指原莉乃と秋元康による“髪型ソング”の違い ≠ME、=LOVE、AKB48らの楽曲から考察
指原莉乃がプロデュースするアイドルグループ、≠MEが5thシングル曲「はにかみショート」のMVを10月15日に公開した。
楽曲のタイトルが示しているように、MV冒頭でセンターをつとめた冨田菜々風がロングヘアをなびかせて登場するが、中盤で髪をばっさりと切ってショートヘアにイメージチェンジ。髪が長かったはずの彼女の変化に、周囲が目を奪われるというストーリーとなっている。
同曲の歌詞内容も、突然、ショートカットになって待ち合わせ場所にあらわれた“彼女”に、その恋人は驚きながらも「好きだ」という気持ちが増し、〈どうしようもなく 君が好きと感じてる 大きなダイヤは まだ買えないけど 君だけだと誓う〉と結婚まで意識するほどのめりこむ。〈大きな声で 自慢したいよ 僕の恋人が可愛すぎる!〉と超絶なお惚気ぶりまで発揮。「恋愛って良いものだな」と聴き手をハッピーな気分にさせてくれる。
逆に“彼女”側の視点に立って聴いてみた。“彼女”はきっと、恋人の喜ぶ顔を想像しながら美容室の席に座っていたに違いない。恋人のびっくりした顔が見たかったのか、それとも初めてのショートヘア姿を捧げたかったのか。そんなワクワクする想いを感じ取ることができる。
ただ、そういった幸せムードが一変するのが、ラストで“彼女”が左手薬指の指輪を外して投げ捨てるシーンである。“彼女”はタイトル通りそのあとはにかむが、その真意については観る者によって意見が分かれるところ。ただひとつ言えるのは、“彼女”はショートカットにしたからこそ自分のなかで決断ができたということである。
髪型を変えたことでそのカップルの深い愛情が読み取れ、またそれぞれの心情もうかがえる歌詞内容になっていた。
指原は2019年にも、プロデュースグループである=LOVEの5thシングル曲「いらない ツインテール」で髪型を題材にした楽曲を作詞している。
同曲のモチーフは、アイドルの定番でもあるツインテール。人に好かれるためにその髪型にするのではなく、「自分にぴったりのヘアスタイル=自分らしさ」を模索・発見して生きることの大事さをメッセージとして投げかけていた。「周囲の意見や理想に左右されるのではなく、あなた自身はどうしたいのか」というような問いかけを、髪型に置き換えておこなっている。
指原がアイドル時代に在籍していたAKB48、HKT48などのプロデューサーである秋元康も、髪型について触れた作詞曲を数多く手がけてきた。
なかでも有名なのは、大ヒット曲であるAKB48「ポニーテールとシュシュ」(2010年)だろう。“僕”は、走っている“君”を追いかけるが、なかなかつかまえることができない。なんとか追いつこうと手を伸ばした先には、“君”のポニーテールが……。この曲のすばらしいところは、ふたりが波打ち際を駆ける情景が浮かんでくるところである。“君”を追いかける=“僕”の片想い。そしてふたりのあいだには“君”のポニーテールが揺れている。そんな構図が、届きそうで届かない恋のもどかしさ、甘酸っぱさを漂わせている。特に印象的なのが、〈いつまでも はしゃいでいる 君は少女のままで〉と歌ったあと、〈LaLaLaLaLaLa〉と続くラスト。“僕”が“君”をずっとずっと追いかける、そんな関係の永遠性が伝わってくる。ちなみにポニーテールという髪型のイメージのもとになっているのは「ポニー(馬の種類)の尻尾」だが、それを〈恋の尻尾〉と言いあらわした“歌詞遊び”も見逃せない。