TWICEメンバー分析 第5回：サナ、グループを支える温かくて優しいまなざし　受け手の心を前向きにする表現力

　一方、近年ではダークな世界観やアグレッシブなメッセージを発信するようになるなど、作品コンセプトや音楽性に変化がみえているTWICEだが、必ずしもポジティブな響きを持たない内容の楽曲で聴こえるサナの歌声も、やはり重要な役割を果たしている。

　例えば「CRUEL」のサビで〈You think I’m so cruel／But I’m just doing all the things that you do〉（あなたは私を残酷だと思っているけど、私はあなたがしていることをしてるだけ）〈Like a fool Yeah,I’m cruel〉（バカみたいに／そう、私は残酷だよ）と歌う彼女の声。歌詞では「あなた」を突き放すような冷たい感情の乗る言葉が並ぶものの、それを歌うサナの声には「この声の主は、通常ならば決して愛する相手にこのような言葉は投げかけないはず」と感じさせるような、そこはかとない温かさが宿っている。

　こうした言葉と声色の温度差により、聴き手の想像は「私」と「あなた」の間に起こったそれまでの出来事にまで及ぶ。彼女の歌声には、楽曲の世界観に深度を与え、聴き手の想像力を広げる力があるように思うのである。

　そのまなざし、そして歌声に表れる彼女の人柄は、グループ全体にもポジティブな影響を与えている。ハードスケジュールの中でもメンバーとのコミュニケーションを第一に考え、ムードメーカー的な役割を果たしている彼女の存在は、他メンバーの心を和ませる機会も多いことだろう。

　また、その愛情を他のグループに向ける光景も見られる。特に、同事務所に所属する後輩グループ NiziUの公式デビューが決まった際には、ドキュメンタリー『We NiziU！〜We need U！〜』（Hulu）内でビデオレターを通じて「これからも色々あると思いますが、またいつでもご飯とか一緒に食べて過ごしましょう」といったメッセージを投げかけており、そのお守りのような言葉にNiziUメンバーたちが安心したような表情を浮かべていたことが印象的だった。

　TWICEの活動を通じて心から信頼し合えるメンバーたちと共に歩を進めていくなか、愛情を周囲と分かち合いながらその心の温もりを増幅し、発信していくサナ。今後グループの表現にさらなる変化が起こるにあたって、どのようにその持ち味が活かされ、まだ見ぬ彼女の新たな側面が表れてくるかにも期待したい。