たちがそれぞれの立場で戦う社会派作品。大友良英が手掛けた興奮を煽るメインテーマとノイズギターを散りばめた劇伴など先鋭的な音楽が印象的だ。徐々に参加ミュージシャンの正体が明かされたSTUTS率いるMirage Collectiveによる主題歌「Mirage」も話題である。
劇中で強いインパクトを残すのはカラオケのシーンだ。『エルピス』の演出を担当する大根仁の作品には『モテキ』『ハロー張りネズミ』など頻繁にカラオケの場面が登場するが、本作では特に効果的な心情描写として機能している。
主人公・浅川恵那(長澤まさみ)をはじめ、番組スタッフに対して粗暴な振る舞いをする村井(岡部たかし)が物語序盤で空騒ぎするカラオケは虚無に満ちた場所だった。そんな場面で明らかにカラオケ(およびその場)に嫌悪感を示していた浅川は第8話でマイクを手に取る。歌うのは海援隊の「贈る言葉」。相棒である岸本拓朗(眞栄田郷敦)とデュエットしながら、村井の目を見てじっくりと歌う。
世論の流れを変える動きを見せながら、会社での立場を追われた8話での村井。それまで対極の存在として描かれていた浅川・岸本と村井が一つの正義を貫いたこの回の終わり、別々の道を歩き始める直前に歌われる「贈る言葉」は冗談っぽくも聴こえるが、共闘した関係性を穏やかに包み込むに相応しい。日常的だったはずの光景が変容したことを、その歌を通して示唆しているのだ。
単にエモーショナルさを味つけするわけでなく、確かな意味を持ち、物語の中核をさりげなく担う2作に共通する音楽の作用。最終盤を迎えつつある物語とともに、どんな演出が繰り出されるのかも楽しみに待ちたい。
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