YONA YONA WEEKENDERS 磯野くん、楽しさを実感して定まった“バンドの軸” 自然体な曲作りに至った心境を明かす

磯野くんによる『嗜好性』全曲セルフライナーノーツ

M1「考え中」

 YONA YONA WEEKENDERS(以下、YYW)の好きなものを詰め込んだEPの1曲目からいきなり「考え中」なのが、いかにも僕たちらしいなと思う。この曲は“好き”という感情につきまとう悩みや葛藤をポップに、そしてクールに描いた曲だ。

 僕は今日に至るまで、様々な選択を迫られ、その度に様々な“考え中”を経てきた。

 パンクバンドを解散して就職した時。ブラック企業で働きながらもう一度バンドをやろうと決意した時。転職をした時。結婚して、子供が生まれた時。マネジメント契約、メジャーデビューした時も、メンバーやチームの皆とぶつかっては、どうしたら自分の好きな人や物事が守れるか、真剣に向き合ってきたつもりだ。

 今年33歳になった僕は、相変わらず会社員とバンドマンの二足の草鞋を履きながら、コロナ禍で誕生した息子の育児にも励んでいる。慌ただしい毎日だが、家族や周りのサポートもあり、だんだんと“好き”に囲まれた生活が送れるようになってきたなと思う。もちろん、もっともっと売れたいし、子供のためにいつかマイホームを……と、現状に満足してはいないけれど、悩み、考え続けることが、明るい未来への一歩になると僕は信じている。

 ちなみにこの曲、EPの納期が迫る中で作曲が行き詰まり、どうすっかな〜とマジで考え中だった時、YYWのボツ曲リストの中から見つけたトラックに、「考え中」と当時の焦りをそのまま乗せたデモが意外と好評で、気づいたら『嗜好性』というテーマの中でとても重要なピースになっていた。そんなエピソードも含め、やっぱり僕たちらしい曲だ。

M2「1989’s」

 今年のGWに、BEAMSの人気レーベル<SSZ>のディレクター、そして加藤農園の四代目でもある加藤忠幸さんと、ラフォーレ原宿でイベントを行った。僕たちの好きな酒とツマミが散りばめられたコラボ柄シャツや、倉庫でピックした古着の展示販売、フリーライブも行ったりと楽しい期間だった。

 打ち合わせの日に一度、加藤さんを「一杯だけ」と居酒屋に誘ったら、音楽や服、スケボーの話などで盛り上がり、案の定終電近くまで飲んだことがあった。しょうもない話もたくさんしたけど、その飲み会で僕が感じたのは、加藤さんが自分の“好き”に対してとても熱い想いを持っている人だということ。「1989's」は、そんな加藤さんに感化されて作った曲だ。

 歌詞はタイトルの通り、1989年生まれの我々YYWの“好きなもの”を至るところに散りばめた。Cメロに出てくる〈思い出のクリアパープル〉というのは、当時所有していたゲームボーイカラーが偶然にもメンバー全員クリアパープルだったという、嬉しいような恥ずかしいようなエピソードから。サウンド面では、そのゲームボーイを連想させる8ビットサウンドを入れてみたり、イントロをローファイにすることで、青春時代を回想するような雰囲気を出した。

 その他にも、チャンネーをはべらせて笑う僕の声に、西恵利香(Cho)の蔑みの「は?」が重なっていたり、アウトロでは、僕たちがワイワイ古着をディグっている音声を入れたりと、今回のEPの中では一番“遊んでいる”曲になっている。

 ちなみに、各所で「1989年は僕たちYYWの生まれ年で〜」なんて話しているのだが、実は小原“Beatsoldier”壮史(Dr)だけ一つ年下で、しかも早生まれの“1991’s”ということはあまり知られていない。

M3「Ice Cream Lovers」

 『誰もいないsea』は、僕たちが2018年にリリースした自主制作音源だ。

 それまで全く陽の目を見るのことなかったYYWだったが、「誰もいないsea」がSpotifyのプレイリストにリストインしてからいろいろなラジオで流れるようになったり、今のマネジメントから声を掛けていただいたりと飛躍のきっかけになった。

 とはいえこの音源、僕達は捨て曲無しの大名盤と自負している。「R.M.T.T」はのちに3rd EP『唄が歩く時』で再録。今やライブでは欠かせない人気曲になったし、「Good bye」はメジャー2ndシングルとしてリアレンジし、昨年リリースされた。

 その中でも「再録して欲しい」という声が最も多いのが「15」である。今ではワンマンライブでたまに演るくらいだが、古参のファンや関係者からは隠れた名曲として評価していただいている。

