FIVE NEW OLDが示す、バンドの新たな出発点 『My New Me TOUR』最終公演レポ

FIVE NEW OLDツアー最終公演レポ

 11月24日、FIVE NEW OLDが『My New Me TOUR』のファイナルとなる東京公演を豊洲PITで開催した。“新しい自分に出会う”をテーマに制作された新アルバム『Departure : My New Me』では、改めて4人のあるべき姿を見つめ直しつつ、外部プロデューサーの招聘や日本語の重用などによって、新しいバンド像を提示。そんな作品に伴うツアーもまた、新たな出発点となるものになったと言っていいだろう。

 2010年に結成され、2017年にメジャーデビューを果たしたFIVE NEW OLDはこれまで着実な上昇曲線を描き、レーベル移籍を経て発表された前作『MUSIC WARDROBE』でも確かな成果を残した。2010年代後半の日本では「The 1975以降」とも言うべきジャンルレスを基調としたバンドが一斉に台頭した時期があったが、現在でも第一線に立ち続けているバンドは決して多くないように思う。海外ではポップパンクのリバイバルがあって、そのムードが元々ポップパンクを出自に持つFIVE NEW OLDに有利に作用した側面も多少はあったかもしれない。

 ただそれよりも、彼らが新作に限らず、これまでも作品ごとにトライ&エラーを繰り返しながら、丁寧に制作とライブを繰り返してきたことが、バンドを現在のポジションに導いたのだと言えよう。そして、もう一度自分たちをじっくり見つめ直して制作した『Departure : My New Me』に続いて、10月にはThe 1975がバンドのあるべき姿を見つめ直した新作『Being Funny In a Foreign Language』をリリースしたというのは、面白い偶然だと思う。

 キーボードの山本健太とコーラスの裏切りおにぎり a.k.a. Hanakoを交えた6人編成で行われたライブは「Nowhere」からスタート。シンセポップな音源の良さを引き継ぎつつ、やはりライブだとよりバンド感が強まっているのが印象的で、それは続く「Happy Sad」の変拍子パートにおけるアグレッシブな演奏もそう。未だオーディエンスが声を出せない状況ではあるが、頻繁に手拍子を求めてコミュニケーションを図り、巻き込んでいこうとする姿は非常にフィジカルだ。Spotifyでの再生回数が500万回に迫る勢いの人気曲「Don’t Be Someone Else」や「Ghost In My Place」といったファンキーな人気曲では、ハンドマイクでエモーショナルに歌うHIROSHI(Vo/Gt)の姿にフロアのテンションも上がっていく。

 前述の通り、ニューアルバムは日本語の重用もひとつのポイントになっていたが、その成果が明確に感じられたのは中盤の「LNLY」から「Home」の流れ。インターネットやSNSが世界を広げたように感じられる一方で、フィルターバブルやエコーチェンバーによってむしろ閉鎖性が強まり、繋がれば繋がるほど孤独を増しているようにも感じられる現代の心の病を、パーソナルな視点も盛り込みながら歌う「LNLY」はもちろん、〈今はただ あなたの隣で/暮れなずむ空に 笑い飛ばそう〉とストレートに言葉を紡ぎ、スタンドマイクでしっかり歌を届けた「Home」は、日本語ポップスとしての新たな可能性を感じさせた。

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