GLIM SPANKY、「不幸であれ」のフレーズの裏にある希望と愛 原点回帰のサウンドで表現する“本当の幸せ”

GLIM SPANKY「不幸であれ」の裏にある希望と愛

様々な感情を知ることで得られる「幸せ」

──作詞はいしわたり淳治さんとの共作ですが、そこはどのように進めていきましたか?

松尾:今回ドラマ制作サイドからは歌詞の面でのリクエストも、例えば「炎」がテーマであること、「嫉妬」「欲望」「独占欲」をキーワードとして入れること、それも最終的には「深い愛」がそこにあること、みたいな感じでかなり細かくいろいろあったんです。なので、久しぶりに淳治さんのお力添えをいただこうと。まずは自分一人で歌詞を書き上げ、それと一緒に自分が思うドラマのテーマと、自分自身の日常とリンクする部分がどこにあるのか、今話したような「欲望」や「独占欲」について、自分自身はどう思っているのかをバーっと書き込んだメモを淳治さんに投げました。で、そのメモを反映させてくれた歌詞が淳治さんから戻ってきて、さらにそこに自分が思っていること、書きたいことを照らし合わせ、「ここはもう少し、こういうことを歌いたいです」みたいなことを淳治さんに伝えて……そういう感じで何往復かやり取りをしながら完成させました。

──久しぶりに一緒に作ってみてどうでしたか?

松尾:私が最初に一人で書いた歌詞の持つ雰囲気みたいなものや、そこで使っていたワードを汲み取ってくれつつ導入部などブラッシュアップしてくれて。とても楽しかったですし、今回もものすごく勉強になりました。特に〈不幸であれ〉というフレーズを提案してくださったのは大きかったです。

──このフレーズ、めちゃくちゃインパクトがありますよね。

松尾:一見、ネガティブに捉えられてしまいがちな「不幸であれ」というワードですが、そこに愛が含まれていることをどう伝えるかがものすごく重要でした。これまでGLIM SPANKYとして作ってきた作品は、どれだけネガティブなことを歌っていたとしてもそこに必ず「希望」や「愛」があるものにしたいとずっと思っていて。そこは今回も変えず、例えば〈不幸であれ〉という言葉にもちゃんと逆の意味が入っているんです。

──「逆の意味」というのは?

松尾:今の世の中、不幸な出来事がたくさん起きているからこそ、それをなんとしてでもパワーに変えて叫びたくて。不幸だからこそ気づけること、不幸だからこそ力が湧いてくることってあると思うし、そういう裏の意味がここには込められているので、そこに気づいてもらえたら嬉しいですね。

亀本:〈不幸であれ〉ってシンプルだし勢いがあっていいよね。だってこの物語の主人公であるサワコには、「迷い」が一切ないじゃん。とにかく自分の目標に対して純粋だし、ひたすら真っ直ぐに突き進む。この曲はそういうサワコのキャラクターを体現しているというか。めちゃくちゃ強烈な歌詞だけど、聴いていてネガティブに感じる要素が全然ない。むしろ爽快ですらあって、エネルギーを貰えるんだよね。

──〈あたし以外は 不幸であれ〉が、〈あたしみたいに 不幸であれ〉〈この世は皆 不幸であれ〉と、サビごとに展開していくのもポイントなのかなと。

松尾:実は、最初は〈不幸であれ〉というワードに抵抗があったんです。そういう言葉を曲の中で使いたくないなって。

亀本:そりゃそうだよね、不幸になんてなりたくないしさ(笑)。

松尾:うん。でもその時に「じゃあ幸せって一体何なんだろう?」みたいなことを、ものすごく考えたんだよね。例えば不幸のどん底にいる時って、当たり前だと思っていたことが全然当たり前じゃなかったことにも気づけるし、本当に些細なことでも「幸せ」を感じられると思うんです。そう気づけた時に初めて「本当の幸せ」が分かるというか、様々な感情を知ることが「幸せ」なのかなって、お風呂掃除をしながら考えたんです。

亀本:え、どういうこと!?

松尾:(笑)。いや、なんかさ、コロナ禍になる前の自分はすごく幸せだったの。幸せというか、人生がずっと楽しかったんですよ。嫌いな人もそんなにいないし、「人に恵まれているなあ」と思って過ごしてきたけど、コロナ禍になって家族にも自分にも、周りの人たちにもいろんなことが起きる中で、「先が見えないこの状況より不幸なことって他にあるのだろうか?」と思った時期があって。でも、そういう気持ちを死ぬまで抱え続けるのって、それこそ本当に不幸だなと思ったんですよ。この状況を、どうやったら自分自身のパワーに変えることができるか考えていたときに、「そうか、こういう感情を知れたことが『成長』なんだな」と気づけたんです。私は今一人暮らしなんですけど、コロナ禍で誰にも会えなくなってしまったなかで、友達からかかってきた電話の一言にものすごく救われたりして、それに気づけたことが何よりの幸せだし、成長だと思ったんですよね。

──幸せって、それに気づく「才能」が必要なのだなと最近思うんですよね。その才能がなければ、どんなに恵まれた状況でも不幸なままだし、その才能があればどんな環境でもそこに幸せを見つけることができる。コロナ禍で当たり前が当たり前ではなくなってしまったなか、多くの人がそのことに気づいたのではないかと。

松尾:そう思います。例えば、「今日はこうやって楽しいインタビューができたな」ということを、寝る前に思い返すだけでも「幸せ」を感じられる。そのことに気づけただけで十分幸せだなと思うんです。

──それを聞いて僕も幸せです(笑)。では、この曲の中で歌われている「嫉妬」「欲望」「独占欲」といった感情についてはいかがでしょう。先ほど松尾さんは、「自分自身の日常とリンクする部分」を探したとおっしゃっていましたが、そういう感情にとらわれることもありますか?

