櫻坂46、卒業する菅井友香の意志を継ぎ深まるグループの結束 初のドーム公演に見た現体制での集大成

櫻坂46初ドーム公演レポ

 櫻坂46として問答無用のセットリストを提示できたからこそ、アンコールではどんな曲が来ても安心して楽しめる。そういう文字通りの“アンコール”で、前日の東京ドーム初日公演では欅坂46版「Overture」に続いて「10月のプールに飛び込んだ」「ヒールの高さ」「青空が違う」「世界には愛しかない」と、卒業に際して菅井がセレクトした欅坂46時代の楽曲が披露された。この日は彼女の卒業セレモニーを含む形でのアンコールが期待されたが、前日同様に欅坂46版「Overture」が流れたあと、予想もしない1曲が投入された。

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 それは、かつて菅井が代理センターとしてステージで披露した「不協和音」だった。リリース当時の衣装を身にまとい、3年前の東京ドーム公演では一緒にステージに立てなかった二期生、新二期生を交えた編成での披露。それは、菅井が彼女たちに告げていた「一緒に東京ドームに立とうね、欅坂46の曲を踊ろうね」という約束を果たすものでもあった。3年前の東京ドーム公演でもアンコールの1曲目に披露された「不協和音」だが、メンバーの鬼気迫るパフォーマンスが当時の記憶をフラッシュバックさせるものの、中央に立つ菅井の表情からは達観したような印象も感じられる。それは、エンディングで見せた不敵な笑みからも伝わったのではないだろうか。

 代理とはいえ自身が初めてセンターを務めた1曲を経て、次に用意されたのは欅坂46時代に初めてセンターに就いたオリジナル曲「砂塵」。2020年10月の欅坂46『THE LAST LIVE』でただ一度だけ披露されただけの、幻の1曲を菅井は自身のラストステージで再びパフォーマンスすることを選んだ。笑顔でライブを楽しむ「欅坂46の衣装を着た櫻坂46」の姿は、感傷的というよりも感慨深さを覚えるものがあり、砂塵に舞うような菅井のフライング演出含めて「今があるから、こうやって過去も楽しむことができるんだ」と訴えかけるようなステージだったと、筆者は解釈している。

 2曲を終えると、菅井の7年間のアイドル人生を振り返るVTRが場内に流れ、続いてパステルブルーのドレスにティアラ姿の菅井が姿を現す。彼女は「思い返すと本当に波瀾万丈なアイドル人生でした。と同時に、キャプテンに任命していただいたことは、人生の転機だったなと思います」と前置きして、現在の素直な思いを目の前の、そしてモニターの前のBuddiesに伝えていく。「大好きなみんなと一緒に協力しながらだったんですけど、複雑でアンバランスなグループをまとめることはすごく難しかったです。自分の不甲斐なさを感じることもあったし、なかなか思うようにいかない日もありました。そんなとき、私はキャプテンとしてせめて皆さんとグループをつなぐ架け橋になろうと向き合っていました」とここまでの道のりを語りつつ、「それでも大好きなグループのイメージがなかなかうまく伝わらなかったり、バッシングされたりとショックなことも多かったです。周りを信じることが難しくなってしまって、心に嘘をつかなくちゃいけなくなり、笑うことが難しくなってしまう時期もありました。そんなときに、応援してくださる皆さんがいてくださることが本当に心の救いでした」と応援してくれた人たちへ感謝を口にする。

 そして、「かけがえのない一期生のみんな、ありのままの私を慕ってくれる可愛い後輩もできました。今、お別れするのがすごく寂しいです」とメンバーへの正直な気持ち、「こんな自慢のグループに三期生が入ってくれるので、どんな子が入ってくれるのかワクワクしています」と未来への期待を明かすと、最後は「大切な欅坂46も、大好きな櫻坂46もそれぞれにしかない楽曲、メンバーの魅力がたくさんあります。どっちがいい悪いではなく、それぞれを尊重しながら、どっちも愛してもらえたらうれしいと思います」とファンへ向けてメッセージを送る。最後は「私自身もまた皆様とお会いできるよう、私の道を頑張って、これまでの経験を忘れずに、楽しかったこと苦しかったこと、すべて抱きしめて前に進んでいきたいと思います。これからも大好きな櫻坂46、そして菅井友香の応援をよろしくお願いします」と、挨拶を締め括った。

 その後、菅井へのサプライズとしてメンバー1人ひとりが彼女への手紙を読み上げ、花を1輪プレゼント。グループ加入時に覚えた不安を、菅井が笑顔で解き放ってくれたこと、誰に対しも常に平等で、無償の愛を与えてくれたことを後輩たちが語れば、同期メンバーは7年間の活動とキャプテンという重積に対する労いの言葉を贈る。これらの言葉だけでも、今のグループが非常に良好な状態であることが理解できたはずだ。そんな菅井がグループから離れることを機に、「菅井がいなくなっても、私たちがグループを守っていく」と彼女たちの結束もより強まったのではないだろうか。

 菅井友香のアイドル人生最後の曲に選ばれたのは、この日のために急遽制作された新曲「その日まで」。二期生から一期生へと、メンバー1人ひとりが菅井を介して絆をつないでいくような構成は、随所に欅坂46時代の振り付けが散りばめられるなど、これまでの7年を振り返るだけでなく、未来へつなげていく最初の一歩のようにも感じられる。曲中には「今日までグループを守るために戦ってきました。悲しいこともありましたけど、最高に楽しかったです。7年間の応援、ありがとうございました!」という菅井のメッセージも織り込まれ、最後はメンバーが両サイドで「がんばりき」ポーズをとりながら待ち構える花道を駆け抜けて、3時間を超えるライブは幕を閉じた。

 菅井が満面の笑みで「がんばりき」ポーズをしながらステージを去ったあと、残ったメンバーを代表して新キャプテンの松田は「菅井さんの卒業はグループにとって大きな出来事ですが、今このメンバーならどんな困難も乗り越えられると思うし、どんな道も進んでいけると思います。またこのステージに立てるように、メンバー、スタッフさん、Buddiesの皆さんと手を取り合い切磋琢磨していきたいです」と目の前のBuddiesに宣言した。結成2周年を経て、菅井の卒業や三期生加入など最大の転機を迎えようとしている櫻坂46。ここからどんな変化を遂げるのか未知の部分も大きいが、菅井の意志を継ぐ者たちが揃ったグループだからこそ、心配はいらない。きっと我々が予想もしないような形に進化して、新たな形で再びこのステージに戻ってきてくれるはずだから。

■セットリスト
櫻坂46『2nd TOUR 2022 “As you know?”』
2022年11月9日(水)東京ドーム
00. Overture
01. 条件反射で泣けて来る
02. BAN
03. Dead end
04. 断絶
05. 流れ弾
06. タイムマシーンでYeah!
07. One-way stairs
08. ずっと 春だったらなあ
09. 制服の人魚
10. 五月雨よ
11. なぜ 恋をして来なかったんだろう?
12. Nobody's fault
13. I'm in
14. Buddies
15. 車間距離
16. 恋が絶滅する日
17. 摩擦係数
<アンコール>
18. Overture(欅坂46) 〜 不協和音
19. 砂塵
<ダブルアンコール>
20. その日まで

プレイリスト:https://sakurazaka46.lnk.to/20221108-09

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