YMCK、忠実に再現した『FAMILY INNOVATION』のテーマやコンセプト 3年ぶり単独公演をレポート

YMCK『INNOVATION CONFERENCE 2022』レポ

「ハッスルしすぎてシステムの調子がおかしくなってしまったので、ここからはシステムを沈めるような楽曲をお届けします。ご清聴のほどよろしくお願いします」

 除村が、そう冗談めかしてから披露したのは「Rain」(2008年)。歌詞の内容に合わせ、コンピュータの基板を高層ビルが立ち並ぶ大都会の空撮写真に見立てたスクリーンの映像や、まるでパントマイムのような栗原の手の動き、除村と中村によるシンセソロの掛け合いが印象的だ。続く「夕暮れのチャイム」は、『FAMILY INNOVATION』収録のミドルバラード。疲弊した資本主義の行き着く先を、希望とも絶望とも取れるセンチメンタルなムードで描いたこの曲に合わせ、みんなで体を揺らしているとなんともシュールな気持ちになってくる。さらに、『FAMILY DAYS』(2013年)の冒頭曲「夜空は街の」と「逆らいがたき運命の中」をつなげたあと、「情報過多なこの時代にオリジナルは生まれ得るのか?」という真摯なテーマを扱った「レトロ・リバイバル」を熱量たっぷりに披露すると、フロアからは大きな歓声が上がった。

「3年ぶりのワンマンライブ、コロナ禍でライブに対する価値観も変わってしまった中で、それでもこんなにたくさん集まってくれて嬉しいです。ありがとうございます」

 そう栗原が挨拶すると会場からは大きな拍手が。さらに除村が、「時代が大きく変わっちゃいましたけど、皆さんぶっとく、しぶとく生きていきましょう!」と声をかけ、「イチオクブンノイチ」「大いなる『1』」そしてアルバムからの先行シングル曲「ひこうき雲のフォトグラフ」の3曲を続けて演奏し、本編は終了。アンコールでは、「せっかくなので懐かしい曲を」と除村が紹介した「Magical 8bit Tour」(2004年/1stアルバム『ファミリーミュージック』収録)、続けて「8番目の虹」(2008年)をシンガロングし会場は一体感に包まれたまま幕を閉じた。

 2023年はYMCKの結成20周年。それを記念し、来年中にまた新作をリリースすることをこの日発表した。タイトルもすでに決定しており、キャリア史上初めて「Family」を外した『TEN』になるとのこと。ここに来て新たなフェーズを迎える、そんな彼らの充実ぶりを象徴する濃密な一夜だった。

※1:https://realsound.jp/2022/09/post-1139977_2.html

YMCK、シリアスな目線とメッセージ性に富んだ『FAMILY INNOVATION』 活動20周年に向けチャレンジ精神旺盛な意欲作に

男女3人組の8bitミュージックユニット、YMCKによる通算9枚目のアルバム『FAMILY INNOVATION』がリリースされ…

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