松尾:例えば「愚か者たち」(2018年)という曲を淳治さんと作ったんですけど、2番のサビで〈嫉妬なんか醜いよ〉と歌っているんです。あれは当時どうしても入れたくて、最後の最後に付け足したフレーズだったんですよね。私は嫉妬って絶対にしたくないと思って生きてきて。もちろん多かれ少なかれ誰しもある感情だと思うし、決して悪いことだとは思わないんですけど、嫉妬することで自己肯定感が下がってしまう「負の連鎖」が起きると思っているんです。だから「自分は自分」となるべく思うようにしたくて……難しいんですけどね(笑)。

GLIM SPANKY - 「愚か者たち」

──ネガティブな感情から楽曲が生まれることはありますか?

松尾:それはあります。でも「嫉妬心」や「支配欲」というよりは、例えば世の中の理不尽な出来事や、人からされた嫌なことが原因で生まれた「怒り」や「悲しみ」の感情を、他の言葉に置き換えて歌詞にすることが多いかもしれない。

──なるほど。〈アレも コレも 欲しがって手に入れたら 邪魔〉というフレーズも、すごく思い当たるところがあります。

松尾:例えば洋服だったりコスメだったり、すごく集めちゃうんですよ。買った時はやっぱり欲しくて、手に入れたいから手に入れるんだけど、果たしてちゃんと使っているか? というと、ずっと箪笥や引き出しの奥で眠っているものもある。それってモノだけじゃなくて人に対してもやっていることがあるのかもしれないな、どうだろう……? みたいなことを考えながら書いたメモを淳治さんに送ったら、まさに的確なフレーズで表してもらいました。

亀本:例えば好きな人ができて、恋人になるまではめちゃめちゃ積極的にアタックしてたのに、いざ付き合うようになると大事にしなくなっちゃうとか。そういう「釣った魚に餌をやらない」みたいなこと、やってしまいがちだもんね(笑)。

松尾:そうそう(笑)。おそらく淳治さんも共感してくれたんだと思う。「通じてよかった」と思いました。

──レコーディングの際に、サウンドプロダクション、演奏、ボーカル面で新たに試みたことはありますか?

亀本:今回は、あまり余計なことをやらずに自分たちらしさをシンプルに表現するという、ある意味では原点回帰みたいな気持ちで取り組めたのが、逆に新鮮だったかもしれないですね。あと今回はベースを有島コレスケさんに初めてお願いしたんですよ。ロックやオルタナティブな感覚を持っている同世代の人で、ずっと前からいつか一緒にやってみたいと思っていたので、嬉しかったです。

松尾:今回、ベースラインをどうするかをアレンジの段階でたくさん話し合いました。クラシックロックとかハードロックにあまりにも寄せ過ぎてしまうと、ちょっとGLIM SPANKYらしさがなくなってしまうから、そこを回避するためにも「オルタナティブなドライブ感」がすごく重要だと思っていたし、いろんな音楽を吸収されている上に、もともと対バンなどで何度もお会いしていた有島さんにお願いできてよかったなと思います。

──実際に、ドラマで流れているのを聴いてどう思いました?

松尾:実は、この曲のデモが完成して一度ドラマ制作チームに投げたところ、「冒頭に妖しいフレーズを付け足してもらえませんか?」というリクエストがあったんです。それで急遽、亀が付け足してくれたのが冒頭のギターフレーズなんですよ。あれがドラマで流れた時にめちゃめちゃ効いてて。

──「キタキター!」ってなりますよね。11月から始まる全国ツアー『Into The Time Hole Tour 2022』でも、間違いなくあのフレーズが鳴り響いた途端に盛り上がりそうです。

亀本:ですよね! でもあのフレーズって最初の段階ではちゃんと入ってたんですよ。「これ、絶対妖しくて効果的だよな」と思っていたのに、松尾さんが「それ要らない。ダサい!」っていうからボツにしたの忘れた(笑)?

松尾:そうだったっけ。ごめんごめん(笑)! 今はちゃんとお気に入りポイントだからさ。

GLIM SPANKY「不幸アレ」
GLIM SPANKY「不幸アレ」

■リリース情報
「不幸アレ」GLIM SPANKY (ユニバーサル ミュージック)
作詞:いしわたり淳治、松尾レミ
作曲:GLIM SPANKY
編曲:亀本寛貴
配信:https://glimspanky.lnk.to/worstPR
歌詞:https://www.uta-net.com/song/325561/

■番組情報
ドラマ『サワコ~それは、果てなき復讐』
2022年10月2日スタート毎週日曜 よる11:00~11:54放送中
全10話 BS-TBS / BS-TBS 4K 同時放送 / 放送翌日正午より見逃し配信あり
番組公式サイト:https://bs.tbs.co.jp/sawako/
番組公式Instagram:https://www.instagram.com/sawako_bstbs/
番組公式Twitter:https://twitter.com/sawako_bstbs
BS-TBSドラマ公式TikTok:https://www.tiktok.com/@bstbs_drama

【関連サイト】
GLIM SPANKY オフィシャルサイト:http://www.glimspanky.com/
GLIM SPANKY オフィシャルモバイルサイト『FREAK ON THE HILL』:https://sp.glimspanky.com/
GLIM SPANKY ユニバーサルミュージック サイト:https://www.universal-music.co.jp/glim-spanky/

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