 しかしこの「15」、YYW初ライブが迫る中、演奏する曲が足りず焦った当時の僕が、30分くらいで書いてライブ直前のスタジオに持っていったという初期衝動全開な曲。この勢いや良い意味での青臭さは二度と出せないと、再録を拒否し続けているのだ。

 というわけで、「速くてシャッフルビートなら『15』の後継曲になるっしょ」という気持ちで作曲したのが「Ice Cream Lover」だ。フタを開けてみると、速くてシャッフルという点以外は全く別物になってしまったが、この曲もある種殴り書き的な気持ちで書いたからか、爽やかでいてなかなか良い勢いを感じる。隠れた名曲にならないよう、個人的には一番届けたい曲だ。

M4「夜行性」

 昨年11月に1stアルバム『YONA YONA WEEKENDERS』のリリースツアーで福岡に行った。ギリギリのタイミングでまん延防止策も解除され、会場ではお客さんと一緒に乾杯することができた。ライブ後はみんなで中洲に繰り出し、念願の屋台飲み、そしてシメのラーメンと存分に福岡の夜を満喫。コロナ禍以降、ようやくあの頃が“戻ってきた感”を感じられた夜だった。

 そんな楽しい夜を思い出しながら書いたこの曲には、僕がリスペクトするbonobosのフロントマンである蔡忠浩さんがゲストボーカルとして参加してくれている。

 1stアルバムの収録曲「Night Rider feat.荒井岳史(the band apart)」では、1コーラス目を僕、2コーラス目を荒井さんという感じで、わりとしっかりめに歌い分けていたが、今回「夜行性」では冒頭Aメロから蔡さんが登場し、コーラスの絡みも複雑になっている。小中学生時代にめちゃくちゃ聴いていた、ボーカルデュオ CHEMISTRYを参考にしながら譜割を考えていった。

 レコーディング現場ではお互い「天下一品」のファンということで盛り上がりつつ、蔡さんがメロディラインを即興で提案してくれたり、ラスサビの〈また会えるよ〉というフレーズでは、僕のファルセットと蔡さんの伸びやかで真っ直ぐな歌声が重なり、フィーチャリング曲の醍醐味とも言えるまさに“化学反応”が起きた、そんな曲になったと思う。

 夜行性な皆さんの夜を優しく包む僕と蔡さんのハーモニー、ぜひ味わっていただきたい。

M5「月曜のダンス」

 EPの納期と戦いながら最後に滑り込みで出来上がったのが「月曜のダンス」。YYWの楽曲で多用しているメジャーセブンスの響きを残しながら、過去最高のBPMで疾走するダンスロックだ。6月の恵比寿リキッドルームのワンマンライブで先立って披露し、現場での反応を確かめるというのも初めての試みだった。

 今回のEPは単純に僕たちの好きなものを詰め込んだだけでなく、案外固まりがちな嗜好について今一度向き合い、時には壊したりしながら、自分達の“嗜好性”を突き詰めてみるというのがコンセプトになっていて、まさにそれを体現したような曲になった。

 アーティストだろうがサラリーマンだろうが、家族はいるし、納期だってあるし、日常はそんなに変わらないはず。同じように悩んだり葛藤したりしながら、それぞれの“好き”を大切に生きている。そんな皆の日常に寄り添い、皆の背中を押すことが、僕の辿り着いたひとつの“嗜好性”なんだと、この曲の歌詞を書き上げた時に感じた。

 哀愁のトラベラー達よ、やがてまたやってくる月曜日を踊るように、共に進んで行こう。

YONA YONA WEEKENDERS『嗜好性』

■リリース情報
YONA YONA WEEKENDERS
4th EP『嗜好性』
2022年9月21日(水)リリース
完全生産限定盤CD:¥1,650(紙ジャケ仕様)
<収録内容>
1 : 考え中 
2 : 1989’s (フジテレビ系『ダウ90000 深夜1時の内風呂で』劇中歌)
3 : Ice Cream Lovers
4 : 夜行性 feat. 蔡忠浩(bonobos)
5 : 月曜のダンス

■ツアー情報
『嗜好性 EP Release Oneman Tour』
2022.11.12(Sat) UMEDA Shangri-La OPEN 17:30 / START 18:00
2022.11.13(Sun) NAGOYA CLUB UPSET OPEN 17:30 / START 18:00
2022.11.19(Sat) FUKUOKA graf OPEN 17:30 / START 18:00
2022.11.26(Sat) OKAYAMA CRAZYMAMA 2ndRoom OPEN 17:30 / START 18:00
2022.12.11(Sun) EBISU LIQUIDROOM OPEN 17:00 / START 18:00
チケット一般発売中:詳細はこちら

YONA YONA WEEKENDERS Website

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